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同人アンソロジーを編集するあなたへ

世の中の同人作家のみなさん、こんばんは。翔夜です。
前回の同人アンソロジー企画ノウハウ記事が大変需要があり驚いたので、その続編です。アンソロジーは企画するだけでは終わりません。編集する必要があります。今回は、前回の記事で書ききれなかった部分(企画した後の部分)を補足的にまとめてみたいと思います。

1. 編集ソフトは何を使えばいい?

ページ管理機能

個人的には「CLIP STUDIO PAINT EX」一択です。EX限定のページ管理機能がとにかく便利で、数100ページに及ぶアンソロジーのページをサムネイルで確認しながら編集できるのは、とてもイメージが掴みやすいです。ノンブル(ページ番号)をページ内に自動的に追加してくれる機能も便利です。
普段はPROを使っていると言う方も、月額利用(2020年8月現在は月650円)で使用できるので、編集する月だけ契約するのをお勧めします。
Adobe InDesignが使える方は、InDesignを使うのも良いでしょう。

執筆者様からの原稿は、PSD形式(漫画・イラスト)及びPDF形式(小説)で受け取る場合が多いと思います。今はほとんどの印刷所でPSD形式とPDF形式の混合入稿が認められているので、そのまま入稿できるケースが多いです。(もちろん、事前に印刷所様のホームページをご確認ください)
ただし、アンソロジーとしてページ内にノンブル(ページ番号)を付け加える場合は、それぞれのファイルの編集が必要です。私はCLIP PAINT STUDIOにPDF入出力プラグインを追加してPDFを編集しています。PDFの編集が難しい方は、小説をテキスト原稿で受け取って、主催側でレイアウトをするというケースもあります。

2. 受け取った原稿、何を確認すればいい?

ついに執筆者様から原稿が届きました! アンソロジーの編集をしていて一番嬉しい瞬間です。やったー! うれしいな~。でも何を確認すればいいんだろう。拝受した原稿には確認すべきことが多々あるので、自分のためにもチェック項目を書き出しておきます。

以下の項目は、必ず全てを確認しなければならないものではありません。あくまでも、私はこの部分を確認しているという参考のための情報です。
人によっては、確認が細かいと感じる部分もあるかもしれませんが、編集者として気付いた点があれば、念のため確認するようにしています。その際、「修正してください」ではなく、「この部分がこうなっていますが、このままでよろしいですか」とお伺いするようにしています。

2.1 漫画・イラスト原稿の場合

(1)解像度・サイズは合っているか
最も重要な部分です。書き出し時の解像度誤りや、塗り足しの大きさ誤りなどがあるので、きちんと確認します。軽微なものについては、主催側で修正することもあります。

(2)塗り足し線まで絵柄が描かれているか
たまに仕上がり線で絵柄が終わっていたりするので、塗り足し線の周辺を一通り確認します。

(3)台詞が切れそうな部分はないか
仕上がり線に近すぎる台詞、ノド側に食い込みすぎている台詞がないかどうかを確認します。アンソロジーはページ数が多くなりがちなので、ノド側の部分は個人誌よりもずっと開きづらくなります。大体の目安ですが、ノド側15mm程度に重要な台詞が重なっていないか、チェックしています。

(4)局部修正は十分か
成人向アンソロジーの場合、この点も非常に重要です。修正の基準は執筆者様方に委ねるのでなく、発行責任のある主催者自身が明確な意識を持ち、しっかりと定めておく必要があります。
修正が不足していると感じた原稿については、きちんと追加の修正を依頼することも主催者の責任です。なあなあにすることのないようにしましょう。

(5)(任意)トーンがモアレを起こしていないか
これはやらなくてもいいです。でも私は気になってしまうたちなので、「ここは…?」と思った部分は100%に拡大してトーンを確認しています。

2.2 小説原稿の場合

(1)ページサイズは合っているか

ページサイズ

PDFファイルを開いて、プロパティを開いてページサイズを確認します。小説は塗り足しがないのでシンプルですね。

(2)フォントが埋め込まれているか

フォント埋め込み

フォントのタブを開いて、全てのフォントに「埋め込み」や「埋め込みサブセット」と書かれていればOKです。なお、フォント名が何も表示されない場合は、文字が画像化されている状態ですので、その場合もOKです。

(3)明らかな文章の誤りがないか
通読した際に、「彼は急いで走っいてく。」のような明らかに誤っている箇所があった場合は執筆者様にご確認しています。

(4)(任意)その他校正
これはやらなくてもいいです。誤字脱字の指摘も人によっては不快に感じるので、慎重にしてください。と言いつつも、私はかなり確認させていただく方で、同音異字や脱字については特に細かく見ています。一方で、文字の組方については作家様の個性だと思い、何も指摘しません。このあたりは編集者の趣味と個性だと思うので、嫌がられない程度に自由にしてください。

3. ノベルティ、どうする?

アンソロジーの醍醐味、ノベルティ! ですが、やはりグッズはお金がかかるので、無理に作る必要はありません。「ノベルティを考えるのが楽しくてワクワクする!」「アンソロジーのテーマに沿ったグッズを作りたい!」という方向けの酔狂です。
もしくは、「利益を出したくないので調整(課税対策)のためにノベルティを作る」というケースがあります。が、これはかなり稀なケースだとお考えください。そこまで利益の出るアンソロジーは殆どありません。

3.1 健全な収支を目指そう

あまりグッズを作らない方には分かりづらいのですが、グッズの印刷費はそこそこ高いです。物によっては、アンソロジー本体に匹敵するくらいの価格になります。昨今の即売会中止の影響で部数がはけず、ノベルティの印刷費がかさみ大きな赤字を抱えたアンソロジーの話なども聞きます。

アンソロジーの部数は個人誌と比べても特に読みづらいです。と言いますか、ほとんど読めません。あまり無理のない部数で、無理のない仕様で制作される方が、作る側にとっても、手に取る側にとっても健全だな、とウィズコロナの現状では特に感じているところです。

3.2 同人グッズの注意点

同人グッズは海賊版制作の危険性を常に孕んでいます。アンソロジーという様々な執筆者様を巻き込む企画で、そのような問題を発生させることのないよう、最大限の注意を払いたいです。
同人グッズについて、公式がガイドラインを出されているケースもありますが、ほとんどのジャンルではそうではありません。その際、必要なのは「ジャンルの誰かがこう言っていたからこうする」というのではなく、「自分はこのように考えているから、このように同人活動をする」という主体的な指針です。

以下に例示として挙げさせていただくのは、同人グッズを作る際に私が気をつけている点です。実際に全て守ることができているか自信はありませんが、常に自問自答しながら同人活動をおこなっています。

・ジャンル名やキャラ名(フルネーム)をグッズに印字しない。
・グッズにするイラストは公式の絵柄に寄せない。
・作中に登場するロゴや衣服をデザインとしてそのまま使用しない。
・公式で既に発表されているグッズについては、図案が似ないように細心の注意を払う。
・商標登録を侵害していないか、入念に確認する。
・当日版権が必要なレベルの立体物は制作しない。
・有償でグッズを頒布する際には特に注意する。

 * * *

などなど、新たにアンソロジーを編集しながら考えていたことでした。私自身が最近実際に質問を受けた内容もあります。
アンソロジーは企画するのも参加するのも大好きなので、皆が楽しくかつ楽にできるよう、やっていきたいねという思いが一番にあります。それでは皆さま、良き同人ライフを!

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