マンション管理士、管理業務主任者受験者のための会計その4、決算書(1)
会計の勉強も4回目になります。
今回のテーマは「決算書」です。
株式会社と違ってマンション管理組合の決算書は、収支決算報告書、貸借対照表、財産目録の3つです。
予算主義で勉強した収支決算報告書をもう一度チェックしてください。
会計口と収支決算報告書の考え方
マンション管理組合の会計口については、その1で説明しました。
管理組合の運営費を管理する管理費会計。
定期的な修繕工事費を管理する修繕積立金会計。
大きく2つの会計口で管理します。
それぞれの決算資料は以下の通りです。
① 収支決算報告書
② 貸借対照表
➂ 財産目録
1、収支決算報告書とは
年間で計画された収支予算計画と1年間の実績である収支決算報告書から構成されます。
会計の通信簿と言えます。
年度初めに立案した計画が、計画通りの推移されていたかを確認します。
代表的な決算報告書の例です。
大項目として「収入」と「支出」に分かれ、各小項目が記載されています。
試験対策が目的なので過去問の出題例を参考に作成しました。
各項目毎に予算、実績が比較でき、各項目毎に達成率がわかります。
例にしました収支報告書より読み取れることは次ようなことになります。
収入では
● 専用使用料が予算より増えています。
➡ 空き駐車場等の契約があったことが推測されます。
支出では
● 光熱費が予算に対して大幅に増加していることが確認できます。
➡ 予算の段階で電気代等の値上がりの見込みを甘く見た、あるいはそれ以上の値上がりがあったことが推測されます。
● 軽微修繕費や予備費が予算時と齟齬が出ていることが確認できます。
➡ 元々、軽微修繕費や予備費は、突発的な設備の故障等に対応するための費用です。予定外の修繕や予想外の支出が無ければ、繰越される額になります。
繰越額では
● 突発的な設備の故障等がなかったことが幸いして、予定した額より多く来期に繰越せることがわかります。
➡ 来期に管理費の値上の必要はないと判断でいます。
以上のように収支決算報告は、予算に対して実際に支出された内容を吟味することで、予算計画時の問題点などの抽出し、来期の予算計画が作る資料にもなります。
*管理会社が会計資料を作成している場合、組合の財力を把握できます。
例で示した収支決算から「この組合は1~2割程度の委託費の値上は可能」と判断することもできます。(あくまで考え方です。)
2、収支決算報告書で覚えること
(1)収支報告書の構造を覚える
決して難しい構造ではありません。
図に示した①~⑤を理解すれば、簡単な構造であることがわかります。
(2)決算報告書には取引状態(仕訳科目)は反映されない
仕訳については解説しましたが、4つの科目を覚えていますか。
仕訳は取引ごとの状態を示す帳簿であり、4つの科目は、借方(資産)の科目に「未収金」「前受金」、貸方(負債)の科目に「未払金」「前払金」でしたね。
収支決算報告書は、確定した取引だけを記載するため、確定していない4つの科目は反映されません。(重要)
これを理解できないと試験の文章問題を解くことが出来ません。
覚えることはこの2つだけです。
マンション管理士や管理業務主任者の実務では、もっといろいろなことを知らなければ実務はできませんが、試験の為だけであればこの2つで十分です。
3、過去問で確認しよう
選択肢
1 令和3年度の支払保険料が令和2年度より10,000円減少した理由は、令和2年度に令和3年度分の保険料10,000円を前払いしていたためです。
2 令和2年度の水道光熱費は、80,000円でした。
3 令和2年度には組合員Aの管理費の未収が10,000円ありましたが、令和3年度に回収されたため、管理費は10,000円増加しました。
4 令和2年度の次期繰越収支差額は、580,000円でした。
過去問解説
比較収支報告書はよく出題される出題形式です。
複数年の収支報告書の実績を並列表示した表のことです。
選択肢を一読すると次のことがわかります。
選択肢1の解説
収支報告書に前受金等の科目は反映されない。
これを知っていれば、収支報告書では読み取ることが出来ないと判断でき、✖であると判定できる。
選択肢3の解説
収支報告書に未収金等の科目は反映されない。
これを知っていれば、収支報告書では読み取ることが出来ないと判断でき、✖であると判定できる。
選択肢2と4を確認するためには、×××を埋める必要がある。
選択肢2は「令和2年度の水道光熱費は、80,000円でした。」であり、⑤を求める必要がある。
選択肢4は「令和2年度の次期繰越収支差額は、580,000円でした。」であり、⑤を求める必要がある。
表の「×××」の関係は次のようになります。
算数の問題です。
②=560,000円となり、①も560,000円と判ります。
選択肢4が✖であると確認でき、水道料金を求めるまでもなく、答えは選択肢3であると判断できます。
計算すると
令和3年度前期繰越金収支差額=630,000-70,000=560,000・・・②
令和2年度前期繰越金収支差額=560,000・・・①
令和2年当期収支額=560,000-510,000=50,000・・・③
令和2年収支合計=400,000-50,000=350,000・・・④
令和2年水道料金=350,000-230,000-40,000=80,000・・・⑤
すべて計算していると時間を使います。
このような問題を解くときのポイントは
ポイント1
選択肢1と選択肢3が取引状態を問う科目であることから収支報告書では判断できないと見極め✖と判断すること。
ポイント2
穴埋め問題の①と②が同じ値であることを見極め、560,000円を導き、選択肢4を✖と判断すること。
結果として水道料金の計算をせずに答えを導き出すことができます。
同じような考え方で、管理業務主任者、マンション管理士の会計の過去問題を解いてみましょう。
文章問題を解くスピードと正解率が改善されることを実感できると思います。
次回は貸借対照表について説明します。
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