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関わり方に日々悩みながら働く。~「看護師失格?」を読んで

最近は「買ったはいいけど読んでない本」がとても増えてきました。自分ではおうち時間も増え、読書の時間もあるだろうと買っているわけですが、なぜか全く余裕のない時間を過ごしています。
そんな中、メディカ出版より「看護師失格?」という目を引く本が発売されました。今回はこの本を読んだ感想を書きたいと思います。

私の文章を読まれる方はほとんどが、医療従事者、特に看護師が多いと思います。看護師も色々な働き方はありますが、患者さんとの関わり方でものすごく悩んだって人は多いと思います。「悩んだ」ってことは、それ相応の葛藤があったわけで、ほとんどは自分の関わり方に後悔をすることばかりではないでしょうか。後悔しても反省しなければ何も始まりませんが、そんなこと理解していても、関わり方を振り返っては後悔する日々。特に夜勤などは、なぜだか家に帰ってすべて忘れるためにアルコールをたくさん飲んで寝たい!って気持ちになりますよね。本当、他の人誰とも関わりたくないって気持ちになる。

大抵の悩みって、こっちが言いすぎた、対応が雑だったっていう悩みだと思います。

医療現場を知らない人にとっては驚くことかもしれませんが、患者さんってみんな話を聞き理解してくれる人ばかりではありません。自ら危険な行為をする人はたくさんいます。もちろんこちらも安全な療養環境の提供のために説明は一生懸命します。しかし、理解されるのはほんのひと握り。
認知症の人にもしっかりと説明すれば理解されると思われますが、正直1人の患者さんにそこまで時間はかけられないです。だって他の患者さんをケアしないわけにはいかないですから。
看護師は偉いわけでもなんでもありません。しかし何度説明しても理解されないと、指導的な言い方になってしまいます。これは治療に必要な、一番安全で安楽を得られることを説明します。
本当理解されないって怖いんです。点滴も平気で抜いて血を流し続けても平然とされますし、体に入っているドレーン類も力任せに抜かれることもあります。
もちろんこの辺りはせん妄と区別は必要ですが、医療現場を知らないとちょっと恐ろしい光景があったりします。

患者さんにも理由はあります。当たり前ですが、好きでそんな危険なことはしません。指示に従わない理由もあります。でも、どうしても医療現場だと看護師の土俵になってしまうので、看護師が口頭で注意をする。するとその時の対応は良かったかと後悔し悩んでしまうのです。

どうしてそこまで悩むのか。それは同じ場面が2回は起きないからと僕は思います。

ベルトで流れてくる部品の組み付けなどでは、同じ部品を同じように組み付ければ良いわけで、明日も明後日も同じ場面がおとずれるかもしれません。ただ、患者さんと関わる看護師の仕事って同じような出来事は2度と起きないんです。だから関わり方に後悔すると、取り返すチャンスってなかったりします。また、謝罪の機会があって患者さんが納得されても、看護師は悩み続けてしまうことがあります。

こういうことで苦しんでいる看護師は多いのではないでしょうか。

少なくとも、私はそうです。

特に少ない人数でたくさんの患者さんを看る夜勤では、こちらも事故のないよう、安全に朝を迎えていただくために気を張り詰めて仕事をしています。看護師の数も限られているので、たくさんの判断をしなくてはいけません。だからこそ、患者さんの危険な行為を、それが認知症や精神疾患、せん妄によるものだと理解していても、こちらも感情を抑えきれなかったりします。

最近はコロナ禍で電話相談や受付をする看護師に対する誹謗中傷も多いと聞きます。「そんな人もいる」「コロナで心配なのだから看護師が毅然とした対応をすれば問題ない」と思う人もいるかもしれませんが、じゃあ看護師は心を痛めたままでいいのか。言い返すこともできずに心を弱らすだけでいいのか。いつもそんな風に思っています。
疾患のせいだから、元々の性格だからと言って終わる事でもないような気がします。

どうしても自分の価値判断で物事を捉えてしまいますが、自分の判断も間違っていることも多々あります。

「看護師失格?」の中には、いろんなストーリーが書かれています。経験年数が多くても悩むことはあるんだと思うと、気持ちが楽になるストーリーもありました。

真面目に頑張っている人、感情を押し殺さないと看護師ってできないんだって間違って思ってしまっている人、夜勤が体力的より精神的に辛いと思っている人などにぜひ読んでいただきたいと思いました。

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