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フランス庶民のバレエ環境


3回目の発表会準備トライアル、実現することを祈りつつ毎日スペクタクルついて考える日々です。

教え初めて12年のまだまだこれからです。

2019年から今の公民館のスタジオで働く雇用者です。計50人にも満たない小さな教室です。

ところが

−コロナで丸2年発表会の練習をしては中止が続く              −学業優先                                −ワクチンを打たない生徒(責めていません)

などなどの理由で1/3減りました。どの教室も全く同じです。中には半分になったところや、閉校もたくさん出ました。

コロナでやめてしまうくらいなら継続は難しいとも思います。

国が違うので比較するのは意味はありませんが、バレエを習うということについて、日本とフランスでは根本的にその姿勢が違うのです。


フランスの子供たちがバレエを習うということ


体操や水泳などと同じ一般的な習い事の一つの中に含まれるくらい、一般的な習い事です。習慣的にする運動や、遊び、学びです。放課後は学童に残るより習い事させる、というようなものです。

バレエ、音楽、芝居などはたまに課外授業で劇場に行ってなま鑑賞することもあります。 小学生でも劇場に足を運べるのです。日本ほど親の意識はいりません。

いろいろな理由で習わせるわけですが、日本でも特に小さな子供は親がやらせたいから連れてきている場合が多々あります。

本人が好きだから、と同じ大きな理由は、子供をピシッとさせることです。バレエの細々とした注意に気をつけることで、集中力と、きびしさに耐えることを身につけさせる教育のためです。(我慢学び)

柔道、空手、などもこのタイプの習い事、なぜか日本のものばかり!


しかし、ゆるゆる一般フランス人


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足が床にきちんと張れてないね!

まあでもそのわりにはゆる〜い態勢です。

フランスの子供たちは”練習する”ことにあまり慣れていません。(日本も4、5歳は普通かも でも子供って同じこと言われて少しずつ出来ていくのと同じような気もする)

⚫︎やってみて出来たらラッキー、もうできるから違う動きをしたい!つまり一回やって「そう、それね!」と言われると、自分はすでに出来ていると思い、出来たからもうやらなくて良い!となる

⚫︎その時にできなかった子は出来ないから面白くなくなる=やらなくなる

⚫︎「全然構わないよ、うまく出来なくて当たり前なんだよ、少しずつ練習していこうね」は嫌、いま達成したい(人間すぐに結果を出したがる性質)

褒めるとやらないんです!(皆んなではないけど)なぜ何回も練習したほうがいいのかを説明しても、やらない子がかなりいます。要は好きではないのです。

もちろん楽しむことが優先です。楽しむということは遊んで楽しむことではなく、何度もやって出来たときの喜びや、友達と見あったりすることが楽しいと思っていた私には、今でも課題の一つです。

随分視点を変えて見えるようになってきたのでユルくてもいいのです。しかしそれだと先に書いたような理性(我慢)を育てるのには難しくなってきます。(なるべくサラッと一つのことを長くやらないで、変えながら少しだけ堪えさせる)

まあしかし技術の上達する速度も遅いです。問題は体が大きくなる速度はそれに反比例するほど早いということです。


ある日の仰天した出来事                          

− むかし自分が履いていた、と嬉しそうに子供に履かせている親が何人かいた! (昔のバレエシューズは厚めの皮で、底も全く足の裏についてこない)     − セール中で試着させるので休ませる!   


日本の子供たちと比べて、なぜフランス人の子供たちの真剣さが少ないのか、国民性以外の自分なりに考えた裏付けは、コンセルバトワールの存在です。最近ではこのコンセルバトワールでもなかなか大変だと先生たちも嘆いていますが…。

*コンセルバトワール:フランス共和国における音楽、舞踊、演劇、工芸技術などの文化的価値を保持し教育する文化保全機関

                              ウィキペディア


真剣に習いたい人たちの制度もあるから

いっぽう真剣な人たちはどうでしょうか。

特別時間割授業

本格的にやりたい人は高等専門学校とは違い特殊時間割授業制 (Class à horaires aménagés) のある学校に通うことになります。

小学生のうちから普通に学校へ通いながら、週に3、4回またはもっと専門的にやれる制度です。一般的には音楽、語学教育など市によって違います。

このシステムはフランス全土にあるシステムで、小学校2年生の時に自分がどれを主にやりたいかを選択して登録希望を出すのです。


ところが市によってどれが選択できるか違うので、どの中学校も寄宿舎が存在し、遠方の場合は、寄宿します。小学生は親が遠方でも送迎するか、親戚の家に預けたりしながら通います。

この選択の種類は以下のような時です。

− 自分の主に勉強したい語学の授業時間が多い学校(インターナショナルクラスのある学校 英語以外もある)が遠い場合(同じ県内)             − 自分のやりたいスポーツをもう少し真剣に学べる場所の近くの学区外の学校に行く場合                                  − 問題児(!)でその子の学区内の学校にどうにもおいておけない子供

などです。つまり自分が何を重点的にやりたいかで学区外の学校に願書を出すことができます。勿論選ばない場合は自分の区域の公立、または私立の学校に行きます。

ほとんどの寄宿舎は週末は閉まってしまうので、実家に帰らなければなりません。

*パリ・オペラ座バレエ学校は8歳からなので小学生から寄宿舎に入れます。  また、フランスの大学入学資格、バカロレア取得のための勉強もオペラ座学校内 (メゾン(maison)で学びながら、バレエを続けていきます。


             

学校教育課程と習い事との関係

小、中、高等教育

小学校は5年制です。基本的に8時30分から午後4時半まで授業があります。現在、保育園と小学校は水曜日がお休みで、中学は午前中だけ授業があります。中学は4年制です。中学1年生は日本での6年生くらいに匹敵します。中学は朝8時からで中3になるとほぼ毎日午後5時半になります。水曜は午前中だけです。


高等教育とプレパも重要な教育課程。

高校は日本と同じ3年制。ここで大学入試資格バカロレアを取得するための勉強をします。日本の共通一次試験の合格ラインに達することができるように学ぶ場所という感じでしょうか。

*高校まで何か習い事を続けられている子供の大半が学校でも優秀な生徒が多いです。

プレパは通常、その街の公立高校(教科によって各1校だけ)の一部の付属機関で高等教育課程です。ただし18歳からの入学で大学1、2年に相当します。
ここで徹底的に勉強し、グランゼコール(grande écoleエリート育成機関)入学試験のための準備をします。厳しい書類審査があります。

*パリ、マルセイユ、リオンの第三都市や、他の少し大きめな都市リールなどは一つだけではなくいくつかの高校に付属されている

プレパに行く生徒たちは本格的に勉強するため習い事、運動をする機会も非常に少なくなってしまいます。


習い事が続かない、ユルいわけ

長くなりましたが、なんとなく真剣みが足りない裏付け。 

⚫︎バレエの存在の違い                           ⚫︎いずれ学業に専念する場合(この理由は日本でもあるけど、皆辞めるまでは真剣!)                                  ⚫︎車移動が多く日本人より歩かないので、すぐに足が疲れる(これ急に出てきてすみません)                                ⚫︎学校の終わる時間が比較的遅いうえ、それなりに宿題も出るので子供が疲れてしまう(疲れやすいんよね)


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                 目の保養に!

たくさんのバカンスがあるのはそのためだと今では思えるようになりました。初めは休みばっか!なまっちょろい!と思っていましたが、フランスは大人も子供も忙しいのです。

基本的に大人と子供の生活をきっちり分ける習慣のあるフランスでは大人が子供に合わせるのではなく、子供が大人に合わせる大人社会です。(大人に合わせたバカンスリズムなどで子供が疲れる)

日本で昭和どっぷり時代、幼い頃から自分の好きなことに没頭させてもらいながら育った私は幸せですが、フランスの大人社会を理解するのに随分と時間がかかりました。

昨今では嫌い、苦手なことを続けるのはナンセンスの時代ですが、フランスでは大体週1回の習い事だとして、バカンス、休日を抜かして数えた場合、毎回出席しても35回から38回くらいです。


いまだにもう1年だけやってみたら?と思うのは私だけでしょうか…。何故なら40年ちょいやってきて未だに気づきがあるからです。これからもきっとあると思います。



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