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中東シネマ倶楽部

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中東(オリエント)地域の映画レビュー、映画祭リポートをお届けします。
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記事一覧

欧州在住のクルド人社会の現実描いたトルコ映画…「二番目の妻」

日本に暮らすクルド人たちへのヘイトスピーチがますます醜悪さを増している。そうした言動を取…

イラクの少数派ヤジーディ、女性たちの戦い…「バハールの涙」

イラクの宗教的少数派ヤジーディが、ISの奇襲攻撃を受け、多くが殺害されたり、拉致され監禁さ…

自爆攻撃にかりたてる「絶望」描く…パレスチナ映画「パラダイスナウ」

 イスラエルによるガザ攻撃が延々と続いている2024年の夏。肉親・親戚・友人を失ったパレスチ…

聖地でよみがえった親子の愛...イラン映画「前約束なしで」

「東京イラン映画祭」の2日目。前日はペルシャ湾岸を舞台にした、ジリジリとした暑さを感じる…

幻想的ドキュメンタリー「古代都市シャフレ・スーフテ」

東京イラン映画祭の最終日(3日目)。アフガニスタン国境近くの荒涼とした土漠で発掘が進められ…

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戦争を少年の視線から描く-イラン映画「ヤドゥ」

「東京イラン映画祭」が今年も始まった。東京・港区のリーブラ・ホールを会場に、3日間で7作品…

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自然とともに生きている、クルド人の「芯」描く…クルド映画『別れ』

クルド人が多く暮らす街としても知られる埼玉県川口市で、今年もSKIPシティ国際Dシネマ映画祭が開かれている。首都圏で上映される、中東に関係した映画をフォローしている私にとっては、今年の注目作は、トルコのクルド人であるハサン・デミルタシュ監督の「別れ」。外せない作品だ。ということで、雨雲ただよう天気の中、川口のトルコ料理レストランで朝食の腹ごしらえをした後、映画祭会場を訪れた。 上映後のティーチインで監督自身が明らかにしたことだが、この作品は、監督の自伝的な作品だ。クルド人も

イランの大自然の中で、夢の実現に格闘する女性…「メークアップ・アーティスト」

イランの映画監督、ジャファール・ナジャフィ監督のドキュメンタリー作品。イラン南部ザグロス…

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歌あり踊りあり、それでいて深い社会批評…エジプト映画「炎のアンダルシア」

イスラーム映画祭がきのう終了した。今回、鑑賞したのは計5本。1本づつレビューを書いて、no…

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進行中の戦争の現場で撮影されたフィクション…レバノン映画「戦禍の下で」

イスラーム映画祭の2日目はレバノン映画「戦禍の下で」。フィリップ・アラクティンジ監督(Phi…

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浴場から描かれる凄惨なテロの時代…「私は今も、密かに煙草を吸っている」

今年のイスラーム映画祭が、東京・渋谷のユーロスペース(ユーロライブ)で開幕した。初日の16…

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戦火にほんろうされるシリア人の苦難……映画「葬送のカーネーション」

暗い灰色の雲が垂れ込める荒涼とした草原地帯を走る車の上には、木製の棺が載せられている。冷…

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トルコの雪国が舞台の映画「About Dry Grasses」

東京フィルメックス2023に出品された中東映画2作のひとつ。約3時間の大作で、長いといえば長か…

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退廃したイラン?変わらないイラン?...映画「クリティカル・ゾーン」

東京フィルメックスがいよいよ開幕。まず、イラン映画「クリティカル・ゾーン」をみた。 革命による政体転換から40数年。イスラム国家イランの現実を凝った映像で表現する。メガロポリスの首都テヘランを車で縦横に走り回って取り引きする麻薬の売人と、彼と関わる人々を通じて。 作品に登場するさまざまな人物、たとえば、麻薬密輸に手を貸すキャビン・アテンダントなど、さすがに、登場人物たちは誇張されすぎだろう、という声もあるかも知れない。実際はどうなのだろう。 私自身、イランに何年か住んだこ