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翠煙の中に立ち篭める煙のような


カチリ。

置時計の秒針の音で幽遠な想像から今に戻ってきた。


なにを考えていたんだっけ―


戻ってきた意識を身体に貼り付けながら、吸いさしの煙草に火をつける。
だらりと落ちた思考の束を蒼惶として拾い集めようとする。

手が宙を切った。

そんなこと分かっていた。


痛い。


キリキリと痛む胸中に己の〝生〟を嫌でも実感せざるを得ない。



痛んだままの傷付いた片腕と海松色の声は、それごと誰かの泣き声を包み、眠りにつく。

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