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中東にも雨は降る…アラビア半島では「砂漠のトリュフ」生育の原動力

アラビア半島やエジプト、北アフリカ…「中東・北アフリカ」(MENA=Middle East and North Africa)という地域は、乾燥している土地で、雨が降らないと思っている人も多いのではないか。

いやいや、そんなことはない。結構降る。特に秋や冬には。特に、北アフリカの沿岸部は、イタリアやスペインと同じく地中海性気候だから、夏はほとんど雨が降らないにしても、冬はそれなりに降る。

10月のチュニジアの首都チュニスで日中、突然、空が暗くなって、ひょうが降りだして驚いたことがある。けっこう大粒のひょうで、通りを歩いていた人々は、散り散りに軒下に避難した。

とはいえ、中東・北アフリカ地域では、雨は「恵み」の意味が強いかも知れない。砂漠地帯では、まれに豪雨にみまわれると、ふだん涸れている谷に鉄砲水が押し寄せて、恐ろしい水害をもたらすこともあるから、もちろん一概にはいえないのだが。

エジプトの首都カイロだと、雨は「冬の始まり」のイメージがある。すこし肌寒さを感じてセーターが必要になったころ、一度、二度と雨が降る。

基本的に雨を想定していない商店は、雨で急にあわただしくなる。急いで商品にビニールをかぶせたりする。エジプトのパン「アエーシュ」などは雨に濡れると売り物にならなくなるので必死だ。

道路は水はけがよくないので、すぐに大きな水たまりができて、歩きにくいことこのうえない。

良いこともある。雨が降った翌日は、空気がとても澄んでいる。空気中に舞う砂、チリが劇的に減少するからだろう。こんな日は、エジプト名物ピラミッドの見学日和だ。

砂漠地帯では、降雨がまさに「豊穣」とダイレクトに結びついている。イラクなど、アラビア半島周辺の砂漠地帯では、雨の後に採れるというキノコの一種がある。「チュマア」といって「砂漠のトリュフ」の異名も持つ。割れた地面を掘ると見つかるらしい。

イラクでは、南部ムサンナ県や西部アンバル県が特に有名な産地だ。
 チュマアが採集されるのは、早春の2月初めから約2か月間だけ。冬に時折降る雨に生育を促され、降雨から約1か月半後ごろ、砂漠の表面がヒビ割れを起こし、そこを掘るとジャガイモ状のチュマアが現れる。雷を伴う強い雨が降った年ほど豊作だという。
 調理法はさまざま。チュマア商人にすすめられ、約10分間塩ゆでしたものをスライスし、食べてみる。取れたてのタケノコのような香り、プリプリとした歯ざわり。味は淡泊だが、クリのようなほのかな甘さに加え、ほろ苦さもある微妙な味わい。一般家庭では、タマネギなどの野菜と煮込んだり、炒め物にしたりするのが普通だという。

雨に濡れた遺跡・旧跡も普段とは違った味わいがある。

旧市街の石畳は、雨に濡れて独特の光沢を放つ。そんな日は人気も少なく、少々の雨であれば、傘をささずに散歩するのも、ふだんと違った街の様子を感じられる。

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