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日本で食べるマクルーバ①東京・中井「ザハラー」

NHKの朝の情報番組「あさイチ」で、アラブの炊き込みご飯「マクルーバ」が紹介されたのは、11月15日のことだった。マクルーバは、パレスチナ を含む、いわゆる「シャーム(大シリア)の地」の郷土料理だ。パレスチナ・ガザへのイスラエル軍の攻撃が激しさを増している中でNHKは、マクルーバになんらかの思いを込めたのだろうか。

そんなタイミングで、友人の比呂啓さんから、「マクルーバの食べ歩きをしませんか?」という誘いがあった。茨城県坂東市のパキスタン料理店「レッツイート」で、マクルーバパーティを開いたというツイートがXで流れたのがきっかけだった。おそらく、この食事会は、NHKでのマクルーバ紹介とは関連性のない、別の自発的な動きだ。

食への感度が高い比呂さん。それを聞いて、私も、猛烈にマクルーバが食べたくなった。話に乗って、12月と翌年1月に集中的に、首都圏でマクルーバに絞って食べ歩くことにした。比呂さんは来年1月までに少なくとも10店でマクルーバを食べて、私が開設したnoteマガジン「この広い世界を知るための10皿」に原稿を寄稿するつもりのようだ。私のほうは、個々の店の訪問記を順次のせていこうと思う。

その1回目が、東京・中井のアラブ料理店「ザハラー」。元々、「シュクラン中井」というアラブ料理店があった場所。そこを居抜きで借りたのがこの店。店のメニューにはなかったが、相談の末、マクルーバを特別に作ってもらうことになった。

比呂さん含め、5人でお邪魔する。オーナーは、父が現イスラエルのジャッファ出身のパレスチナ人。料理人もジャッファにゆかりがある人だという。

カルダモン入りの紅茶を飲みながら、マクルーバができあがるのを待つ。マクルーバは、アラビア語で「ひっくり返されたもの」という意味。鍋をひっくり返して料理を皿に盛る、という部分がある意味、料理のキモだ。今回は、その興奮の瞬間をみることはできなかった。テーブル上でそれをやるのは、店側にすると簡単なことではないのだろう。奥の厨房で、オーナーとシェフの2人がかりで、大皿に盛り付けられた料理が姿を現した。

マクルーバ

ホクホクしたジャガイモ、味のしみたナス、柔らかい羊肉など、具だくさん。スパイスの香りが湯気とともに立ち上る。みんな夢中になってスプーンでつつく。

マクルーバを平らげたあとは、薄型パンをスプーンにして、冷前菜4種をいただく。ホンモス(茶色)、ムタッバル(淡い茶色)、ババガヌーシュ(緑色まじり)、ムハンマラ(赤茶色)。ムハンマラは、オーナーから「辛さはどのぐらい」と聞かれ、「まあ、普通に」と答えたら、結構辛いのが出たが、パンチがきいていて、おいしかった。ババガヌーシュは完全にすりつぶされず野菜感が残っていて、食感が良い。一般的なババガヌーシュとは違ったが、これはこれで良い。

前菜4種盛り

デザートはクナーファを選択。ヨルダン川西岸のナブルスのものが特に有名だ。オーナーが、ドイツまで食材を探すなどして「極めた」という一品。中におさまっている伸びるチーズ。外側は、カリカリに焼かれていて食感の対比が面白い。ピスタチオフレークがトッピング。この店ではほかに、バクラヴァ、ハラワート・ジブン(ハマロール)、バスブーサ、マハラビーヤといったデザートを用意している。

クナーファ

デザートまでたどり着き、5人は深い満足感にひたった。「マクルーバ食べ歩き」。上々のスタートを切れた。

ザハラー・レストランは、マクルーバも含めて新しいメニューを増やしていく方針とのこと。今後、どんな料理が登場するのか、気になる存在になりそうだ。

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