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中東にも雨は降る…アラビア半島では「砂漠のトリュフ」生育の原動力
アラビア半島やエジプト、北アフリカ…「中東・北アフリカ」(MENA=Middle East and North Africa)という地域は、乾燥している土地で、雨が降らないと思っている人も多いのではないか。
いやいや、そんなことはない。結構降る。特に秋や冬には。特に、北アフリカの沿岸部は、イタリアやスペインと同じく地中海性気候だから、夏はほとんど雨が降らないにしても、冬はそれなりに降る。
10月のチュニジアの首都チュニスで日中、突然、空が暗くなって、ひょうが降りだして驚いたことがある。けっこう大粒のひょうで、通りを歩いていた人々は、散り散りに軒下に避難した。
秋のチュニジアの首都チュニスで、晴れ空に突然、暗雲がたちこめ、ヒョウが降り始めたことがあった。地中海沿岸の気候は穏やかというイメージを裏切るような天気の急変。だがむしろ、チュニジアらしいと、その時感じた。この国の魅力を構成する「意外性」のひとつだったからかもしれない。 pic.twitter.com/WfsbpTelED
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) September 13, 2019
とはいえ、中東・北アフリカ地域では、雨は「恵み」の意味が強いかも知れない。砂漠地帯では、まれに豪雨にみまわれると、ふだん涸れている谷に鉄砲水が押し寄せて、恐ろしい水害をもたらすこともあるから、もちろん一概にはいえないのだが。
ヨルダン南部の古代ナバティア王国のペトラ遺跡で土石流が発生、死者も出ている。遺跡周辺は「ワディ・ムーサ」(モーゼの涸れ谷)と呼ばれ、遺跡めぐりで観光客が馬車で揺られる道は、元は水が流れていた谷。モーゼの奇跡を裏返したような猛烈な濁流に驚くしかない。 https://t.co/MKsHXQSZMq
— カフェバグダッド付属図書館 (@bait_almedia) November 9, 2018
エジプトの首都カイロだと、雨は「冬の始まり」のイメージがある。すこし肌寒さを感じてセーターが必要になったころ、一度、二度と雨が降る。
カイロは雨。冬の始まり。果物には、泥はねよけに段ボールやビニールをかぶせられた。しばらく空気が澄むという意味では朗報。 pic.twitter.com/XLghu3aKRE
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) October 28, 2015
基本的に雨を想定していない商店は、雨で急にあわただしくなる。急いで商品にビニールをかぶせたりする。エジプトのパン「アエーシュ」などは雨に濡れると売り物にならなくなるので必死だ。
珍しく連日雨が降るエジプトでは、主食のパン(アエーシュ)を売る屋台にもビニールシートがかぶせられた。カイロのナイル川中洲ゲジーラ島にて pic.twitter.com/rniUISrbrc
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) January 28, 2016
道路は水はけがよくないので、すぐに大きな水たまりができて、歩きにくいことこのうえない。
カイロに午前中、けっこう強い雨が降った。雨が降らないことを前提とした街だから、けっこう大変な出来事だ。水たまりをよけて歩く pic.twitter.com/S6WV8XCCJC
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) November 24, 2014
良いこともある。雨が降った翌日は、空気がとても澄んでいる。空気中に舞う砂、チリが劇的に減少するからだろう。こんな日は、エジプト名物ピラミッドの見学日和だ。
エジプトのギザのピラミッドの石の大きさ。ラクダや人がほんとに小さく見える。この日は前日夜に雨が降り、頂上までクリアーに見えた pic.twitter.com/NIbiGUDzhY
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) March 13, 2014
砂漠地帯では、降雨がまさに「豊穣」とダイレクトに結びついている。イラクなど、アラビア半島周辺の砂漠地帯では、雨の後に採れるというキノコの一種がある。「チュマア」といって「砂漠のトリュフ」の異名も持つ。割れた地面を掘ると見つかるらしい。
アラビア半島の地中で採れる「砂漠のトリュフ」の異名を持つチュマア。冬、雨が降ったあとに大量発生するという。ジャガイモと炒めたりして食べる。コリコリとした食感が楽しめる。写真はイラク南部にて。 pic.twitter.com/gf8kItmsrR
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) June 18, 2017
イラクでは、南部ムサンナ県や西部アンバル県が特に有名な産地だ。
チュマアが採集されるのは、早春の2月初めから約2か月間だけ。冬に時折降る雨に生育を促され、降雨から約1か月半後ごろ、砂漠の表面がヒビ割れを起こし、そこを掘るとジャガイモ状のチュマアが現れる。雷を伴う強い雨が降った年ほど豊作だという。
調理法はさまざま。チュマア商人にすすめられ、約10分間塩ゆでしたものをスライスし、食べてみる。取れたてのタケノコのような香り、プリプリとした歯ざわり。味は淡泊だが、クリのようなほのかな甘さに加え、ほろ苦さもある微妙な味わい。一般家庭では、タマネギなどの野菜と煮込んだり、炒め物にしたりするのが普通だという。
雨に濡れた遺跡・旧跡も普段とは違った味わいがある。
冬の夜の「フランス門」。チュニス旧市街への入り口。雨で石畳が濡れた旧市街はほとんどの店が閉店し、闇に包まれていた。 pic.twitter.com/6hY36POzxd
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) December 19, 2014
旧市街の石畳は、雨に濡れて独特の光沢を放つ。そんな日は人気も少なく、少々の雨であれば、傘をささずに散歩するのも、ふだんと違った街の様子を感じられる。
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