目を合わせて見つめるだけで
UFOの話をする。
当方、UFOを目撃したことがある。
学生時代、1人で夜に留守番をしていた。
あまりにも星が綺麗な夜だったので、1人で表に出て夜空を見上げていた。その日は雲が少なく、街もあまりうるさくなかったので夢中で星を見ていた。
やぁ、田舎はこういうところがいいやなぁ、なんてのんびり空を眺めていたら、星がひとつだけ、ゆっくりと垂直に下がった。
はい?
いやいやいや、飛行機だ、飛行機に気づかずにそんなように見えただけだ、きっとそうだと思い少し脇に汗をかきながらその星を見つめた。
飛行機なら赤い光が点滅するはずである。
"それ"は見た目は完全に星である。遠く、白い光のみを同じ光量で放ちながら垂直に下っていく。
まてまてまてまてまだ慌てるタイミングではない。見間違いカナ?へへ、アタイ寝ぼけちゃってるのかしら。
瞬きをしても変わらずに下がり続ける"それ"から、恐ろしくて目が離せなかった。
次の瞬間。
"それ"は直角に横に動き始めた。
これ、アカンやつや。
よくわからないのに、(ヤバい)という言葉が頭に埋め尽くされた。よくわかってないのに、冷や汗が止まらない。
これは良くないことだ。
とても良くない。
街の静かさが異常に感じられた。いつもは騒がしい幹線道路に通じる家の脇道も、何故か一台も車が通らない。駅からほど近いはずの家の前の信号も、誰の声も聞こえない。
荒息の中必死で姉に電話をかけた。
姉はすぐに出て、気の抜けた声で「どうしたの?」と言われた時は安心で涙が出そうになった。
「ゆ、UFOがいる、見えてる、まだ移動してる。」
「は…?今どれくらいの距離にいる?」
「星と同じ大きさだけど、近いのか遠いのかわからなくなってきた、怖い、目が離せない。」
姉に現状を報告していると、"それ"は音も立てずに高速で視界の端に消え去った。
「き、き、消えた!!!!」
私はもつれた舌で姉に伝えた。バカなことを言っていると自分でも思った。笑って「いいから黙って留守番してな」と言って欲しかった。
だが、姉は努めて冷静に低い声でこう言った。
「一目散に家に入りな。押入れに入って布団にくるまりな。見つかったらもう会えないかもよ。」
み、み、み、見つかる?!!?!!??!
冗談じゃない。
冗談じゃないよマジで。
やめてくれよ。私はのんびり星を見てただけなんだよ。なんで私なんだよ。アブダクトされた人ってみんなこんな感じだったの?嫌すぎる。なんかもう全部嫌すぎる。
私は半べそをかきながら高速で家に入り、押入れの布団にくるまった。
ただいまぁと家族が帰ってきて、姉が「もう大丈夫だよ!」と駆け寄ってきて(助かった…)と心底安堵した。
母には「変な電波出してたんじゃないの?」と謎の疑いの目をかけられたが、どんな電波やねん。出せてたらテレビ出とるわい!とまた泣きそうになった。
マジで怖かったんスよ。
今でも星は好きで良く眺めるが、ぶっちゃけまだ怖い。また星が下ったら、今度こそ正気でいられないと思う。勘弁してくれ!!と叫ぶ自信がある。
みんなももし、一つの星が確実に他の星と違う動きをし始めたら、急いで押入れに入ることを勧める。そこからは私も保証できないが、頑張ってアブダクトされないようにしてください。
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