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筍に見る先人たちの努力と苦労

今日は朝からあいにくの雨となりましたが、僕の住む雪国新潟にも少しずつ春の訪れを感じる頃となりました。

今年はかつてない暖冬となり、この町に生まれて初めて一度も屋根の雪下ろしをしない冬となりました。

早い年は10月の終わりや11月の初めには雪が降り始め、完全な雪解けはGW以降という町ですので、「これは異常だ」「地球がおかしなことになってるぞ」

そんな声もあちこちから聞こえてました。


なんの因果か今地球は未知の病原菌で大混乱となっています。

こんな田舎町でもドラッグストアでは朝からトイレットペーパーを買いに並ぶ人たちで行列ができました。

もしかしたら今年の暖冬はこの大混乱の前触れだったのかも…そんな気さえしてしまいます。

さて、話を戻しますが今日は筍のお話です。

春といえばやはり筍ですよね!

あの歯応えと出汁を含んだ穂先の味わいが大地の力強い芽吹きのパワーを感じさせてくれます。

ですが、その下処理は実は結構手間がかかるのはご存知でしょうか?

ざっくりとその手順をご説明しますと、
まずは筍のアクを抜く作業から始まります…

①こびりついている土をたわしで洗い流す
②穂先をカーブに沿って切り落とす
③斜めに切った断面にさらに切り目を入れる
④鍋に水を張り、米糠、鷹の爪を入れる
⑤落とし蓋をして中火で茹でる
⑥40〜1時間ほど茹でたのち根元に串を刺して火の通り具合を確認
スッと串が通るようなら茹で上がり
⑦そのまま茹で汁に浸けたまま粗熱を取る
⑧冷めたら外側の皮を剥く
⑨根元の固い部分を切り落とす
⑩皮の残りやぶつぶつを箸でこそげ落とす
⑪流水で米糠を洗い流す
⑫新しい水で2〜3分茹でて糠くささを取る
⑬ザルに上げて水分を軽く飛ばす
⑭調味した出し汁で含め煮にする
⑮一度冷ましたら完成(冷めることで味が入る)

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どうですか?
ご家庭じゃなかなかできませんよね(笑)

僕自身、毎年のことながら「面倒だよなぁ〜」と思ってますから(笑)

ですが、こういう昔からの変わらない仕事をしていると改めて先人たちの探究心と情熱には頭が下がります。

おそらく僕らが想像もつかないほどの途方もない時間と労力があったのでしょう。

何百年と続く料理の歴史において、変わらず伝承されるこの手法にたどり着くまでに、いったいどれほどの人たちが苦心してきたのかと思いを馳せます。

もしかしたら僕が知らないだけで、もっと効率よく簡単にできる方法がこの21世紀にはあるのかもしれません。

ですが、こういった料理はあえて手間をかけることでより美味しくなるということもあるのではないでしょうか?

うまく言えませんが料理とはそういう時間も味わいにつながるような気がするのです。

何千、何万の料理人たちが追い求めてきた結果、今なおこのやり方のままなのは、おそらくこのやり方が一番筍の美味しさを引き出すからなのでしょうね。

アクは抜きすぎると素材の持つ旨味までなくなってしまいます。

ちょっとしたえぐみを残すからこそ僕たちは複雑な味わいを感じるわけです。

もしかしたら人生もそうかもしれません。

失敗や苦労を経験するからこそ、それが雑味となって人生をより深く豊かにしてくれるのだと思うのです。

もし今、この時代に先人たちが生きていたら僕たちにいったいどんな言葉をかけるでしょうか?


筍への努力と苦労に感謝しつつ、例年よりも早い春を迎えたのでした。


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