見出し画像

「やりたいことをやるために」━━クリエイター「パンチ」の戦略的アプローチと2つの武器

近年、ファンコミュニティサイトやイラストコミッションサービスなど、クリエイターの自活を支援するサービスの普及や、キャリア・創作論がメディアに取り上げられるなど、ますます注目を浴びている「クリエイター」。

その影響力は計り知れず、「将来、クリエイターを仕事にしたい」という若年層も、年々増え続けている。

しかし、その一方で「仕事と趣味の創作の違いとは何か」「クリエイターになるためにはどうすれば良いのか」「仕事を得るためのプロセス」などの情報は集めにくく、将来クリエイターとしてのキャリアを考える上で、壁の一つとなっているのも事実。
 
それらの壁を少しでもなくすべく、本企画「大解剖」では、第一線で活躍するクリエイターにインタビューを実施。今までのキャリアや創作スタンスはもちろん、値決めや仕事の請負可否基準など、その人個人の「仕事としての創作論」を徹底的に解剖していく。
 
第一回目は、イラストレーター/グラフィックデザイナーのパンチさんにインタビュー。

広告制作会社に勤めながら、VTuber「星街すいせい」さんと作曲家の「TAKU INOUE」さんによる音楽ユニット「Midnight Grand Orchestra」、SF雑誌「SFマガジン」などをはじめとし、様々なイラスト・デザインに個人名義でも携わっているパンチさん。

「Adobe Illustrator」を用いて描かれた美しい絵柄と、毒を垂らしたような唯一無二の世界観を持つ、今注目のクリエイターだ。

その華々しい活動の軌跡と創作スタンスから見えてきた、彼女独自の「仕事としての創作論」とは?


インタビュイー:パンチ
1993年生まれ。イラストレーター・グラフィックデザイナー。 グラフィックデザインの専門学校を卒業後、広告制作会社へ。 グラデーションを多用した、静的世界観に毒を垂らしたような作風が得意。 主に音楽シーンや書籍の装丁で活躍中。

関連リンク:
Twitter:@punch6789
Portfolio:https://punchred.xyz/


インタビュアー:宮本祐輔
大手広告代理店にて、グラフィックデザインをはじめ、TVCM、WEB、 イベントプロモーションなど幅広いメディアを、企画からデザインまでトータルに担当。

現在はフリーランスで、広告やゲームの企画、デザインなどで活躍中。

また、ポップカルチャーに特化したクリエイティブチーム『COJIRASE LUNCH BOX』の立ち上げ、ポップカルチャーを活用した広告・コンテンツ開発なども行なっている。

関連リンク:
Twitter:https://twitter.com/Miyamoto_Yusuke
COJIRASE LUNCH BOX:https://twitter.com/CojiraseLB


広告制作会社で働くクリエイターが、個人活動を始めたワケ。

━━広告制作会社にお勤めされているとのことですが、学生時代から今の会社に勤められるまでの経歴について、うかがえますか?

パンチ:高校卒業後に、グラフィックデザインの専門学校に入学しました。そこから就職活動をして、現在の会社に就職しました。

━━個人活動はどういう経緯で、開始されたんでしょう?

パンチ:(現在の活動をはじめたのは、)勤めてから3年ほど経った時に、趣味で何かをはじめたいなと思ったのがきっかけですね。

仕事で忙殺される中で、自分の好きなことやセンスがどんどん死んでいく気がして、メンタル的にも良くないなと思っていて。
そこからずっと二刀流で頑張ってる感じです。

━━パンチさんの作品には独特な世界観がありますよね。その原点というか、何をきっかけに作り始められたんでしょう?

パンチ:Adobe Illustratorで描いたらそうなったみたいな感じですね。
道具の力がやっぱり強いです。

━━なぜ、「Illustrator」で描こうと思ったんですか?

元々イラストは好きだったんですけど、下手だったんですよね。
だからイラストを描くというより、普段デザイン業務で使っている「Adobe Illustrator」で描こうって思ったって感じですね。

━━なるほど!ちなみに、パンチさんは、どんなテイストや作家さんがお好きなんでしょうか?

パンチ:
テイストだと、70年代とか80年代の広告全盛期!みたいなテイストが好きです!
作家だとマグリットや永井一正さん、ブリューゲル、あとはベクシンスキーですね!実はベクシンスキーの影響で「月」を(自分の作品に)入れ始めたんですよね。

「デザインとイラスト」という活動の2つの軸、そのメリットとは?

━━イラストとデザインの2軸がパンチさんの活動にあるかと思います。ポートフォリオサイトなどでもこの2軸を押し出されていますが、これには何かブランディングなどの理由があるのでしょうか?

パンチ:何か2つ武器があるっていうのは単純に有利ですよね。

例えば、ジャケットを作るってなった時にイラストとデザインを両方自分で行うので、
(全体のディレクションなどが)コントロールしやすいです。

━━それは確かにすごく強いですよね!でも、作業量が単純に2人分になってしまう大変さもあるように感じますが、そこはいかがでしょうか?

パンチ:結果的には変わんないですね。「このイラストにはこのデザインでやりたい」とかを自分で決めれちゃうので、そういう段階があんまりない。
もちろんCLには色々な可能性を提示するのがベターですが、「好きにやってください」と言って下さることが多いので、自分も「パンチらしさ」で向かい合うべきかなと。

なので、全体の作業量としては減少するんですよ。

━━ちなみに、デザインとイラスト関係で直近のお仕事の比率はどれくらいなんでしょうか?

パンチ:時期によって違ったりするので、イラスト依頼が多い時期もあれば、デザイン依頼が多い時もあったりするんですけど。

通年通してだと、イラスト4割デザイン6割ですかね。
デザインのお仕事の方がちょっと多いです。

━━イラスト系では、どのようなジャンルのお仕事が多いのでしょうか?小説?

パンチ:小説は稀ですね。やっぱり音楽のお仕事が多いですね。ジャケットとか、MVのコンセプトアートとか。音楽にしても小説にしても、何かを拡張するお手伝いができるというのはすごく嬉しいです。デザインという分野にも通ずるものがありますし。

「お仕事をとるために」━━活動初期の戦略的なアプローチ

━━趣味からのスタートということですが、個人名義でお仕事をとりたいとは思われていたんでしょうか?

パンチ:やりたいと思ってました!むしろそのためにアカウントを作りましたから。

━━お仕事獲得のために、活動当初、どんなことをされていたんでしょう?

パンチ:最初は、Instagramで活動してたんです。当時イラストをInstagramにアップしている友人がいて私もやってみようかなと思ってはじめたんです。

(はじめた当初、)アパレルメーカーのTシャツやパーカーのおしゃれで単色で、、、みたいなデザインをいろんな人が投稿してたんですよね。「真似してみるか!」って思って同じような投稿をしはじめました。でも半年やっても手応えがなくて。

どうしようかなと思っていた時に、Twitterで仕事をしている人たちがいるというのを聞いて(活動拠点をTwitterに)移動しました。

(当時の)Twitteでは、自分がフォローしている人のツイートがTLで表示されますよね。
だから、フォロー関係なしにTLに表示されるSNSよりは、見てもらう母数は少なくなるんです。

けれど、ご依頼をくれそうな人の数は増えるなと思って。
それにやっぱり自分をフォローした人が誰か気になるし、(フォローしてきた相手のTwitter)見るじゃないですか。

だから絵をたくさん投稿してから、「グラフィックデザイナー」って検索して出てきた人の中で好きなデザインをしている人をフォローしたんですよ。

そうしたら見にきてくれた人の何人かが、いいねとかリツイート、フォローなんかをしてくれて、そこから少しずつ(知ってくれる人が)増えていきましたね。

ここから先は

3,706字

¥ 500

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

こういうの見たいとか聞きたいとか、なんでもない出来事とか日々の悩みとかなんでもいいのでそういうのをぜひ聞かせていただけると嬉しいです。