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デザインチームをデザインする

武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコースクリエイティブリーダーシップ特論 第6回田川欣哉さん

5月22日、株式会社Takramの回田川欣哉氏の講義を受講した。今回の講義は、Takramの仕事の鮮やかさもさることながら、「チーム/組織とデザイン」という観点からも、とても実践的な示唆に富んでいた。
「デザイン力が強いチームをどう作るか」、言い換えると「“デザインチーム(組織)“のデザイン」ということについて、個人的に大きく3つの切り口で考えることができた。

まず1つ目は、組織にCXOを作るということ。組織にデザイン思考を浸透させるためには、一番手っ取り早く、効果が高い方法だと考えられる。その反面、実行できる人は限られている。特に、大企業の場合、それなりに影響力のあるポジションにいないと、自分の会社の組織を変えていくことは難しい。
ただ、会社にCXOを置くというハードルは高いが、「デザインに関して責任を持つ人を置く」という発想を持つ、という考え方は、応用が利くように思った。プロジェクトチーム内に“デザイン責任者”を置くだけで、チームマネジメントのあり方やチーム内のデザインに対する意識は変わってくるのではないだろうか。

2つ目は、社員のデザイン力の底上げについての示唆だ。「エンジニアのデザイン力の向上が、企業の競争力向上のカギになる」という主張を、デザインエンジニアリングを強みとするTakramから改めて聞くと、とても説得力がある。この2つ目に付随して、出来る仕事:苦手な仕事=50:50の「脱コンフォート」の話は、人材育成の観点からもとても参考になる。

最後に「多様性によるイノベーション」について、である。これは一見説得力があるが、実は日本の大企業では難しいテーマだと思っている。異なる背景を持つ人同士でチームを組む場合、まず、コミュニケーションのズレが生じる。良くも悪くも同調が得意な日本人は、ズレをズレとして認識し、受け入れることに慣れていない。そのためコミュニケーションのズレの解決策として、分業でプロジェクトを進めることが多くなる。分業は、摩擦を起こさずリソースを有効活用しているという点では良いが、イノベーションを起こすほどの相乗効果は発揮されない。
平均的なコミュニケーション能力・異文化理解力を持つ人々が集まった集団において、相乗効果を起こすために必要なのは、優れた「ファシリテーター」である。ここで言うファシリテーターとは、プロジェクト全体のリード・マネジメントができる人のことだ。単にミーティングや単発のワークショップの司会ではない。ただし、役割は同じで、プロジェクト全体において、異なる背景や思考方法を持つ人同士が、安心して主張し合える環境を整えることが求められる。

組織で「デザイン」による新しい取り組みをする場合、何をするか、よりも「チーム」をとうデザインするか、組織内でどう変革を受け入れられるようにするか、そちらの方が先決だという気がしている。そういう意味でも、Takramの仕事のスタイルや組織運営のやり方は、とても興味深かった。

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