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同じしぐさでも、国によって意味が違う…やっぱり世界は面白い

エジプトなどアラブ圏でひんぱんにみかけた指を使ったしぐさ。ヘッダー写真の男性(イラク人)がやっているものだが、「手の甲を下にして5本の指をすぼめる」というポーズ。これは何を意味しているか、分かるだろうか?

この質問に何と答えるかで、あなたがよく行く外国が、どのあたりなのかが分かるかも知れない。下のイラストは、だいぶ以前に、エジプトでみかけた雑誌広告。この広告の英語の説明書きによればこのジェスチャー、エジプトでは「待て、辛抱しろ」、イタリアでは「どういうことだ?」といった疑問や非難、ギリシャでは「素晴らしい、完璧」という感嘆の意味だという。

まての仕草IMG_2251

この広告を出したのは、エジプトに支店がある外資系銀行。「ローカルな知識の重要性を過小評価するな」といった意味の言葉が英語で添えられている。この広告が何を言いたいのか。その辺の解明は、ここでの本旨ではないから深く立ち入らないが、「国や地域が違うと、まったく異なる文化習慣があるから、他国では謙虚になれ」といいたいのか? あるいは、「郷に入れば郷に従え」と言いたいのか? いずれにしても、銀行の広告としてはちょっと謎めいている。

でも確かに「郷に入れば郷に従え」という言葉は、きょうの話題にぴったりだ。この指をすぼめるジェスチャーをエジプトで初めて見た時は、何がなんだか分からなかったが、そのうち自然に使いこなすようになった。一度慣れたら、使い勝手がとても良かった。

ある意味せっかちで直情的な、エジプト人がちょっと熱くなった時に、ちょっとクールダウンさせるのにぴったりなのだ。喧騒のエジプトの街で、「落ち着け」「待て」と声を張り上げるほど、体力や気力を消費するものはないからだ。

とはいえ、このジェスチャーの意味が、別の国ではまったく異なるものだとは、エジプトに行って数年後にこの広告を見るまで知らなかった。しかもエジプトとは地中海をはさんで隣国といってもいい、イタリアやギリシャとも、全く異なる意味だったとは...

ツイッターで、こんなふうにつぶやいてみたら反応がかなり沢山きた。海外で暮らしたり旅行に行った時、このジェスチャーになじんだ人も多かったようだ。アラブ史の専門家、中町のぶたさんからは、「コメントではモロッコとイランが同じ意味だと書いてあって驚き」との指摘も。

そこでこの際、情報を整理・集約するために、みなさんからのコメントを、国別に分類して、ここで紹介してみたいと思う。全部を網羅できないことはあらかじめ了承いただきたい。

【イタリア】

イタリアでは、「何言ってんだオメー」という意味になると、Adriano Jose   さん。

「ツーか何言いたいんだよ」といった意味だと、ワダシノブさん。

イタリアとエジプトと両方住んだことがあるという、Yasukoさん。それは確かにとまどったことでしょう。

りりぃさんからは、「どういう意味?」というニュアンスだとのコメント。おおよそ近い意味だとはいえ、ジェスチャーを言語化すると、表現に微妙に違いがある。ジェスチャーは、言語よりも意味が曖昧で多義的だということなのだろうか。

【アラブ圏】

エジプトでは、日本語にするとすれば、やはり「ちょっと待て」ですかね。

レバノンやシリアといった東アラブだけでなく、リビアやスーダンも「ちょっと待って」の意味で使われるそう。

【ギリシャ・トルコ】

ギリシャとトルコではおおむね似たようなニュアンスらしい。

強調の意味があったようだ、という指摘もある。

【アジア】

このジェスチャーは、アジアにもあるようだ。多くの人が、食べ物などを乞う仕草だと指摘する。口に食べ物を運ぶ動作を模しているのか。

こちらは、もしかするとお札を数える時の仕草に由来しているのだろうか。

【ハワイ】

ハワイのフラダンスには、手をつかった表現があるという。手をすぼめるしぐさは花を意味するそうだ。つぼみの形を描写しているのだろうか。

【日本】

日本では、手話として両手でやると「終わり」を意味するという。

【考察】

ワットマンさんからは、話される言語もジェスチャーすらも異なる地域の間で、共通のコミュニケーションの土台となったのが「ラテン語」だった、という指摘があった。

と、さまざまなコメントを紹介してきた。世界は画一的ではなく、違いがあって、とまどいや驚きがあるからこそ、旅も面白い。

早く新型コロナウイルスが終息して、地中海地域などこのジェスチャーを振るに活用して、気ままに旅ができる日が一刻も早く来ることを祈りたい。


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