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夢の跡 #毎週ショートショートnote「バンドを組む残像」

同窓会のその日、僕らは学校を訪れていた。

「本当なら、俺らここでバンド組むはずだったんだよな」
「ああ」
「ユキさえいたらなぁ」

軽音部の部室で、バンドを組むはずだったメンバーと共に、当時を思い返していた。

その頃僕らは、それぞれ違うバンドで活動していた。
「本気でプロ目指したいんだ。でも正直今のバンドじゃ難しいと思う。俺と一緒にバンド組んでもらえないか」
ギターの田渕が僕らとボーカルのユキに声をかけた。

目的は一致していた。そして、ボーカルはユキしか考えられなかった。粗削りだが、ハスキーなのに透明感のある特徴的な歌声は唯一無二、天性のもの。本人も加入に前向きだったのだが…

初めての練習を前に、父の転勤で北海道に引っ越すことになったと告げられた。

そして計画はそのまま頓挫。

「アイツやっぱすごいわ」
「一緒にやりたかったね」
数年後、ユキの歌声はプロの目にとまり、デビューを果たしたのだ。

この部室に来ると、あの幻のバンドの残像が、今でも目に浮かぶ。


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