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【30分台本 ♂2♀2∞1】 Honey &Bear 第一話 「ミツバチとベニト石」

【あらすじ】
実在するロサンゼルスを舞台に、派手な盗みを繰り返す『怪盗Honey&Bear』。二人を追うロス市警強盗殺人課のマーシャルとアレックスの元に、今日も彼らからの予告状が届く。『2月28日 午前0時 ロサンゼルス自然史博物館、ベニト石を頂きに参る。Honey&Bear』その予告状から、彼らが思いもしなかった事件が始まるのであった・・・。
 
【シナリオ約束事項】
利用条件などはシナリオの約束事項をお読みください
https://note.com/caitsith151/n/n2c2f578d39d0

その他:
・ベニト石は、べにといしで統一してください
・note版とは一部表現が異なります。使用時は各メンバー使用台本を統一してください。

【登場人物】
○ハニー
性別・♀
怪盗ハニーベアのプランの立案、盗み実行役など体力面を担当。
セクシーでキュートな見た目に反して体術などを得意としており、ベアとはとある事件をきっかけに、共にチームとして『盗みはクレイジーなほど面白い』を信条に怪盗劇を続けている。刺激的なものや、面白そうなものを見つけると「セクシーじゃない?」という口癖がある。
・性格:過去の記憶を失っているが、楽天的で好奇心のままに現在を生きている。頭脳明晰だが、あくまで動機は「楽しいか楽しくないか」。人を茶化すのが好きな小悪魔タイプ。だが、過去を思い出しかけるとナーバスになる。
・好きなもの:スリル、美しいもの、ミステリアスなもの。かわいいもの。
・参考年齢:19〜28
・雰囲気キーワード:セクシー、キュート、小悪魔、アクティブ
・口癖:セクシーじゃない?

○ベア
性別・♂
怪盗ハニーベアのハッキング、電気、機械系統、ドライバーをこなすオタクハッカー。Honey &Bearでは頭脳面を担当。とある事件をきっかけに、ハニーに『盗み』出されたことをきっかけに、チームとして『盗みはクレイジーなほど面白い』を信条に怪盗劇を繰り返している。本人は今の暮らしを気に入っており、ハニーは相棒としてしか見ていないが、恋愛とは異なる特別な存在として認めている。
・性格:オタクだが、熱く純粋。天才肌で、集中すると目の前のことしか見えなくなる。また、ハイテンションになると大好きな、チーフガードナーのフィギュアに早口で話しかける癖がある。
・年齢:19〜32(ハニーの立ち回りによっては、お兄さん、ショタもあり)
・雰囲気キーワード:オタク、情に厚い、厨二っぽいワル
・好きなもの:ネット、発明、エナジードリンク、ゲーム、アニメ、チーフガードナー

○マーシャル
性別・♂
ロス市警警部/強盗殺人課 『ハニーベア』事件の担当。古風な警察官だが、勘が鋭い。仕事でも実直であり、捜査は資料と現場、足で稼ぐタイプ。仕事一徹の彼だが過去にリアーヌ・カウチという女性と交際しており、突然消えた彼女のことを今も忘れないでいる。
・性格:冗談を言わず、冗談が通じないタイプだが、ハニー&ベアの捜査でヤケになっている部分があり、冒頭で冗談を言うシーンがある。感が鋭い。
・年齢:35〜50
・雰囲気キーワード:渋い、古風、熱血漢
・好きなもの:タバコ、酒、コーヒー、つば広の中折れ帽子

○アレックス
性別・♂♀どちらでも演じられる
マーシャルと同じく、ロス市警警部補/強盗殺人課 『ハニーベア』事件担当。マーシャルの秘書的な位置にいる。主に、情報整理、収集を得意としており、頭脳派。実は、署内ではエリートコースを歩んでいた敏腕。だが、マーシャルに憧れ、強盗殺人課への配属を希望した。
・性格:真面目で誠実だが、マーシャルと違い、柔軟で従順。データ分析にも長けており、時にマーシャルよりも早く事件の核心に迫るが、あまりに飛躍している事実が多いため、「まさかね」と自分で終わらせてしまうことが多い。
・年齢:20〜50
・雰囲気:秘書、冷静、真面目、マーシャルを尊敬している
・好きなもの:シワのないスーツ、仕事道具、コーヒー

○ダニエ&ダニエ?
性別・♀
ダニエはFBI特別捜査官。『ハニーベア』の捜査を担当。ロス市警がFBIからの『ハニーベア逮捕の協力要請』に応じたため、派遣された。過去に凶悪強盗犯『ブラックリリー』と死闘の末、生存した経緯を持ち、FBIの中でも指折りの捜査官とされている。が、物語中盤から全く別の顔を垣間見せる。
・性格:ダニエ本人は冷静で表情を面に出さない冷静沈着な雰囲気。元からそうではなかったようだが謎が多い。ダニエ?はハニーについて何か知っているようだが?
・年齢:28〜40
・雰囲気キーワード:エリート、ミステリアス
・雰囲気キーワード2:ダニエ?のときは、妖艶、ミステリアス

♦♥♦―――――以下、本編―――――♦♥♦   
ーハニー、タイトルコールしてください

ハニー:Honey&Bear
ハニー:第一話 ミツバチとベニト石(ベニトいし)
 
 ○【ロス市警 マーシャル警部のデスク】
 
ー(予告状を見て)

マーシャル:『2月28日 午前0時 ロサンゼルス自然史博物館、ベニト石(ベニトいし)を頂きに参る。ハニーアンドベア』、か・・・。

ーマーシャル、ため息をつく

マーシャル:・・・やりたい放題やってくれるなぁ、オイ・・・。

ーマーシャル、タバコに火をつける

アレックス:マーシャル警部、事件資料をお持ちしました。

マーシャル:ああ・・・、そこに置いといてくれ・・・。

アレックス:これで・・・7件目、ですか・・・。通称、ハニーベア。性別、年齢はおろか、人数も不明。判明しているのは、毎回大掛かりで、大胆な犯行を行う事。
・・・そして、このハニー&ベアというふざけた名前のみ。

マーシャル:フンッ、ふざけた野郎だ。ご丁寧に、ハチとクマのマークまでつけて送りやがって。インクから特定が出来るかとも思ったが・・・

アレックス:・・・市場(しじょう)に登録の無いインク、だったんですよね。せめて、どこで作られたのか・・・わかればいいのですが・・・

マーシャル:あー!くそ!どうすりゃいい!?
前回は、床ごと爆破されたんだぞ!?
・・・奴はいつ、そんな準備をした?
痕跡(こんせき)すら・・・見当たらないのはなぜだ!?
やつらはどこに、そんな大掛かりな機材を隠している!?

アレックス:警部、少し落ち着いてください・・・。やはり・・・ハニーベアは二日後、予告通りに現れるのでしょうか?

マーシャル:(深いため息)・・・これまで、奴が・・・予告状を違えた(たがえた)事は無い。・・・1分1秒も、だ。奴は間違いなく来るだろう。だが…、
アレックス:(ため息)問題はどうくるか…ですか…。ああ、警備局には既に手配を済ませました。

マーシャル:ああ、ご苦労。

アレックス:当日の具体的な対応策については情報漏洩を防ぐためにも伝えてはいませんが、現在、うちの所轄と合同で事前警備と捜査を続けている所です。
何か、ほかに、手配しておくことはありますか?

マーシャル:・・・蜂よけスプレーでも用意しておけ。できれば、クマ用の檻もな。

アレックス:は?

ーマーシャル、ため息をつき

マーシャル:冗談だ!

ーアレックス、冗談であることに気がつき
アレックス:し、失礼しました・・・。

マーシャル:あー・・・、それと、もう1つ・・・伝えておくことがある。

アレックス:どうか、しましたか?

マーシャル:FBIが・・・、とうとう動き出した。

アレックス:それ・・・、本当ですか?

マーシャル:昨日、協力要請があり・・・受理したそうだ。
今後は共同で捜査にあたる事になる。
・・・そろそろ、くる頃だが・・・?

ーノック音

ダニエ:マーシャル警部?

マーシャル:ああ、君が・・・ダニエか?

ダニエ:どうも。強盗グループ、ハニーアンドベア逮捕のため、FBIから派遣されました、ダニエ・クロフォードです。

マーシャル:ジャストタイミングだ、ダニエ。かけてくれ。

ダニエ:ありがとうございます。

マーシャル:改めて自己紹介しよう。私はロサンゼルス市警、強盗殺人課のマーシャル・アノーだ。いまはハニーベアの逮捕に向けて、捜査にあたっている。
そこにいるのは、警部補のアレックス・ケイジだ。同じくハニーベアの捜査を担当している。

ダニエ:どうも。

アレックス:これから、よろしくお願いします。

マーシャル:さて、早速本題に入らせてもらおう。今朝、ロサンゼルス自然史博物館に・・・、ハニーベアから予告状が届いたことは知っているか?

ダニエ:はい。2日後の夜、ベニト石を狙うと聞いていますが・・・。

マーシャル:ああ。その通りだ。これまでも奴らはターゲットに予告状を送りつけ・・・、予想もつかん方法で、・・・あっという間に目的のブツを盗んで行く。手口もド派手。そして、さまざまだ・・・。だが、身元が不自然なほどに特定できん。
・・・FBIはどこまで掴んでいる?

ダニエ:今のところ、それ以上の進展はありません。それだから・・・、私たちも協力をお願いしているんですよ?マーシャル警部?

マーシャル:ほう・・・?ではダニエ、お前自身に聞きたい。
・・・お前は過去に、あのブラックリリーと対峙したそうじゃないか。

アレックス:なっ!?あの事件で生き残った捜査官って・・・ダニエさんだったんですか!?

マーシャル:・・・ああ、少なくとも俺はそう聞いている。

アレックス:怪盗ブラックリリー。その手口は大胆かつ、残酷。人を殺す事もいとわない大怪盗を止めることができた唯一の女捜査官。噂は聞いていましたが・・・!
まさか・・・、お会いできるとは・・・。

マーシャル:・・・アレックス、今は捜査の話だ。

ーアレックス、我に返り

アレックス:し、失礼しました・・・。

マーシャル:・・・さて、・・・そんなお前に教えて欲しい。今回、ハニーベアはどんな手口を使って・・・、ベニト石を盗む?

ーダニエ、軽く笑って

ダニエ:かいかぶりにも程があります。・・・マーシャル警部。アレは、評価していただくほどの事件ではありません。
あなたならば・・・、ご存知だと思いますが?

マーシャル:・・・。
(軽く笑って)まあ、そう言うな。他意(たい)はない。
お前の、ハニーベアに対する意見を聞きたい。それだけだ。

ダニエ:・・・わかりました。アレックス警部補、少し確認させていただいても?

アレックス:・・・わ、私で答えられる範囲ならば・・・。

ダニエ:ハニーベア事件の、共通点を教えていただけますか?

アレックス:・・・はい。事件資料によると、ハニーアンドベア、通称ハニーベアはどの事件においても・・・大がかりかつ、自身の犯行をアピールするような・・・ハデな手口で、襲撃を行っております。・・・ただし、どのような準備をしているかはまったく不明です。機材などの販売ルートも洗いましたが、目立った情報はなく・・・、情けないことですが・・・、正直お手上げ、と言ったところです・・・。

ダニエ:なるほど。・・・今、最も重要なことは、小細工をさせる時間を、与えないことではないでしょうか?・・・証拠品の捜査は、あとでいくらでもできます。
ハニーベアのこれまでの犯行から見て、おかしな小細工を防ぐためにも1秒でも早く、警備を強めたいところですね。
特に、電気系統には十分に。

マーシャル:ふむ、それはなぜだ?

ダニエ:調べたところ、ターゲットになっている自然史博物館は、・・・あまり警備体制がいいとは言えません。閉館後に機能しているのは・・・警備員の巡回と、センサー、そして・・・外の電気柵。大元の電気が絶たれれてしまえば、犯人は物をとり放題でしょう。

マーシャル:なるほどな…。電源そのものを断たれて手も足も出せなくなるということか。だが、送電線をチェックしている時間はなさそうだが・・・。

ーアレックス、少し考えて

アレックス:・・・それでは、警備室に予備電源を用意するのはどうでしょうか?そして、ベニト石の周囲に、その予備の電源によって稼働(かどう)するセンサーと電気柵を追加するんです。

マーシャル:・・・ふむ、悪くない案だな。加えて、各部屋の警備も増員し、常に複数名での巡回を行おう。

ダニエ:・・・それも良い案だと思うのですが・・・、私に1つ、考えがあります。

○【ハニーベア 隠れ家】

ーPCをいじるベア。その後ろでお風呂を楽しむハニー

ベア:おい、本当にやんのか・・・?

ハニー:なにを?

ベア:発電所のクラックだよ。
あたり一面を真っ暗にしてまで、・・・ベニト石ってのは、盗む価値があるのか?

ハニー:フッ、わかってないわね・・・。ベニト石というだけでも、数少ない貴重な宝石なのよ?その中でも、自然史博物館のベニト石は・・・世界最大。しかも、紫外線に当たることで美しく、青い光を放つ・・・。セクシーじゃない?

ベア:そりゃあ、たいそうなもんだ。けどよ・・・、今回はさすがにむちゃくちゃすぎねえか?

ハニー:ベアって、本当に心配性よね・・・。私が間違ってたことがある?いままでだって、うまくいったでしょ?今回だって、必ず成功するわ。

ベア:でもよ・・・、発電所のシステムに侵入して、停電を起こすなんて・・・クレイジーにも程があるぜ。

ーパソコンでのハッキングがうまくいかず、イラついて

ベア:ここのロックも・・・、くっそっ!固えんだよっ!

ハニー:ウフフ・・・、ベアったら本当のクマちゃんみたい。
・・・ベニト石にはね?他にもなかなかセクシーないわれがあるの。

ベア:セクシーないわれ?

ハニー:そ。だから、そこまでする価値はある・・・。賭けてもいいわ。それに、いつも言ってるでしょ?盗みはクレイジーなほど・・・

ー同時に合わせて
ハニー:面白い!
ベア:面白い・・・。

ハニー:あなたが発電所をクラックして・・・、博物館一帯を停電させたら・・・、闇に紛れて(まぎれて)私が侵入する。そして、囚われのお姫様を助け出してあげて・・・、そのままあなたの車でおさらば。簡単でしょ?

ーベア、ため息をついて

ベア:・・・そんな簡単にいくかね?

ハニー:大丈夫よ!・・・この1週間、あなたがドローンで観察してくれたけれど、あの博物館の警備システムは・・・ザルもいいとこ。夜になれば赤外線センサーと、外の電気柵は機能するけれど・・・、それ以外は・・・警備員がペットのワンちゃんみたいに、決まったお散歩をする程度。

ベア:まあ、当然だな。あの博物館にはダイナーのチラシよりも見飽きた、ガラクタしかねえ。

ハニー:でしょ!絶対に、うまくいくわよ!

ベア:だが、イヌどもの動きがどうも気に食わねえ。この前、床を派手にぶち抜いてやったってのに、予告状が届いても反応なしだ。FBIから捜査官は来たようだが・・・。

ハニー:フフッ、あのダイヤより頭の硬いマーシャル警部だもの!白旗あげてるんでしょ!
確かに・・・、新入りのプードルちゃんは気になるけれど・・・、目の前にフィールフリートゥー(ご自由にどうぞの意味)を無視するのはつまらないと思わない?
なんなら、ベニト石は、もう私たちの手の中にあるようなもの・・・。そうでしょ?ベア?

ベア:ったく、気軽にいってくれるぜ・・・。ま、その、石っころの価値は俺にゃわからねえが、楽しませてくれよ?っと

ーセリフ最後と共に、PCのキーを押す。(ベア)

 ○【2月28日 午後8時 ロサンゼルス自然史博物館前】

アレックス:ダニエ捜査官!マーシャル警部!
警備の手配、そして新たな電気柵の配備、完了しました。
現在、監視カメラなども正常に作動しています。

マーシャル:おう、ご苦労。

アレックス:・・・しかし、こんな警備で大丈夫なんでしょうか・・・?
センサーと、監視カメラを追加した方が良かったのでは?
それに・・・、警備の数を増やさず、そのままとは・・・。

ダニエ:まず前者から説明しますが、
これまでの記録から見て、警備の増員は逆効果です。

マーシャル:それは何故だ?

ダニエ:施設の80%を埋め尽くすほど警備網(けいびもう)を張り巡らせても、人数すら把握できていないのが・・・その証拠では?

マーシャル:・・・逆効果、とは限らんだろう?

ダニエ:記録によれば、ハニーアンドベアの犯行は警備が大規模になる程、犯行時間が不明であることがわかっています。

マーシャル:わかりやすく言ってくれ。

ダニエ:彼らがターゲットを偽物にすり替える、もしくはいつの間にか消えていた、このような犯行方法は、警備が多いほどに使われていたということです。

アレックス:・・・あっ!
ということは、犯人は・・・警備や客に紛れて、犯行を行っていたということですか?

ダニエ:そう見ています。

マーシャル:その事態を防ぐために、人数確認や検査などを徹底していたはずだが?

ダニエ:犯人が大掛かりな仕掛けを使う目的は、その警備体制を撹乱するためでしょう。混乱を起こせば、大人数になるほど・・・紛れることは簡単になる。
つまり、警備を増やせば増やすほど、犯人には好都合だったというわけです。

アレックス:なるほど!流石はダニエ捜査官・・・。

マーシャル:・・・監視カメラや、センサーを増やすことに反対した理由は?

ダニエ:それについては、意味がないからです。

マーシャル:意味が、ない?

ダニエ:センサーも、監視カメラも電気がなければ意味がありません。

アレックス:ですが、そのために予備電源を用意したのでは?

ダニエ:あれはブラフです。

アレックス:ブラフ!?

ダニエ:センサーにしても、カメラにしても、この短期間で・・・博物館全体の監視を強化することは不可能です。その上、用意した予備電源も切り替わるまでに、15分の時間が必要になる。
警備の機能しない時間が、15分もあれば・・・彼らにとって犯行は十分に可能でしょう・・・。

アレックス:そ、それならば、なおのこと・・・

ーマーシャル、ダニエの言いたいことを察して
マーシャル:なるほどな・・・。つまり、この短期間で、博物館の警備を根本的に強化することは不可能。ならば、逆に警備を弱体化させて見せたほうが相手は油断し、尻尾を出しやすい。
そう考えた。と?

ダニエ:おっしゃる通りです。施設内の警備は少人数、警備体制も薄く見せれば、警戒はすれど・・・必ず犯人は現れる。

マーシャル:地下室の警備を強化したのは、前回のような手口を防ぐためか?

ダニエ:ええ。しかも、この博物館の地盤は硬い。前回のように床を爆破、なんてことは不可能でしょうね。

アレックス:な、なるほど・・・。

ダニエ:現場の警備も、私一人で行います。

アレックス:え!?・・・し、しかし、危険では?

ダニエ:私もFBIです。ご心配には及びません。それに、お二人やあなたの部下は、彼らに警戒されている可能性が高い。

アレックス:それでも・・・お一人というのは不安です・・・。せめて、うちから増援を・・・。

ダニエ:不要です。これまでの事件ファイルによれば、こちらの情報があちらに漏れている可能性がある。

マーシャル:うちの課にスパイがいると言いたいのか?

ダニエ:さまざまな可能性を鑑みて(かんがみて)の話です。今は言葉遊びをしている場合ではないのでは?マーシャル警部?

ーダニエ、ゆっくりと、確認するように

ダニエ:現場には、私一人で張る方が・・・より目立たず、確実に犯人を捕まえられる・・・。よろしいですね?

ーマーシャル、少し沈黙して

マーシャル:・・・ダニエ、信じていいのか?

ダニエ:もちろん。

ーマーシャル、ため息をついて

マーシャル:わかった。お前に任せよう・・・。アレックス、警戒は怠らず、俺たちはここで待機するぞ。

アレックス:ですが!!

マーシャル:命令だ。
・・・ダニエ、気をつけろよ。

ダニエ:ありがとうございます。ご期待に応えられるよう、最善を尽くします。

ーマーシャル、何かを考え込むようにため息をついて沈黙。

マーシャル:・・・。

 ○【2月28日 午後11時40時 ロサンゼルス自然史博物館前】
 
ハニー:さあ、ナイトミュージアムの時間よ!

ハニー:準備はいい?発電所のシステムは?

ベア:OK。いつでも落とせる。

ハニー:上出来。それじゃあ、時計を合わせて。合図をしたら、電気を落としてちょうだい。すぐに、電気柵をくぐるわ。
警備が混乱しているうちに、あなたの作った魔法の鍵で・・・ベニト石をいただく。この時点で5分。

ベア:ああ、警察に潜らせたドローンによれば、奴らは予備の電力を用意してる。だが、とんだ安物だ。予備に切り替わるまで、15分はかかる。

ハニー:舐められたものね。それとも、マーシャル警部は白旗かしら?その間、博物館の中は・・・ホーンテッドハウスみたいに真っ暗なのに!
まあいいわ。暗闇の中を必死にワンちゃんたちが駆け回ってる隙に、私は元来た道を戻って、あなたのいる車へタッチダウン!そのあとはお姫様を乗せて、ナイトドライブを楽しむだけ。余裕ね!

ベア:・・・ホント、大したタマだよ。おめえは。だが、計画通り、退路はプランCまで確保するぞ?マーシャルの旦那も、最近は飢えたライオンみてえにイラだってる。おまけに、今回来たFBI、どうも気になる・・・。

ハニー:この警備体制で?FBIはカカシでも送ってきたのかしら?

ベア:いや、女一人だが、敏腕らしい。だからこそ、ひっかかかるんだ・・・。どうにもクセえ。念の為、監視カメラの映像もこっちでコントロールしておく。オメエがトチってカゴのハチなっても、俺には荒事はできねえからな?

ーハニー、やれやれという感じで

ハニー:クマちゃんったら、本当に心配性・・・。・・・ストレスで胃に穴が空いたりしない?

ベア:何事も用意は周到に・・・、だ。俺がマスター・ガードナーを支えるコルタバなら、あと二つは用意してるところだ。

ハニー:・・・コルタ・・・?誰それ?

ベア:この仕事がうまくいったら、紹介してやるよ。なかなかクールな女だぜ?現実じゃお目にかかれないほどにな!

ハニー:(呆れて、ため息をついて)・・・好きね。やめておくわ。
あら、・・・そろそろショータイムよ!いってくるわ!

ベア:ああ、気をつけろよ!

ーハニー、軽く笑って

ハニー:私を誰だと思ってるの?

 ○【ロサンゼルス自然史博物館 警備室】
 
ー博物館が停電する

アレックス:停電!?

マーシャル:ダニエの見立て通りか・・・。慌てるな!予備電源への切り替えを急げ!

アレックス:はい!・・・ダニエ捜査官は、大丈夫でしょうか?

マーシャル:余計な心配はいらん。監視カメラの復旧を急げ!
・・・なんだ?・・・この違和感は・・・?

 ○【ロサンゼルス自然史博物館 鉱物展示室】
 
ハニー:妙ね・・・。警備の数が、普段と変わってないことはともかく・・・、電気柵が、外部電源で追加されているのに・・・機能していない?いくら、警察の連中がお馬鹿さんだからって・・・こんなミス、するかしら?

ーハニー、少し考え、

ハニー:・・・フッ、まあ、いいわ。楽にいただけるなら、最高ね。マーシャル警部には悪いけど、あたしたちのしたい事は、させてもらうわよ?

ーベニト石に手を伸ばす。

ダニエ:そこまでよ。

ーハニーの背後でダニエ、銃を構える

ハニー:・・・!かくれんぼが上手ね・・・。気がつかなかったわ。

ダニエ:ベニト石から離れなさい。

ハニー:・・・あなたが・・・FBIの新顔?抜け作のマーシャル警部は・・・、バカンスかしら?

ダニエ:無駄口はいい。ハニービー。アンタの手口はよく知ってる。相手を言葉で翻弄(ほんろう)し、隙を突く。まさに、蜂のようにね。

ハニー:(ため息)それはそれは、嫌われたものね・・・。それじゃあ・・・、こういうのはどうかしら!?

ーハニー、ダニエの不意をつき、掴みかかる。

ーしかし、ダニエ、薄く笑って受け流し、

ダニエ?:フッ、無駄よ。

ー蛇のような動きでハニーを掴み、投げ飛ばす。

ハニー:!?

ーハニー、着地しつつも、予想外の動きに、ハニー警戒する。

ハニー:・・・あなた、何者?少なくとも・・・、FBIじゃないわね?今の蛇みたいな動き、FBIのアーツとは違う・・・。そもそも、警察はまだ私たちのことを「クレイジーな怪盗」ってこと以外、掴んでないはずだわ。

ーハニー、何かを思いだしかけ、頭が痛み始める

ハニー:待って・・・、その動き・・・

ーダニエ、人が変わったように雰囲気が変わる。

ーダニエ、蛇のように不敵に笑って、口調が変わる。

ダニエ?:・・・あらあらあら・・・、どうしたの?顔が真っ青よ?ハニービー?

ハニー:あんた、一体何を・・・?待って・・・、今、私をハニービーと呼んだ・・・?

ーハニー、頭痛と目眩がひどくなる

ハニー:その呼び方っ・・はっ・・・

ーダニエ、愉快そうに

ダニエ?:フフッ・・・これだけヒントをあげているのに、まだ、思い出せないの?ずいぶんと、のんびりなのねぇ、ハニービー?
もっと優秀な子だったと、思うのだけれど?

ーハニー、頭を押さえて、

ハニー:アンタ・・・、前に、どこかで・・・?

ダニエ?:(笑って)・・・思い出してみたら?

ーダニエ、強い命令口調で

ダニエ?:さあ、思い出しなさい。ハニービー。

ハニー:・・・結構よ、クソ女!

ーハニー、油断したダニエの不意をつき、蹴りを入れる

ーダニエ、蹴りを受けつつ、余裕の笑みで

ダニエ:あら、これは想定外。

ーハニー、頭を振って、調子を戻す。

ハニー:・・・フッ、アンタが私を知ってようが、何者だろうが知ったこっちゃない。その気持ちの悪い笑顔、見てるだけで反吐(へど)が出るわ。
何を企んでるのか知らないけど、忘れたままでいてあげる。

ーダニエ?、からかうようにハニーのいった言葉を真似して、

ダニエ?:(ため息)・・・それはそれは。嫌われたものねぇ?

ーハニー、平静を装って、窓際にさりげなく近づく。

ハニー:つまらない挑発。とはいえ、さすがに今夜は興醒めね・・・。
フン、いいわ。今日は、そちらのプリンセスをお迎えするのは諦めてあげる。

ーハニー、拍手をしながら

ハニー:おめでとう。アンタが誰にせよ、ハニーベアを止めた一人目の人間よ。でも、景品のくまちゃんは無し。私も手ぶら、あんたも手ぶらで引き分けでお家に帰る。いい案だと思わない?

ーダニエ、意外そうに

ダニエ?:あら、ずいぶんと諦めがいいのね?せっかく門まで開けてあげたというのに。

ハニー:ハッ、どうりで、マーシャル警部にしては弱気だと思ったわ。全部、アンタの茶番だった・・・ってわけ?FBIになりすましてまでご苦労なことだわ。
でも、こう見えて私、忙しいの。アンタの愉快なお遊戯(おゆうぎ)に付き合っているヒマなんてないの。

ーハニー、腕時計を見て、

ハニー:(ため息)・・・さて、ちょうど舞踏会もおしまいの時間ね。魔法が解けてしまうわ。そろそろ、おうちに帰りたいの。いいかしら?

ーダニエ?は評価するように

ダニエ?:ふうん・・・?諦めてしまうとは思わなかったわ・・・。しかも、自分が誰かも、思い出せないとは。・・・まあ、焦ってもいけない。美味しい蜜を作るには幼虫から。
そうよね?ハニービー?

ハニー:その呼び方、やめてくれn・・・

ーハニーの言葉など無視するように被せて

ダニエ?:まあ、いろいろアクシデントもあったけれど、成果は上々。

ーダニエ、自分の中で結論づけるように

ダニエ?:及第点としましょう。その窓から出て、巣に帰るといいわ・・・。そうするつもりだったのでしょう?

ーハニー、不審そうに

ハニー:なんでもお見通しってことね・・・。アンタの狙いはなに?

ダニエ?:あら、思い出してくれないんでしょう?
フフ・・・、気にしないでもいいわ。そのうち、わかるもの・・・。
それに今日、ベニト石は・・・お前達が盗むのよ!

ー2回の銃声

ダニエ:(叫ぶ)

マーシャル:ダニエ!どうした!?ダニエ!!

ダニエ:・・・すいません、逃がしてしまいました・・・。

アレックス:・・・!電気柵のワイヤーが切られている!?くそっ!簡単に切れるはずがないのに・・・、いつの間に!?

ーダニエ、苦しそうに

ダニエ:・・・ずっと見張っていたのですが、気がついたら・・・逃げるところでした。警告したのですが、逆に撃たれてしまって・・・。・・・女でした。

マーシャル:・・・。(釈然としない様子で)・・・そうか。よく、がんばってくれた。おかげで犯人の足がかりはできた。ダニエ、お手柄だ。

ダニエ:ありがとうございます・・・。痛っ・・・、血が・・・。

アレックス:救急車を呼びますか!?

ダニエ:・・・いえ、弾をかすめただけなので、自分でできます。手当てをしてきても?

マーシャル:・・・。

アレックス:警部?

マーシャル:あ、ああ・・・、付き添ってやれ。

 ○【ハニーベア 逃走車中】
 
ベア:・・・ったく!!なんなんだよ!!くそっ!!ハニー!怪我はどうだ!?

ーハニー、傷跡に指を入れ、弾を抜く

ハニー:・・・ぐ・・ううう!!っはぁ・・っはあ・・!

ーハニー、苦しく息をしながら

ハニー:・・・弾は抜いた。・・・あの女、一体・・・なんなの・・・!?
自分を撃ったと思ったら、笑いながら私を撃って!完全に狂ってるわね!
狂ってる・・・?

ーハニー、何かに気がついたように

ハニー:ベア!あたしのスマートフォンは!?

ベア:ああ!?ほらっ!

ーベア、ハニーにスマートフォンを放り投げる。

ハニー:あの女は、私をハニービーって呼んだ・・・。ハニービーって呼んだのよ!

ベア:・・だから、何だよ!?

ハニー:それに・・・、あの動き、あの話し方・・・!

ー絶望したように

ハニー:・・・ああ、そういうことね・・・。ちくしょう!

 ○【ロサンゼルス自然史博物館 鉱物展示室】

アレックス:・・・?警部、どうしました?窓になにか?

マーシャル:いや、ダニエはなんと言っていた?

アレックス:窓にいた犯人を撃とうとして、撃たれた、と。

マーシャル:・・・その時、ダニエはどこにいた?

アレックス:えっと・・・ここですかね?

マーシャル:構えてみろ。

アレックス:・・・こう、でしょうか?

ーマーシャル何かに気づいたように

マーシャル:・・・!!おい!!ダニエ!ダニエはどこへいった!

アレックス:し、止血のため・・・手洗いに、と。

マーシャル:くそ!!おい!ついてこい!!

アレックス:は、はい!!

ーマーシャル、ドアを急いでノックして

マーシャル:ダニエ!いるか!開けるぞ!

ー中には誰もおらず、窓だけが空しく開いている

アレックス:だ、誰も・・・いない・・・?

マーシャル:く・・・、くそっ!!

ー扉を殴る音(マーシャル)
 
 ○【ハニーベア 逃走車中】
  
ベア:ブラックリリィだと!?あの大怪盗のか!?

ハニー:ええ、あの蛇みたいな動きも、あの話し方も、昔の私がメモに残した、・・・ブラックリリィそのものだった。

ベア:お前、ブラックリリィと会ったことあんのかよ!?
・・・でもよ、ブラックリリィは死んだって聞いたぜ!?

ーハニー、自分でもわからずパニック気味に

ハニー:わからない・・・!覚えてないのよ!でも、間違いない・・・。確実に・・・。私はあの女を知ってる。だって、あの目は・・・悪夢に出てくる、あの目にそっくり・・・。
・・・一体、どうなってるの?

ーベア、少し考え、ハニーを落ち着かせるためにいつもの調子で

ベア:・・・わかった。いや、わかんねえけど・・・、わかんねえことがわかった。
んで?クイーンビー。その女がブラックリリーとして、一体どうする?

ーハニー、ベアの言葉に大きくため息をつき、いつもの調子を取り戻す。

ハニー:(軽く笑って)・・・ありがと。
そうね。相手が誰であれ肩にキャンディー、プレゼントしてくれたお礼はしないとね?あいつが誰であれ、やられっぱなしは性に合わない!

ベア:・・・それでこそハニーだぜ。んで?なにから始める?

ハニー:そうね・・・、ベアはあの女について調べてみて。私はあのベニト石について、調べてみる。

ベア:・・・調べるたってよ?誰だかもわかんねえんだろ?

ハニー:私が、ただ、鉛玉(なまりだま)ぶち込まれて終わると思った?

ーハニー、ベアにカードを投げる。

ーベア投げられたカードを受け止めて

ベア:あん?なんだ?

ハニー:あの女の身分証明書。そこから何かつかめるはず。

ーベア、軽く笑って

ベア:・・・っほんと、大したタマだぜ。

ベア:石っころの方はどうする?

ハニー:見当はついてる・・・。
あのベニト石を発掘した家、カウチ家よ。

 ○【???】
  
ダニエ?:おかげさまで、事がスムーズに運んだわ。ウフフ、ハニービー・・・、相変わらずかわいい子・・・。追っていらっしゃい。
あなたがわたくしになるのが・・・、とても楽しみだわ。

【続く】

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