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マスター、ついに干される

当店では毎月お店からのお知らせや、お客様から投稿していただいたエッセイを載せた通信を発行している。これはその編集風景を切り取ったものである。

「来月の通信ができたので校正チェックしてもらえますか?」
「まて、まだ私のエッセイのデータを渡していないぞ?」
「今回は他の皆さまがたくさん書いてくださったので、紙面のスペースは十分埋まりました」
「スペースの問題じゃないだろ?私は1回目から欠かさず書き続けているんだぞ!」
「そう言いましても、通信のルールは公平を期すため投稿していただいた方から順に載せるとおっしゃったじゃないですか?」
「わたしは別だろ、わたしは」
「じゃあ、どなたか削りますか?」
「いや、そういうわけには・・、ちょっと見せてみろ。ここにスペースがあるじゃないか」
「そこは私が適当に埋めとこうと思いまして」
「なんで私は削られて、君の適当な埋め合わせは入るんだ?」
「スペースが小さすぎるので、それでいいかと」
「よしわかった。500字ぐらいにまとめたネタがある。これなら入るんじゃないか?」
「多すぎます」
「多すぎって、みんな1000字以上書いてるじゃないか!」
「それはマスターが何字でもいいですよって安請け合いしたからじゃないですか」
「そうだった、すまない。じゃあ何字くらいなら入るんだ?」
「150字くらいですかね」
「150字!?これはエッセイだぞ!Xにポストしてんじゃねえんだぞ!」
「いいじゃないですか。どうせいつも内容は薄いんだし」
「なんだと!?私のエッセイを楽しみにしている人もいるというのに・・」
「下手の横好きは、はたで見てると優越感に浸れますから」
「ちょっと待ってろ。150字で見事なエッセイを書いて才能があるところを見せてやる」
「時間がないので早くお願いしますね」
「よしできた!150字だ。この窮地を逆手にとった見事とな文章だ」
「あっ、150字も入らないな」
「おい、これ以上は削れないぞ」
「じゃあ、これで」
「なんで私の文章だけフォントが小さくなるんだ!同じ紙面でここだけ違和感あるだろ!」
「じゃあ、30字ぐらい削ってください」
「どうせなら全体のフォントを小さくすればいいじゃないか」
「それだと年配の方が読めなくなってしまうんです」
「じゃあなにか?私の文章は年配の方は見なくていいとでも言いたいのか?」
「そこまで言いませんが、理解はされにくいと思います。なんかいつもウケを狙って書いているところがあるでしょ?」
「うっ、わかった。今回はこれで手を打とう。たしかに私のセンスはZ世代向けだな」
「じゃあこれで印刷入りますね?」
「ああ。・・・ちょっとまて、最後の私の名前が見切れているじゃないか!」

この物語はフィクションです。
事実をマイルドにして、スパイスを加えて再構成しております。

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