人材開発ビジュアル

人事や人材開発は編集者みたいなもの

今年の1月から、企業で社員の人事や人材育成に関する業務、いわゆるHCM・HRM領域の仕事をすることになった。

担当して3か月だが、人材に関するマネジメントの仕事は「本質的には、書籍の編集者と同じことをしているのではないか」と思う。この「同じこと」を一言で表現しようとすると、「ホスピタリティ」だと思うが、これだと抽象度が高くなり、どんな仕事にも当てはまってきそうだ。もう少し具体的に、書籍編集とHCM・HRMの共通項をいくつか列挙したい。
※ちなみに、以下で言うタレントとは、一人ひとりの社員のことである。「社員(作家)をタレントとして捉えよう」という意図で使っている。

1.タレント(の能力)を、発掘する
2.タレント(の能力)を、正しく発揮させる
3.タレントを立てる
4.タレントの能力を伸ばす

社員の勤続全数がある程度長い企業などは、
5.タレントのキャリアをコントロールする
ということも、重要な要素として入るかも知れない。

他にもあるが、ひとまずこの5点で、多くの業務領域はカバーできるだろう。
1.「タレント(の能力)を、発掘する」の象徴的な業務は採用業務だ。
2.「タレント(の能力)を、正しく発揮させる」の顕著な仕事は配置・配属だろう。
4.「タレントの能力を伸ばす」は研修やOJTなどの人材育成、
5.「タレントのキャリアをコントロールする」がミッションとしてあるならば、やることは人事と人材育成の両方だろう。
翻って、3.「タレントを立てる」は、「こういう仕事!」とシンボリックな仕事をあげにくく、外からはイメージしにくい。しかし、実はこの「タレントを立てる」ことこそ、人材マネジメントの本質ではないかと思うようになった。

少し話をずらして、典型的な「わがままな作家」をイメージしてみる。

・締切を守らない
・期限を損ねると書かない
・気分しだいで筆の進み具合が変わる
などが特徴として想起されるのではないか。

編集者としては、こうした作家が気持ちよく仕事できる(そして、締切通りに期待しているものを仕上げてくれる)よう腐心しなくてはいけない。場合によっては、好きなものを差し入れしたり、接待したりもする。

編集者にとって、作家はクライアントではない。クライアントはお金を払って本を買ってくれる一般市民だ。にも関わらず、細やかに気を遣い、時にわがままも我慢するのは、作家の作品が利益を生み出してくれるからに他ならない。

比喩の説明が長くなったが、企業のHCM・HRMも、程度の差はあれ本質的には同じと思っている。人材を「企業が抱えるタレント」ととらえ、彼ら・彼女らが、最大限のパフォーマンスを発揮するために、自分は黒子に徹し、環境を整え、モチベーションを高めてあげるよう気を遣い、時にはわがままや理不尽にも目をつむる。良く言うとホスピタリティである。

やや極端に聞こえるかも知れないが、こうしたことを厭わない姿勢・心構えがないと、人材のマネジメントはうまくいかない。マネジメントする側がホスピタリティを発揮しないと、タレントの士気は上がらない。不満もたまる。
現場で大きな成果を残した人が、必ずしもマネジメントが上手にできない場合、能力面より心構えの側面が大きいように思われる。

同じ会社の社員が、たまたま、現場とマネジメントに分かれただけで、社会的にみたら両者の立場は対等だ。しかし、会社の構造的には、現場とマネジメントの関係は、作家と編集者なのである。

#人事 #人材育成 #HCM  #HRM  #編集者


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