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敷居を下げることで広がりを見せるということ

何かを初めて経験するとき、そのきっかけは「面白そうだったから」というもので、実際に面白かったら、そこからどんどん深いところに進んでいく。
よくある話だと思います。中には、それを仕事にしてしまう人もいるでしょう。

一方で、初めて経験したときに、あまりにも専門的すぎる深い部分が見えてしまうと何が起きるか。
ものすごく難しそうなものに映ってしまい、敬遠してしまう。
「敷居が高い」と言われる状態ですが、これもまたよくある話ではないでしょうか。

数年前、コーヒーを飲みはじめたばかりの頃の話になりますが、とあるコーヒー屋さんが主催するコーヒーのカッピングイベントに参加する機会がありました。
カッピングとは、簡単に言えば、コーヒーの味見をするものです。

その場には、コーヒーのプロのような人もいれば、コーヒーのことは詳しくない人もいたのですが、プロの方々が深い世界の話で盛り上がる中、詳しくない人達が置き去りにされているのを目の当たりにして、「コーヒーの世界って、ボクみたいな素人が気軽に足を踏み入れてはダメなんだ」と当時は思ったものです。

もっとも、何年か後に、難しいことを抜きにして、味の違いを楽しむ気軽なカッピングも存在することを知ったのですが。。。

さて、最近、インスタグラムやYou TubeのLIVE機能を使って情報発信をする方が増えていますが、先日、とあるコーヒー屋さんが、「おうちで楽しめるコーヒーカクテル」をテーマにインスタライブの配信を行なっていました。

「コーヒーカクテル」と聞いてどう思われるかは人それぞれかと思いますが、このテーマを見た時、「カクテルっていろんなお酒を準備しなきゃダメだし、シェーカーなどの道具も必要だから、そんなに簡単にできるモノじゃないのでは?」というのがボクの率直な感想でした。

で、実際にライブを見てどうだったか。
準備されたものは、水出しアイスコーヒー、氷、グラス、マドラー(何かかき混ぜるもの)。
そして、肝心のお酒は、なんと「缶チューハイ」。

正直、びっくりしました。
缶チューハイが出てくるなんて予想だにしていませんでした。
ただ、その一方で、こんなに簡単にできるものなんだ。と思いました。

缶チューハイなんて邪道だ。カクテルのことを何も知らない素人が適当にやってるんじゃないか。
そんなことを言う人も出てきそうですが、これを実演してくれたのはコーヒーカクテルの日本大会で決勝まで勝ち進んでいる方であり、この道の第一人者です。

コーヒーカクテルを深く知る人であれば、缶チューハイじゃなくて、ちゃんとしたお酒を使った方が美味しいに決まってる。
そんなことを思われるかもしれません。

それは正しいのかもしれません。
そういう人が「缶チューハイなんて邪道だ」と言いたくなる気持ちも理解できます。

一方で、「コーヒーカクテルには興味があるけど難しそう」と思っていた人であれば、缶チューハイが使われることで「こんなに簡単にできるのなら、私もやってみよう」と思うのではないでしょうか。

より深く、より高品質に、より専門的に。
自分のビジネスにおいて、高付加価値をつけていく戦略としては正しい方向性だと思います。
ただ、追究すればするほど、そのレベルについてこれるお客は減っていく気がします。

その対極となる、より広く、より手軽に、より身近に。
そんな方向性を求めるのであれば、厳密には正しくなかったり、邪道だったりすることであっても、本質を踏み外さない程度であれば、その世界を知ってもらおう、足を踏み入れてもらおうと敷居を下げることも戦略としては正しいのではないでしょうか。

プロとして仕事をしていると、高いレベルをもって仕事を進めていくのは自然な流れだと思います。
ただ、その一方で、置き去りにされてしまうお客がいるのであれば、相手のレベルに合わせてあげることでビジネスをより大きく広げることができるのではないか。インスタライブを見ながらそんなことを考えた次第です。

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