東京国際映画祭2023近づく...中東映画・全ラインナップ発表
10月23日から始まる東京国際映画祭のコンペティション出品作品が、きょう、東京・日比谷のミッドタウンで開かれた記者会見で発表された。そこで、中東関連映画に絞って、全ラインナップを紹介したい。なお、記者会見でプレゼンターを務めた、市山尚三プログラミング・ディレクターと「アジアの未来」担当ディレクターの石坂健治さんのひと口寸評も引用した。
コンペティション部門
「ペルシアン・バージョン」(マリアム・ケシャヴァルズ監督)
イラン映画と思いきや、米国のイラン人コミュニティーを描いた珍しい作品。1970年代にアメリカに移住し、1979年のイラン・イスラム革命で帰国できなくなった母娘の「一代記」。「(王政時代は親密だった)イランとアメリカが(革命で)敵対国になって、移住者はどう暮らしていったか。ダンスシーンなども結構あるが、かなりシリアスな内容を扱っている」(市山尚三プログラム・ディレクター)
「ロクサナ」(パルヴィズ・シャーバズィ監督)
魅力的な女性と出会った青年が巻き込まれる出来事を通して、「イランの若者たちが置かれた不安定な状況を登場人物によって象徴させた」(市山氏)
「鳥たちへの説教」(ヒラル・バイダロフ監督)
アゼルバイジャンの映画だが、念のためご紹介。アゼルバイジャンの森を舞台に、戦争が人々に残した傷がもたらすドラマを美しい映像で描く。「ビジュアルイメージと音響を楽しむ作品」(市山氏)
タタミ(ザーラ・アミール・エブラヒミ、ガイ・ナッティブ監督)
「タタミ」は畳。柔道の映画。敵国イスラエル選手との対戦を避けるため、自国政府から棄権を強要されたイランの女子柔道選手とコーチの葛藤を描く。ザーラ・アミール・エブラヒミ監督は、今年日本でも公開された「聖地には蜘蛛が巣を張る」で女性記者役を演じた俳優としても知られる。
「アジアの未来」部門
「マディーナ」(アイシャン・カッセィムベック監督)
同部門で初のカザフスタンからの出品。こちらも念のためのご紹介。「家庭や社会とのあつれきの中で、女性が戦っていく」という今回のこの部門を「象徴する作品」(石坂さん)
マリア(メヘディ・アスガリ・アズガディ監督)
娼婦役で映画に出演した女性のリハーサル映像が流出。女優は失踪し、監督はその謎を追う。ミステリー・タッチで描かれる緊迫の作品。アズガディ監督は28歳でデビュー作。
「家探し」(アナト・マルツ監督)
イスラエル映画。出産を控えた妻とその夫が同国最大の商業都市テルアビブを離れ、夫の故郷ハイファで家探しを始める。夫婦が出会う様々な物件と人間模様を通じ、イスラエル社会の現実を浮き彫りにする。
ロシナンテ(バラン・ギュンドゥズアルプ監督)
トルコ映画。小説「ドン・キホーテ」に登場する馬の名前のバイク。仲良し3人家族の父親が求職中にバイクタクシーを開業するが、思わぬトラブルに直面する。
以上8作品。個人的には、イラン映画の「タタミ」「マリア」に興味がひかれる。中東映画については、開幕までに関連情報を随時アップしていきたい。なお、このnoteで「中東シネマ倶楽部」というマガジンを更新している。
中東の映画に関心がある方は、フォローしてもらえれば、と思う。東京国際映画祭の中東映画レビューも、こちらに収録していくつもり。
今年の東京国際映画祭、一般的な話題作としては、この「正欲」や
この「ゴジラ-1.0」といったあたりだろうか。
一方、記者会見で映画祭運営側は、「アジアの映画」に力を入れていると強調しており、実際、日本以外のアジア各国からの作品も面白そうなものがたくさん目にとまる。映画祭に足を運ぶことは、世界のさまざまな現実を見つめる良い機会。普段はみることのない国、ジャンルの作品を鑑賞するのも意味があることかも知れない。
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