非存在

 誰にも見つけられぬままに、開かぬ翼の根元ついばんで、落ちてくる影に目を細め、鳴き。

 狐という字面の観念から、わたしは孤を知る。

 ただ一切の目玉に映らぬまま、折れた羽を舞い落とし。

 影法師にもなれず、陰影の爪は引っかからずに。

 顔を伏せて緑をほふり、土にくちばしを立てて、虚構性の冷たさに浸し。

 わたしはわたしの非存在をのどに詰めて。

 向こうで這い回っている、日で濡れて腐敗した朽葉を望む。

                               (了)

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