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仏教の歴史と関連する世界遺産

仏教キリスト教イスラム教と並び世界三大宗教の一つとされ世界人口の7%とされる5億人以上の信者がいるとされている。ちなみに類似の宗教とされるヒンドゥー教の信者は11億人とされるが、大半がインドにおり国を跨っていないことから、ヒンドゥー教は三大宗教となっていない。
ヒンドゥー教は古くはバラモン教と呼ばれ、カースト制度等の様々な戒律を持血、インドの生活に密着した宗教であった。仏教は紀元前6世紀頃に古代ヒンドゥー教から派生した宗教で、ゴータマ・シッダールタ釈迦とも呼ばれる)を開祖とする。この時に仏教に対抗する目的で、仏教の教えに従わなかった古代ヒンドゥー教信者により作られたのがヒンドゥー教である。


仏教の基本と歴史

仏教の基本的な考え方として、人の一生は苦であり永遠に続く輪廻の中で終わりなく苦しむもの、人間は死んで極楽浄土に行くことにより苦しみから解放され、現世では修行をし悟りを開く(涅槃)ことで苦しみから解放される、というものである。悟りを開いた人のことを仏陀と呼ぶ。
開祖であるゴータマ・シッダールタはインド東部の出身であり、仏滅後ゴータマの解いた教えを集めた経典が作成されたが次第に人により解釈が分かれるようになり、ヴァイシャーリーにて解釈の統一化を図ったところ、上座部仏教(戒律を厳密に守る)大乗仏教(お釈迦さまの教えを広く民衆に広める)に分裂した。大乗仏教はその後中国や韓国を経由して6世紀頃に日本に伝来し、上座部仏教は主にタイ・ミャンマー・ラオス等に伝来した。

6世紀の欽明天皇の頃に、百済(現在の韓国の西側)から仏教が伝わり、仏教を推す蘇我氏と神道を推す物部氏との間の対立になった。その後蘇我氏が勝利したことにより仏教は急速に普及した。推古天皇が三法興隆の詔を発表、聖徳太子(厩戸の王)が十七条の憲法を制定し、その中で仏教の教えが広く用いられた。また各豪族においても、各々の先祖を祀る目的で寺院が建設され氏寺と呼ばれた。また用明天皇が崩御した後にその意思を受け継ぎ、推古天皇と聖徳太子により、現存する日本最古の仏教建築物である法隆寺が建設された。
飛鳥時代は豪族政治により広まった仏教であったが、奈良時代に入ると天皇律令国家となり、聖武天皇は国の安寧と平和を願い全国に国分寺を建設し、東大寺に有名な大仏を建設した。
その後仏教は時代と共に様々な宗派に派生し、江戸時代まで政治と密接な関わりを持ったが、明治維新が起こった際、仏教が江戸幕府とあまりにも密接な関わりを持っていたため幕府の宗教として扱われ、代わりに神道が大きな影響力を持つようになった。

国内の仏教関連世界遺産

法隆寺地域の仏教建造物群

現存する日本最古の仏教建築物群、法隆寺に属する47棟と法起寺の三十棟1棟の計48棟。金堂には「釈迦三尊像」「薬師如来像」「阿弥陀三尊像」がある。夢殿は聖徳太子信仰の聖地として作られ、「救世観音菩薩立像」を本尊として安置している。推古15(607)年に建立されたが、天智9(670)年に落雷により 焼失し、711年に再建されたと言われている。

平泉 - 仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群 -

中尊寺金色堂は奥州藤原氏の祖である藤原清衡(ふじわらのきよひら)によって1124年に建立され、阿弥陀如来を祀ったものである。藤原氏三代(清衡・基衡・秀衡)の遺体は「須弥壇(しゅみだん)」に安置されており、霊廟としての性質ももつ。須弥壇は槌で形が打ち出され、金箔が貼られた孔雀の模様を描いている。清衡は仏教に深く帰依し、11世紀後半に長く続いたこの地域の覇権争いで亡くなった人々の霊を鎮めるために、一辺わずか約5.5メートル四方、高さ約8メートルの金色堂を建立したと言われる。清衡以降、奥州藤原氏三代が今日の東北地方を統治したが、再び戦火が及び、1189年、平泉の都はほぼ壊滅し、短命に終わった。

古都京都の文化財

794年から1868年のほとんどの間、日本の首都だった京都。
13のお寺、3つの神社、1つの城郭を併せて世界遺産指定されている。

https://www.tabikobo.com/tabi-pocket/japan/kyoto/article54361.html

<13のお寺>
教王護国寺(東寺):平安遷都とともに796年、平安京鎮護のための官寺として建立が始まり、弘法大師空海による真言密教の根本道場として栄えました。
清水寺:奈良時代末期の778年、延鎮によって私寺として開かれました。音羽山の中腹に建つ懸造の建築で、せり出した舞台を支える18本の柱は「継手」の構造が使われている。
比叡山延暦寺:788年、最澄によって開かれた延暦寺は比叡山全域を境内とする寺院で、根本中堂は天台宗の総本山。
醍醐寺:874年、空海の孫弟子である聖宝によって開かれた醍醐寺は、真言宗醍醐派の総本山。京都における現存最古の建造物
仁和寺:光孝天皇の勅願により創建し、888年に完成した仁和寺は、真言宗御室派の総本山。明治維新まで皇子や皇孫が門跡を務めたため、御室御所と称された。
平等院:1052年に藤原頼通が開創した平等院。現在は特定宗派に属さない単立寺院で、最勝院と浄土院が交代管理しています。国宝である阿弥陀堂(鳳凰堂)は池の中島に建てられ、水面に映し出される華やかな姿が圧巻。
高山寺(こうざんじ):真言宗系の単立寺院。鎌倉時代初めに明恵上人が華厳宗の道場として開山しました。
西芳寺(苔寺):奈良時代に行基が開山し、1339年に夢窓疎石(むそうそせき)が禅寺として再興。
天龍寺:後醍醐天皇を弔うために足利尊氏が開基となり、夢窓疎石を開山として1339年に創建された。
鹿苑寺(金閣寺):臨済宗相国寺派の寺院で、「金閣寺」として広く知られる。1397年に西園寺家の山荘だった場所を譲り受けた足利義満の死後、1420年頃に鹿苑寺と名付けられ、禅寺となった。鹿苑寺庭園は衣笠山を借景に、鏡湖池に様々な名石を捉える。
慈照寺(銀閣寺):「わび・さび」を特徴とする東山文化の代表として知られる銀閣寺。もとは足利義政が開いた山荘でしたが、1490年に義政を弔うために禅寺へと改められました。
龍安寺:室町幕府の管領細川勝元が創建した龍安寺は、臨済宗妙心寺派の禅寺。「石庭」は世界的にも有名で、枯山水庭園の代表例とも称される。
龍谷山本願寺(本願寺・西本願寺):「お西さん」の愛称で親しまれる龍谷山本願寺は浄土真宗本願寺派の本山の寺院。

<3つの神社>
賀茂別雷神社(上賀茂神社):上賀茂神社は飛鳥時代に賀茂氏の氏神を祀る神社が始まりであり、京都最古の歴史を有する一社。屋根の造りは全国の神社の6割を占める「流造」(三間社流造)の原型。神山も登録範囲内。
賀茂御祖神社(下鴨神社):上賀茂神社とともに賀茂氏の氏神を祀り、創建は紀元前90年より前とも言われ、京都で最も古い神社の1つとされています。約20年毎に式年造替が行われていたが、戦乱等で遅延するようになった。糺の森も登録範囲内。
宇治上神社(宇治市):平安時代に建てられた本殿は現存する神社建築では最古のものとされ、国宝に指定されています。
<1つの城郭>
二条城:徳川家康が将軍上洛の際の宿所として築城した二条城。1867年には二の丸御殿の大広間で大政奉還の意思が表明されるなど、徳川家の栄枯盛衰を見てきた貴重な桃山文化の遺構です。

古都奈良の文化財

平城京造営の710年から長岡京遷都の784年までの74年間の文化的・政治的な発展を示す8つの資産で構成される。律令制に基づく日本の国家体制が確立され、その際の天平文化は日本の文化の源泉となった。
平城宮には、国の政治や儀式を執り行う大極殿朝堂院、天皇の居城である内裏、行政機関である各役所があった。5つの仏教寺院と1つの神社、関連する景観と考古学的遺跡が含まれる。

https://www.city.nara.lg.jp/site/world-heritage/

東大寺:仏の加護により国家を鎮護しようとした聖武天皇の発願で建立され、751年に大仏殿(金堂)が完成、本山である「銅像盧舎那仏坐像(大仏)」を安置している。正倉院正倉は天皇家の縁の品を収める。
興福寺:669年に前身寺院が創立されたが、遷都にともなって平城京に移され興福寺となった。藤原氏の氏寺。
薬師寺:680年に天武天皇が藤原京で創建し、平城京遷都にともなって現在地に造営された。創建時の建物は東塔のみ。
唐招提寺:苦難の末に来朝した唐の僧・鑑真和上が、戒律を学ぶための寺院として759年に創建した。
春日大社:古くから神の降臨する山として神聖視されていた春日山・御蓋山(みかさやま)の西麓に、四柱の神々をまつったもので、藤原氏や朝廷の崇敬をうけて繁栄しました。1868年の神仏分離令までは、神仏習合思想の下で興福寺と一体化されていた。
春日山原始林:841年に狩猟と伐採が禁止されて以降、大社の神山として守られてきた。原生な状態を保つ照葉樹林として天然記念物指定されている。

国外の仏教関連世界遺産

仏教四大聖地とインド

1. 仏陀の生誕地ルンビニー(ネパール):この地を巡礼したアショーカ王が石柱を築き、6世紀頃にマーヤーデヴィ寺院が建立された。
2. ブッダガヤの大菩薩寺(インド):釈迦が悟りを開いた成道の地。約2500年前にこの地の菩提樹の下に座り、釈迦が悟りを開きブッダとなった。ブッダが座した場所には、後にアショーカ王が寄進したとされる金剛宝座が設けられ、菩提樹と金剛宝座は石造の蘭潤という欄干で囲まれている。
3. 初めて説法をした初転法輪の地:サールナート
4. 最期を迎えた涅槃の地クシナガラ

その他インドの仏教関連世界遺産
サーンチーの仏教遺跡:アショーカ王(マウリア朝第3代の王でインド亜大陸をほぼ統一した)が各地に作ったストゥーパ(仏塔)の一つ。
アジャンターの石窟寺院群:ムンバイの北東に位置し、インド最古の仏教壁画が残る。仏塔を安置して礼拝する形式のチャイティア窟と、僧侶たちが居住する形式のヴィハーラ窟がある。
ナーランダ・マハーヴィハーラの遺跡群インド亜大陸における最古の大学、仏教の宗教的発展も証言する。
エローラーの石窟寺院群仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教の3つの宗教の石窟寺院群。最大規模はヒンドゥー教のカイラーサ寺院

世界三大仏教遺跡

1. バガン(ミャンマー):ミャンマー最初の統一王朝であるバガン朝の都として11~13世紀に発展。バガン朝の国王は功徳を得るために仏塔(パゴダ)を築き、現在でも3000以上の仏塔が立ち並んでいる。仏教が政治をコントロールするための装置となったことを表す
2. ボロブドゥールの仏教寺院群(インドネシア):ジャワ島中部に位置し、770年〜820年頃にかけて仏教を信仰するシャンドラ朝によって築かれた、密林に埋もれる世界最大規模の仏教遺跡
3. アンコールの遺跡群(カンボジア):9~15世紀にかけてインドシナ半島の大半を支配下に置いたクメール人によるアンコール王朝の繁栄を伝える都市遺跡。最大の寺院はアンコール・ワットで、12世紀前半、スーリヤヴァルマン2世が建設を開始、寺院内部はヒンドゥー教の宇宙観を表す。ヒンドゥー教寺院バンテアイ・スレイには、女神デヴァター像が祀られる。仏教関連建築として、アンコール・トムはジャヤヴァルマン7世が築き、中心となるバイヨンには四面仏顔塔が並びバイヨン様式と呼ばれる。タ・プロームは菩提寺として建立。

その他東南アジアの遺跡
パハルプールの仏教遺跡(バングラデシュ)東南アジアの寺院の手本となった遺跡。首都ダッカから北西180km。8~12世紀のパーラ朝の国王ダルマパーラが造営したソーマプラ大僧院等。
タフティ・バヒーの仏教遺跡とサリ・バロールの歴史的都市(パキスタン):1世紀初頭に建てられた寺院。ガンダーラ様式。
聖地アヌラーダプラ(スリランカ)スリランカにおける仏教伝来の地。紀元前3世紀にアショーカ王の息子マヒンダが、この地を治めていたティッサ王を改宗させた。ブッダガヤから菩提樹の分け木が送られ、崇拝されている。
ランギリ・ダンブッラの石窟寺院(スリランカ):紀元前1世紀に開窟が始まったスリランカ最大の仏教石窟寺院。シンハラ王国19代ワッタガーマニー・アバヤ王がタミル人に追われた際、僧に助けられたためその後石窟を送った。涅槃仏等の157体の仏像が残る。
聖地キャンディ(スリランカ)ブッダの犬歯を納めた聖地ダリダーマーリガーワ寺院に納められている。キャンディはシンハラ王国最後の都。
・ルアン・パバンの町(ラオス):14世紀半ば、ラオス初の統一国家ランサン王国の都となりました。古都であると同時に、仏教信仰の中心地として隆盛を極めた。
・古都アユタヤ(タイ)
バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群(アフガニスタン):バーミヤンでは仏教文化が繁栄し、5世紀から6世紀にかけて多くの巨大な仏像が彫られました。アフガン紛争によって大きな被害を受けました。2001年にはイスラムの偶像崇拝禁止の規定に反しているとして、当時のアフガニスタンのタリバン政権はバーミヤンの大仏の破壊。

中国・韓国の仏教関連遺跡

<中国>
 中国においては四世紀、南北朝の時代に北朝の北魏を建国した道武帝は仏教を国家公認の宗教とし、新都の平城に立派な仏寺を建立しました。道武帝は仏教を支援し、その子である明元帝も仏教を尊みました。しかし第三代の太武帝は四百四十六年に仏教の弾圧を行いました。太武帝の代から文成帝の代に移るころに仏教弾圧はおさまり再び仏教が復興していきました。文成帝は寺塔を復旧し仏像の造営を進め、仏教は発展を遂げることとなりました。仏僧である曇曜は仏教の発展のために尽力してくれた帝に対し、北魏初代の道武帝から文成帝にいたる五代の帝の石仏を築きたいと進言しました。五世紀半ば雲崗の石窟では北魏初代から五代までの帝の尊容を刻んだ曇曜五窟が開かれ、四百九十三年の洛陽遷都まで石仏の造営が続けられました。
・ラサのポタラ宮歴史地区
:チベット高原に位置し、歴代ダライ・ラマが眠るチベット仏教の聖地。7世紀頃、ソンツェン・ガンポ王が初めてチベットを統一し、この地に遷都、インドと中国の仏教文化を積極的に取り入れていった他、王妃はジョカン寺を創建した。
敦煌の莫高窟:とんこうのばっこうくつ。建造物、絵画、彫刻が一体となった世界最大級の仏教石窟寺院、シルクロードの中継地点として発展した。中国三代石窟。
雲岡石窟:北魏の文成帝により開鑿された。中国三代石窟。
龍門石窟:北魏の孝文帝により築かれた。中国三代石窟。
大足石刻:中国三大宗教(儒教・道教・仏教)の石刻が揃う。
五台山:中国四大仏教聖山の一つ。文殊菩薩の霊場。
峨眉山と楽山大仏:がびさん。中国四大仏教聖山。普賢菩薩の霊場。
<韓国>
山寺(サンサ)韓国の山岳僧院群:韓国仏教の歴史を伝える聖地。韓国の7つの寺院をまとめたシリアルノミネーション・サイト
・石窟庵と仏国寺:新羅仏教建築を代表する。


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