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カルトーラ②

前回、ザッと経歴をご紹介した、サンバの名作曲家、カルトーラ。
今回ご紹介する曲は、3枚目のアルバム「Verge que te quero rosa(1977年)」に入っている「Autonomia」という曲です。

この曲のタイトル「Autonomia」は、ちょっと難しい言葉で、英語でいうところの「Autonomy(オートノミー)」で、他から干渉を受けずに自由に意思決定ができる状態という意味のようです。

曲の歌詞を見てみると、愛し合う2人が何らかの理由で別れを余儀なくされる、その状況を奴隷状態に例えています。
そんな奴隷状態からの自由を想うという、かなりドキッとする内容の歌です。
(ブラジルで奴隷制が最終的に廃止されたのは、世界で最も遅く1888年のことです。カルトーラがこの曲を作った1970年代は、まだ、奴隷解放から100年も経っていないんですね…)

Escravizaram assim um pobre coração
(哀れな心はこのようにして奴隷にされてしまった)
É necessário a nova abolição
(新たな奴隷制廃止が必要だ)
Pra trazer de volta a minha liberdade
(自由を取り戻すために)
Se eu pudesse gritaria, amor
(叫べるなら叫ぶし)
Se eu pudesse brigaria, amor
(闘えるなら闘う)
Não vou, não quero.
(嫌だ、離れたくないんだよ)

強い苦み(歌詞)に溶け合う甘み(メロディ)…
心が揺さぶられます…

この曲は、カルトーラの曲をショーロのスタイルで演奏しているアルバム「Chora Cartola(2008年)」の中でも演奏されており、メロディの綺麗さがより際立つ、素晴らしいバージョンになっています。
(サンバより古い音楽スタイルであるショーロに関しては、以下のリンクをご参照ください!「Chora Cartola(2008年)」をプロデュースしたエンリッキ・カゼスは現代ショーロの最高の奏者です。)

ジャズの名サックス・プレイヤー、レスター・ヤングは「歌詞を忘れたから吹けない」といってサックスの演奏を中断したとか…
インストの演奏も、歌詞を知ったうえで聴くと、より沁みますね!

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