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そして0になる?


精神病棟にて知り合ったある女性が膨らんだお腹に名前をつける「これがあたしの子供だよ」
その笑い方には本心からではないことが伝わる。過食した後に膨らんだお腹のことを指しているのだ。
病室の中でのその光景は異様でしかなく、私もその存在しない赤子に本心ではない笑いをかけるしかなかった。

摂食障害

私が知り合った彼女は摂食障害のことを"姫"と話していた。
姫というワードはここで大事になって来る。彼女たちの聖書になる本は『痩せ姫 生きづらさの果てに』という本である。
「痩せ姫になりたい。卒業までに死にたいんだよ。」と口にする彼女の姿は、かつて何歳までに死にたいという面を持っていた自分を重ねて聞いてしまう。「学割が使えなくなるのは嫌だー。」

この本の特徴は体の摂食障害を治すということを原点に置くのではなく、心から摂食障害を治す/治さなくてもいいというアプローチをしているところである。

”同じ症状を持つもの同士で繋がってしまう”というのもまた、症状の一つであった。彼女たちはSNSを通じて繋がり、症状を羅列する。言葉、画像、雰囲気、アカウントから感じる匂いを嗅ぎ別けて接続する。

彼女が教えてくれた症状のにある恐ろしかったのは太ももが手で輪っかを作った時にそれが通ってしまうほどの細さだったのだった。その状態で長く生きれるわけがない。と脊髄で言葉が出てしまう。
体重が20キロの細さになった女性が足を見せる姿はまるでCGのように見えるが、その画質、アカウントからしてそれはスパムでもなく、紛れもなく実在する人間なのだ。

私は彼女たちがどうなっていくのかを知りたい。
過食し、嘔吐するその姿は人間ではない"何か"になっている。

人間が病によって人間ではない何かになっている様子、それを私は"化け物”と表現するのだが、それはどうなのだろう。

かつてDr 林のこころと脳の相談室の質問にあったように「薬を飲んでいない自分が本当の自分なのか、薬を飲んだ自分が本当の自分なのか」という問いは続く。


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