優秀な人ほど先に辞めていく~退職の負の連鎖を断ち切れ~

退職者が発生する。それそのものはありふれた光景かも知れません。

退職者の穴埋めができずに組織に歪みが発生する。これももはやお馴染みの光景です。

その歪みを放置していれば、組織は崩壊します。

最初は単なる「退職者の発生」という事象から、気づけば引き返すことができないところまで・・・

何もこれは他人事ではありません。前回の記事でも紹介しましたが、2019年は人手不足による倒産が過去最多を記録しました。

今後の労働力人口の低下(人口減少)を踏まえれば今後も倒産理由の大きなファクターとして『人手不足』が挙げられる可能性は高くなっています。

せっかく収益が上がっている。成長性も見込める。そんな事業や企業が、働き手や担い手がいないために撤退せざるを得ない。

後継者がいないために黒字倒産を余儀なくされた企業もあります。

いずれにせよ、人材が持つ価値は今後上昇していくでしょう。これはAIやRPAなどの技術的進歩が解決してくれる問題ではありません。人の問題は人が解決していくしかないのです。

今回は、退職がいかに負の連鎖として機能していくかを見ていきます。

エース社員退職の衝撃

あなたが経営者だとすれば、「なかなか成果が上がらない社員」と「エース級の活躍をしている社員」のどちらに辞められたら困るでしょうか?

大多数の人は後者だと思うでしょう。

すでに実績抜群。将来の幹部候補。普通に、活躍している社員が辞める方が痛手でしょう。

しかし現実というのは残酷で、エース社員から辞めていくものです。

仮に、平均的な社員の2倍以上の実績を上げている社員が退職したとします。単純に考えてその人の穴を埋めるには、2人以上の新規採用をしなければいけません。2人以上の人を雇ってようやくエース社員の穴が埋まるだけです。

エース社員に将来期待していた業務や構想などは水泡に帰す訳ですから、組織としてのビジョンも修正していかなければならなくなります。

実績が出ている社員が退職することはそれくらいインパクトのあることです。

もちろんこれはエース社員が辞めたあと、すぐに平均的な結果が出せる社員が2人も採用できたという仮定の話です。

現実はなかなかそう上手く事は運びません。

退職後にそう上手く採用が出来る保証はありませんし、採用後すぐに平均的な実績を上げられるかはもっと保証がありません。

結局、新規に採用した2人が育つまでは既存の社員たちにしわ寄せがいくのが普通です。

そうなると、第二第三の退職者が・・・というのが負の連鎖の入り口となります。

なぜ優秀な人から辞めていくのか

きっかけは「退職」というよくあることです。エース社員が退職となるとインパクトは大きくなりますが、誰が辞めても本来はしわ寄せが発生するものです。

しかし、現実は優秀な人ほど辞めていきます。理由は色々あるかと思います。いくつか考えてみましょう。

①優秀な人は転職しやすい

できる人ほど引く手数多です。すでに実績も積んでいれば「この会社以外でも頑張れる」という本人なりの自信にもつながります。

そうなると、より魅力的な仕事内容やより条件のいい会社へと気持ちが向くのも自然な流れ。さらに、転職市場においてもウケがいいため比較的労せず転職が決まり退職に至ってしまうというの代表例でしょう。

②優秀な人ほど「見切り」がうまい

会社の業績が悪くなったときほど優秀層は退職していきます。

彼らは会社の「その後」を予想できてしまうため、嫌な言い方をすれば会社を「見切って」しまいます。ちなみに、企業規模が大きな会社が倒産ともなればかなりの後処理が必要になってきます。そういった「面倒ごと」を避ける危機回避能力の優秀層は持っています。

また、業界全体の動向や社会の流れなどを踏まえてさっと「見切る」ケースも。誰だって沈みかけた船は嫌でしょうが、船が沈む兆候を捉えるのが上手な人も一定以上います。

代表的な理由はこういったところでしょうが、昨今はフリーランスや独立起業に対してのハードルが下がったことも相まって「自力で稼いでしまえ!」という人たちも増えています。

様々な要因が重なっているかとは思いますが、優秀な人ほど早く辞めていくのは世の常みたいなものです。

人が辞めない組織づくりを前提に

繰り返しになりますが、退職者が発生すればその分組織に歪みが発生します。とりわけ、エース社員が辞めると困ってしまうのは組織側です。

しかし、「退職」というのは本人の権利です。辞めたい人を辞めさせないという方が問題になってしまいます。(職業選択の自由は憲法が保障していますから)

したがって、「辞めたい」と申し出があってから慌てて対策を立てるようではかなりの後手を引いているということになります。

極端に言えば、退職したくないと思わせるくらいの方策を日ごろからどれくらい取っているか。これが今後の人事管理に重要な考え方になってきます。

そのための考え方や方策は沢山ありますが、大きく脱線しますのでいずれ別の機会でご紹介していきます。

とにかく、退職抑制の一番のポイントは「どれだけ社員目線になれるか」以外にありません。

退職の連鎖が発生しないようにするにも、最初の退職者をどれだけ本気で防いでいたかというのがポイントになってきます。(もちろん世の中には「やむを得ない退職」というのもあります)

『1人くらい辞めてもしょうがない』とか『あいつは辞めたって困らない』ではありません。

働き甲斐のある職場を作っていくことにどれだけ本気になれるかというのが重要だということをしっかり理解しておきましょう!

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