「カミングアウト」について

前回の記事で「自分はずっとストレートだと思っていた」「ある時自分はゲイだということにした」と書いた。

自分をゲイと規定した時、色々なことが腑に落ちたと同時に、なぜだかちょっと焦ってしまったことがある。
「カミングアウト」というやつだ。

当時、よく一緒に遊ぶ女友達がいた。
学生の時から一緒で、社会人になってもたびたび一緒に飲みに行ったり出かけたりしていた。

その日も、その友達と飲みに行くことになっていたのだけど、なぜか突然「そうだカミングアウトしなきゃ」と思った。

「僕はゲイなのに、友達だと思ってその子とよく遊びに出かけちゃって、万が一にも好きになられても困る!」と考えたのだ。
今にして思えば何て傲慢でバカバカしいんだろう、と思う。

僕は彼女とは、二人だけで飲みにも出かけたし、彼女の終電がなくなってうちに泊めたことさえある。
僕としては、もちろん大切な友人の一人だし、今後も末永くお付き合いしたい友人だと思っていた。
しかし、「男女の友情は成立しえない」論に立脚すると、こうした関係はどちらかの気持ちに必ず無理が生じているものらしい。この場合、無理しているのは彼女の方に違いない、と考えたのだ。ほんと恥ずかしい…。

彼女の名誉のために書いておくと、僕は今まで彼女からそれらしいアプローチは一切受けたことはなく、彼女からするとおそらく「数ある女友達の一人」という印象だったに違いないのだ。

さてその日、飲みながら、ドッキドキしながら「あのさ、実は僕、ゲイなんだよね」と言ってみた。
彼女の反応はあっけなかった。

「え、知ってたけど?」

驚いたのはこっちだった。
つい先日ゲイであることを「決めた」僕がゲイであることを、彼女はずっと前から「知っていた」というのだ。

僕は別に、女言葉を使ういわゆる「オネェ」ではないし、日常生活の中でそんなに「ゲイ感」は出てないはず。せいぜい「ちょっと物腰柔らかな男性」というつもりでいるけど、やっぱり出てたのかなぁ…。

彼女が何をもって僕を「ゲイだ」と思ったのか、本当のところはわからない。
しかし彼女によれば、彼女の友人の女の子たちも「黒木君はゲイじゃないの?」と聞いてきていたという。
何ということだ!バレバレじゃないか!!
歩くカミングアウトじゃないか!

彼女を皮切りに、複数の友人に試しにカミングアウトしてみたところ、全員が同じ反応だった。
「やっぱりね」「そうだと思ってた」「いつ言ってくれるのかと思ってた」
おかげさまで、今では僕のカミングアウトのハードルはものすごく低い。
もはや言わなくても分かるんでしょ、ぐらいの気持ち。
初対面の人でも、必要があればサラっといえるぐらいのハードルの低さ。
ありがとう友人たち。

思春期に何の葛藤もなかった僕は、今でもゲイとしてはほとんど何のストレスもない生活を送っている。
カミングアウトするかしないか、したら嫌われるんじゃないか、といった葛藤とは、これまた無縁の生活だ。
ありがたいことに、周りにホモフォビアな人は1人もいないし、職場ではそもそもカミングアウトする必要性がないしね。

まあ、親には何も言ってないけど。こればっかりは難しいし、それこそ察してくれと思っている。結婚を全く急かされないところを見ると、察しているのかもしれないが。

ちなみに、カミングアウト第一号の友人は今度結婚式をすることになり、僕は花嫁友人代表として結婚式での聖書朗読を頼まれている。
なんと名誉なことだろう。おめでとう友人!

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