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私の軸になる思い

理学療法士として働いて5年とちょっと。

対象となるのは高齢者、それも75歳以上の後期高齢者がほとんどです。
多くの方と関わってきて気づいたのは、「生活に楽しみがない、やりたいこともない」「生きている意味がない」と感じている方が少なくないこと。

それを、なんとかしたい。
「生きてるって最高!」とまではいかなくても、日々の中に楽しみや小さな幸せを感じて生きてもらいたい。

私がデイサービスを通してやりたいこと、心のいちばん真ん中にあるのは、そんな思いです。


・・・


大学4年生、病院での実習を終え、就職活動をしていた時。
当時はあくまでも入院中のイメージしか持つことができず、「入院中はストレスが溜まるだろうから、せめてリハビリの時間を楽しみにしてもらえたらいいな。介入の内容でもいいし、私と話すのを楽しいと思ってもらえるのでもいい」というふうに考えていました。

病院に就職してみて、楽しみを持てない高齢者は、入院だけが原因ではないことを知りました。
「昔は手芸をしてたけど、もう目が見えにくくて手もうまく動かなくて」とか「旅行が好きだったけど、一緒に行く人がいなくなっちゃった」とか「歳をとると何をするにも気力が湧かない」とか。
入院したから、怪我や病気をしたからじゃなくて、その前からそうだったんだ、と話される方も多かったのです。

そして今、在宅で関わっている方からも、同じような声を聞きます。
自分の足で歩けて、家事なんかもできて、運転はしないけどバスやタクシーを利用して外出もできる。そんなふうに自立して比較的元気に思える方が、苦笑まじりにぽろっと「もう死にたいよ」と言われたことがありました。いつもよく話してくれて、よく笑って、身体の痛みだって治ってきたところなのに。内心、驚きました。

辛い戦争を経験し、その後も激動の時代のなかで苦労をしながら何十年と生き抜いてこられた方たちに、心から敬意を感じているからこそ、思うこと。
人生のラストスパートになって、好きなことができないどころかささやかな楽しみもないなんて、そんなの寂しい。
余計なお世話かもしれないけど。


・・・


じゃあ、どんなデイサービスをつくろう?
楽しみや幸せを感じてもらうには何が必要?
建物のデザインは、空間の使い方は、全体の雰囲気は?
どうやって過ごす?一日の流れは?
スタッフの関わり方は?
多様な人が集まる場で、一人ひとりが居心地よくいられるには?

そんなことをそれぞれ考えて、それを持ち寄って意見を出し合って、また細部を詰めていく。
最近しているのはそんな作業です。
これまで関わってきた方たちの顔を思い浮かべながら。あの人ならこうしたらいいかも、でもこの人は苦痛に思うかも、とか。
私自身は通所施設での勤務経験はないけど、病院での経験や在宅の利用者さんの声をフル活用して、想像力を膨らませて。
なるべくわくわくするものを。
難しいけど、楽しいと感じながらできています。


ところで、トップの写真は、私が最近感じた「小さな幸せ」です。

利用者さんと散歩をしているときに見つけたさくらんぼ。
こぼれ落ちそうなほどたくさん生った実がつやつやみちみちしていて、単純に「綺麗だな」と思ったのと、なんだか命に溢れている感じがして元気が出ました。赤いし。

こういうささやかなことに目を留めて、心が動くというのは、幸せなことだな、と思います。
他人の幸せを願い余計なお世話をするからには、まずは自分自身、こういう感性を大切にしていきたい。いくつになっても、当たり前の日常のなかで心を動かしていきたい。

これからいろんな壁があるだろうけど、自分の軸になる思いを忘れず、妥協せず進んでいけるように。
忘れないように、ごまかせないように、ここに書いておきます。

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