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クレームは言葉選びと態度から生じる

平成に入社したお局CAのレム子です。飛行機の中では、ちょっとした言葉の応対や所作でお客様が笑顔になったりお怒りになったりという事例がたくさんあります。そんな中の一つをお伝えします。


飛行機に、まだ喫煙席があった時代


そのころ、今では考えられないことですが、飛行機の中でタバコが吸える時代でした。ビジネスマンは愛煙家が多く、喫煙席から先に満席になってしまうことが多々ありました。

その日も東京-大阪、朝の満席便。東京-大阪便は新幹線との競合路線です。特にビジネスマンの方々は、少しでも早く現地に到着したいと思っていらっしゃって飛行機を選らんでいるお客様ばかりです。到着後はすぐに、会議や商談の予定が入っています。

ANAをお選びいただいた私たちとしては、到着の遅れは絶対に許されないのは当然だとお判りになるでしょう。そして満席便の機内は、クルー間に朝からピリピリした空気が流れるのです。今思い出しても緊張で背筋がピンとします。

当時の東京ー大阪便ではサービス時間が正味15分でした。満席時は528名のお客様に、おしぼりの配布回収の後に、お飲み物のチョイスサービスをしていました。

新人CAはお客様に「仕方ないですよね」と言ってしまう。。。

そんな中、定刻通り出発し上空でこれからサービスが始まるというとき、「ぴんぽ~ん」とインターホンが鳴りました。後方担当の新人CAからでした。「お客様からクレームです。喫煙席を希望したのに、禁煙席指定になっていると。でもそのお客様、事前座席指定もしていらっしゃらないし、チエックインも遅かったので喫煙席しかなかったと思うんですよね。満席だから仕方ないですよねってお伝えしたらお怒りになっちゃって、、、」とのこと。

報告を受けたチーフパーサーがすぐにお詫びに行きました。様子を伺うと、満席のお客様の前で「喫煙席希望だったのに、って言ったら、チエックインが遅いから仕方ないって言われた、どういう教育してるんだ!」と烈火のごとくお客様に大声で怒鳴られています。

確かに、新人CAが説明した通り、お客様が事前座席指定や、早めのチェックインで座席指定をしていたら、喫煙席がとれていたはず。ただ新人CAの応対が杓子定規だったためクレームに火がついてしまったわけです。

たとえお客様に非があったとしても、そこをうまく話術で回避して不快な思いをさせないのが、CAの技。新人CAに代わってお詫びに行ったチーフパーサーの応対はこうでした。

チーフパーサーが全力でクレーム対応

まずは「今日は満席でご希望に添えなくて申し訳ありません」と謝罪。お飲み物、スープやコーヒー、スッとするメントール系のキャンディーをお持ちしたり、到着まであと○○分で、到着したらすぐに行ける喫煙ロビーのある場所をお伝えしました。手を変え品を変えお話し、また最初のCAの対応で不愉快な思いをさせてしまってとても申し訳なかったことなど改めてお詫びし、結局到着間際のシートベルト着用サインが点灯するまで、通路で膝をついてクレームの方とお話していました。

さすがのチーフパーサーの対応で、怒鳴り散らしていたお客様も、到着の時にはだいぶ激高した気持ちもおさまっていて、降りるときには、「あんなに怒って悪かったね、話を聞いてくれてありがとう」と言ってくださいました。 

地上係員の対応で、すべてが台無しに。。。

しかしまだ続きがありました。このようなクレームがあった場合、操縦士が上空から到着地の地上係員にクレーム発生の連絡をして引継ぎします。その日も、到着して飛行機のドアを開けるときに、クレーム対応の地上係員が待ち構えていて、そのお客様を引き継ごうとしました。

チーフパーサーが地上係員に「こちらのお客様です」と引き継ごうとした時、地上係員がチーフパーサーに向かって(もう行っていいよ、引き継いだから)という意味で後ろ手で、軽く手を振ったその時です。そのお客様がその手を見て、「なんだ!しっしっというようなその手はなんだ!!!」とまた怒鳴られたのです。せっかくお怒りが収まってありがとうって言ってくださったのに、、、。

地上係員も(お疲れ様、このクレームあとは僕が引き継ぐよ)の意味での動作だったと思うのですが、それがお客様にまた不快感を与えてしまったわけです。よりによってなんでそんなしぐさを・・・。お客様の立場に立ってお客様の目を常に意識して行動することが大切と痛感させられた事例でした。


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