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誰にも潜むモンスター性「花びらとその他の不穏な物語」グアダルーペ・ネッテル著、宇野和美訳

文学ラジオ第105回の紹介本

誰にも潜むモンスター性
「花びらとその他の不穏な物語」
グアダルーペ・ネッテル 著
宇野和美 訳
現代書館

「すべての人間はモンスターであり、人間を美しくしているのは、私たちのモンスター性、他人の目から隠そうとしている部分なのです」と著者自身が語る短編集。他人からは理解されないであろう奇妙な癖の持ち主たちによるエピソードの数々。ラジオでは収録作から「盆栽」「眼瞼下垂」の2編を紹介しています。

「盆栽」は東京の青山が舞台。登場人物の名前やラジオから流れる音楽などから随所に村上春樹へのリスペクトとオマージュを感じた作品です。「眼瞼下垂」は〈感じのいいまぶたを求めてセーヌ河岸を歩く〉ようなまぶたに取り憑かれたカメラマンがある少女のまぶたに惹かれて執着していく作品です。

ポッドキャストの本編第76回で同じ著者の「赤い魚の夫婦」を紹介しています。登場人物の感情と生き物が不思議に絡み合う名作揃いの短編集ですので、こちらもぜひ!

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本書のあらすじ
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現代メキシコを代表する作家グアダルーペ・ネッテルの世界観全開の短編小説集。
まぶたの整形手術の術前・術後の写真撮影を仕事とする、まぶたに執着せずにいられない男(「眼瞼下垂」)。ほんのわずかなブラインドの隙間から通りを隔てた向こうに住む男性を覗き見ては妄想にふけることをやめられない女(「ブラインド越しに」)。自分をサボテンに同化させたうえに妻をつる植物に見立て、家庭崩壊に突き進む男(「盆栽」)。〈ほんものの孤独〉を探し求め、離島で一夏を過ごす少女(「桟橋の向こう側」)。女性トイレに「痕跡」を発見し、その主を探し求める男(「花びら」)。髪を抜く癖に取り憑かれ生活も精神も崩壊し、出口の見えない状態で病院で療養している女の手記(「ベゾアール石」)。
作品の舞台は、パリ、メキシコシティ、東京、ヨーロッパの架空都市。
他人には言えない習慣、強烈なる思い込み、密かな愉しみ、奇妙な癖を手放せない、あまりに個性的な人物が躍動します。
『赤い魚の夫婦』(2021年刊行)で一躍注目を集めたグアダルーペ・ネッテル。本作でも確かな筆致で読者を作品世界に引きずりこみます。

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