夜、電車内での攻防。

※このお話はフィクションです。
※このお話はしょーもないです。

仕事帰りの電車内。

途中までは満員だが、自宅の最寄駅に着く数駅前にはもうガラガラだ。

目の前にはミニスカートの、若く可愛いらしい(マスクをしているから、あくまで推定ではあるが)女性が座っている。

この場合、良識ある40代の男としての正解は「気にしない」ふりをして、「出来るだけ見ない」なのだろう。

が…、煩悩の塊であり、性欲の奴隷である私には、そんな理想論や綺麗事を受け付ける窓口が用意されていない。

かくして私は、『小説を読みながら、時々チラ見戦法』で戦いに挑んだのだ(星新一先生本当にごめんなさい)。

この戦いのミッションは、如何にターゲットに感知されずにデルタ地帯への着地に成功するか、である。どんな困難が訪れようとも、試練を乗り越え、その瞬間を捕らえなくてはならない。

しかしながら、相手も剥き出しの太腿の上に何も置こうともしないあたり、幾多の修羅場を潜り抜けた、百戦錬磨のプロフェッショナルと思われる。「私のノルマンディーに、簡単に上陸出来ると思うなよ」と言わんばかりの視線をこちらに向けているような、そんな空気感を醸し出している…ような気がした。

最寄駅までは残り三駅、時間にして5分程度だ。チャンスは限られている。私は神経を研ぎ澄まし、全集中、屑の呼吸で挑んだ。

一駅、二駅と通過して行く。もう、時間がない。

そして、その瞬間は訪れた。

足を組もうと、右の足を上げた刹那、捕えた!

目の前の映像が、スローモーションに切り替わる。

全集中、屑の呼吸、壱の型『熱烈視線!』

だがしかし…、私の視界に飛び込んで来たのは、私が心の底から待ち望んだそれでは無かった。ぐうの音も出ない程の、完封負けだった。

「ペチパン付きミニスカートだとぉ…」

電車を降りた帰り道、夜空を見上げながら、私はそう呟いた。

そして「くだらねぇ」と唾を吐き捨て、コンビニで発泡酒を買い、家路に就くのだった。

くだらねぇ…。 

おしまい

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誕生日祝って頂いた直後の記事がこんなので、本当すみません。星新一先生もエレカシにもごめんなさいm(_ _)m

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