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患者さんとの距離

 どうもこんにちは。


 よくいろんな人に「患者さんとの距離が大切だね」って言うことがありますが、みなさん、患者さんとの距離、適切ですかね?
この距離というのは物理的な距離もあるけど、心理的な距離もあります。
なんとなく、心を病んでいる人には「近くで話を聞いてあげたい」って思うじゃないですか。でも「相手の領域に侵害しない」というのが精神科看護の鉄則。
 統合失調症では自分の考えが他人に操られたり、勝手に外に伝わったり、誰かの思考が体に入ってくるような感覚になる症状があるため、患者さんにとって相手の距離がすごく重要になります。

 僕が一番困ったのは看護学生の時。実習で患者さんの情報を取るためにいろいろ聞いてたんだけど、たくさん聞けばたくさん答えてくれるからうれしかった。けど、これが患者さんの疲労に繋がり、体調を崩してしまったことがあったの。相手が心をひらいているように感じても、むやみやたらと聞いてしまってはだめだと学んだ瞬間でした。これ、実は精神看護の教科書にも書いてあることなんだけど、最初の接触は安全な距離を確かめながら、1回の接触時間を短い時間にして、何度か繰り返して接触することが望ましいってあるのね。本当にこれ。僕も学生の時はしっかり教科書読んでいればよかった(笑)

 「パーソナルスペース」って言葉があるじゃないですか。アメリカの文化人類学者エドワード=ホールによってつくられた概念で「他者から侵されたくない自分の空間があり、そこに踏み込まれると不快感を覚える」というもの。だいたい50cmとか、腕を伸ばした距離とか言われてますよね。統合失調書の患者さんはパーソナルスペースが広いので、普通の会話をしようと近づいても、結構警戒されることが多いです。

 色々話したけど、「じゃあ距離を置けばいいのか」ってわけじゃないのが難しいところ。近すぎると患者から頼られてばかりで過剰に期待される。それって患者さんの思う通りにいかないと「あいつに裏切られた!!」ってなるんですよ。そうなるともう大変。逆恨みされたり、「あいつは嘘つきだ」なんて言い広める。だけど、距離を置くと今度は患者さんのニーズがわからなく、なんならケアもできなくなる。
 そうならないために、患者=看護師間の「距離」が大切。近づきすぎるといいことが何もない。
 
 患者さんにとって、我々って一人の人間でしかない。僕たちが患者さんのためにできることなんて限られている。患者さんの人生を背負って生きているわけではないんだから。
 それぐらいの「距離感」がとても大切だと思います。

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このマガジンは2人の臨床経験をもとに投稿しています。臨床で困っていること、対応の仕方など脳と精神分野に強い2人が臨床に即した内容で書いています。臨床でお役に立てる内容だと思います。ただし、まだ記事が少ないです。

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