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違法の健康 ♯毎週ショートショート

「総理を助けられるのは、もう彼以外におらんのではありませんか」
「しかし…、存在自体が違法だぞ。彼に手術をさせたことが表沙汰になれば、もし生き永らえても、棺桶に入るまで批判され続けるだろう」

とある国の話。内閣総理大臣が凶弾に倒れた。病院へ移動する車中、側近たちによる議論が続いていた。

「大衆は愚かだ。幾らでも知らぬ存ぜぬで押し通せる。支持率も影響力も、今の我が党に代わりはいないだろう」
「そうかも知れんな。メディアに圧力をかけておけば良かろう」
「違法だとしても、銃撃された総理が奇跡的に健康な姿を見せれば、政権も我が党も安泰だ」

結論は出たようだ。

「で、奴は幾ら払えと言っている」
「じゅ…10兆円です」
「バカな」
「『総理の命だろ。アンタらには安いものだろう』と」
「仕方ない。どうせ繰り越す予定の予算があるんだ。ねじ込めば良い」
「さぁ、あのモグリをすぐに呼べ」

側近の一人が電話をかけた。
「もしもし、ブラックジャックだが…」

☆こちらの企画に参加させて頂きました


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