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配信に使用するマイクや機材のことなど

同じマイクといっても、いろんな形のマイクがあります。
カフェ・モンタージュの配信で使用しているマイクを、その主な特徴とともにご紹介していきます。

まずはこのマイク。
マイクロテック・ゲッフェルというドイツの会社のコンデンサーマイク
UM70S です。

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Microtech Gefell UM70s

このうちの1本は、私がまだ18歳の時、東京の録音スタジオに勤務、といってもケーブルの管理や、機材の基本的なメンテナンス、そして上司のメモ書きを頼りに秋葉原まで電子部品を買いにいったりと、なんとか雑用をこなすのに一生懸命だった時期に購入したものです。

スタジオのチーフエンジニアが「お前もそろそろマイクの1本も買って持っておけ」と自分の先輩に言っているのを聞いて、横から「僕も持っておいて方が?」と質問したところ、「お前はまだまだ」と言われた翌日から早速マイク探しに奔走して、「どうやらいいらしい」と噂を耳にしたのが当時新発売のこのUM70Sでした。
輸入代理店の河村電気研究所という、新宿の住宅地の中の、サザエさんにでも出てきそうな普通のお宅まで行って、そのバック トゥ ザ フューチャーの日本版のようなリビングで、ぺーぺーでなにも分からない自分に「創業者はあの有名なノイマン」というところから、全部説明してもらってから、「もしかして少し安くなりますか?」ときいて「特別に少しお安くしましょう」といってくれて、なんとか手持ちの現金で買って帰り、スタジオに持っていったらチーフに「なんでお前がこんなものを」という顔をされたのが、このマイクです。

そのようなわけで愛着もひとしおのマイクですが、今となっては貴重なヴィンテージとのこと。左右ステレオで使うためにもう1本、中古で良い状態のものをようやく見つけました。
中古なのに、昔に河村電気研究所で新品を買ったのより少し高くなっていて迷いましたが… とても重宝しています。

と、昔から持っているマイクは以上で、あとは2020年6月からの連続配信をきっかけに順番に入手したものです。手早くご紹介します。

こちらは泣く子も黙るドイツのSchoeps(ショップス)のCMC62Sというマイクです。

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Schoeps CMC62S

クラシックを録音するスタジオであれば、いつもはじめに姿を現わす定番中の定番のひとつ。楽器の振動、もっと言えば”震え”の部分を劇的に収音する魔法のマイクです。録音した音の実在感がものすごいです。中古で出ているのを運よく発見してしまい…、たまらず購入してしまいました。

次は日本が世界に誇るSONYが「あの"C-800G"以来26年ぶり」と謳って2018年に発売した3種類のコンデンサーマイクのひとつ、ECM-100Nです。

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SONY ECM-100N

C-800Gというのは発売当時に定価60万円、いまでは希少品扱いで定価の倍から数倍の値段で取引されている、まさに伝説の真空管式コンデンサーマイクのことです。
ブロードバンド(死語)が普及し、ほとんどの人がYouTubeやMP3などの配信フォーマットで音楽を聴く時代、録音するのに高級機材を使っても、結局はディテールが圧縮されてしまって良い機材を使ったように聴こえないと、業界全体がグレていた時期がありました。
以前は平気で数十万円以上していた業務用の高級機材は伝説化し、高級機メーカーは生き残りのためにこぞって廉価版の機材を発売しました。
それはそれで、私のようなマニアには嬉しかったのですが、段々にハイレゾが叫ばれ、そして"結局CDより音がいい"とアナログレコードが見直される中、かつての王者SONYがハイレゾ用マイクとして新規開発したのがこちらです。文化庁からいただいた補助金が使えるギリギリの価格で購入、その「リアルすぎる」音場表現に度肝を抜かれました。
音楽家の方が左右ステレオで一組持つとすれば、まずこのマイクをお勧めすることにしています。

ここで、本命の大型マイクをご紹介。
言わずと知れたノイマン社のU87Aiです。こちらも二本有ります。
一番上のゲッフェルの説明で出てきた伝説的な技師ゲオルグ・ノイマンの名前を冠し、何か録音を聴いて「音がいいな」と思ったら、大抵はこのマイクが使われています。カメラでいえば、フルサイズ一眼レフ(持っていませんが…)の大型短焦点レンズのように、ピントが当たった時の描写力が尋常ではありません。高級機材もここまで来ると、大事に使っていれば、将来手放すことになっても購入した時と同じ価格で買ってくれる人が必ずいるとのこと。つまり無料タダなのだ… と信じて大事に使っています。
すでに人間の聴覚のDNAに組み込まれているといっても大げさではない、業務用マイクの代名詞と言えるマイクです。

Neumann U87Ai

ここで、寄り道してマイク以外の機材のご紹介を。
皆さんは「オーディオインターフェース」という機材をご存知でしょうか。オーディオインターフェースは、マイクやギターやキーボードなど、さまざまな音源を一括してデジタル化してPCに送りこむ機材で、これなしにはいくら高級なマイクを買っても、PCを通してネットに配信することは出来ません。1万円、2万円から様々なオーディオインターフェースが販売されていて、私も以前は「どうせデジタルだし」と安い機材を使っていました。しかし、有料配信をするのには少し良いものを使った方がいいのではと調べていたところ、このアンテロープが発売したDiscreteシリーズというオーディオインターフェースが抜群の評判なのに注目してしまいました。
2020年の4月以降、誰もがネット配信を始めだした頃、いろいろな機材が売り切れになって焦っていた中、たまたま「入荷したばかりです。お早めに!」という表示に背中を押されて、つい思い切って購入してしまいました。

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Antelope Discrete8 Synergy Core

これまでのオーディオインターフェースはなんだったのか…、というほどの音の臨場感。これがあれば、良い音をそのままオンラインで皆様にお聴きいただける。無理して買って良かったです。

そして、最終兵器がこちら。AEAのN22というリボンマイクです。

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AEA N22

リボンマイクとは?
録音で良く使われるマイクは、その心臓部の震動板(鼓膜のようなもの)が丸い金属なのですが、このリボンマイクはまさにリボンの形をしています。
このタイプのマイクは古くからあって、巨匠ハイフェッツの脅威のサウンドを逃すまいと頑張っているこちらのマイクもリボンマイクです。

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Jasha Heifetz

このマイクを現代化して出来たのがN22とのことですが、いかにも未来的なデザインで気に入っています。「リボンマイクで弦楽器を取るといい」という昔からの定評を信じ、バーゲン価格になったところを見逃さず購入。
このマイクを混ぜるだけで、録音に”あの音"が出現します。驚きです。

このほか、B&K 4011というこれも業界標準のマイクと、上でご紹介したSONYの兄弟であるECM-100Uという二つの単一指向性マイクを使用しています。どちらも大変に質が高く、アンサンブル公演で音場の立体感を作るときの「あと一息」を実現してくれる力強い味方です。

Bruel & Kjaer 4011
Sony ECM-100U


以上、カフェ・モンタージュの配信に使用しているマイクたちをご紹介いたしました。ご参考にして頂けましたら嬉しいです。

そして、、、

配信もどうかお楽しみ頂けますように!

・・・・・

Broadcasting Cafe Montage



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