Iku

友人とカフェをやっています。

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カフェの扉の向こう【0】

扉が開く。カウベルがカランカランと鳴る。 私たちにとっては日常。お客様にとっては少しの間の非日常のひとときとなりますように。 昼の時間、そこはあたかも食堂のような賑わいになる。ひと種類しかない、月替わりのランチメニューが人気で毎月訪れてくださるお客様が多いからだ。 夕方近くになると、ぐっと静かな空間になる。 毎日訪れるような常連の方はいらっしゃらないけれど、好きなお席に足を運ばれるお客様のお顔はなんとなく覚えていたりする。 そんな、ふと感じるカフェでの小さな出来事を

    • 父が呼ばない私の名前

      私はひとりっ子だ。ひとりっ子として育った。 でもある時、ひょんなことから腹違いの姉妹がいる事を知った。父の契約している生命保険の書類を見たときだ。知らない名前が記載されており、続柄が「子」となっていた。 「どういう事?」と聞いた。「認知しているから。」と一言だけ返ってきた。30年ほど前のことだ。 それから私は結婚して息子を生んだ。息子が小学生になった頃、自営業だった父の仕事用の車にキズがついたり、運転していて突然道がわからなくなったり、同じ事を繰り返して聞いたりするよう

    カフェの扉の向こう【0】