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しなないどく

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2017年6月の記事一覧

ashamed

西洋人が神に対して抱く「罪」の意識に対して、日本人にあるのは「恥」の意識、ハラキリの時代から周囲の目に対する恥ずかしさでもって自身を律してきた、のだろう。

「恥」にもとづいた自律・自省の判断は、学力偏差値と同じように、他人の足を引っ張ることで基準を下げ相対的に自分を持ち上げることが可能だ。それはたとえば、「男が浮気をするのは仕方ない。本能には逆らえない」的な、馬鹿馬鹿しい常識が横行しているように

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無題

きっと、どうせその本を開くことなく終わると経験的に分かっていても、出張先や、本命でない授業の教室に、読みさしの難しい勉強の本を持っていくのが人間の性であり、結局『重り』にしかなりませんよね、と僕が言うより早く、先輩は「もう、『お守り』だと思うことにしている」と言ってみせた。

つい最近まで、先輩のお守りはとても分厚く、階段の上り下りを一層苦労させる代物だったが、ようやく薄手のお守りに変わったそうだ

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バカばっかり

多くを知ってからでは一方的な批判が簡単にできなくなってしまうだろうから、無知な間に、絶対許せない物事は不完全な論理であっても怒っておくべきって気がする

怒っても意味のない相手に怒るのはマイナス、正論だと思うのだが、それでも怒るかどうかだよな

ごく最近の、自分の内から出た言葉と、外から刺さった言葉、これらを鑑みるに、僕は曽我部恵一の『バカばっかり』という歌のミュージックビデオをよく見直すのだ

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離陸(1)

舞台での彼女は実に表情豊かで、もっと出番が多ければと思った。誰にも冷やかされることなく、公然と見とれていられるのが嬉しかった。

絲山秋子さんの『離陸』を、たしか佐々木敦さんが書評を書いていて、作品の誕生にどうやら伊坂幸太郎も一枚噛んでいるとかで興味をもち、単行本の表紙につかわれた青の抽象画も印象的で、とにかく面白さのあまり驚きながら読み終えたのが、もう2年ほど前になる。

基本的に図書館で借りて

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鉛筆でなくインクでもないけど

鉛筆を削って、紙に書く。何もできなくてもとにかく書く。書いて考えて、考えて書いてこれが何になるのかと一瞬嫌になってバカみたいだなと思って書く。誰かに期待されたいと思い書く。誰にも期待されなくてもいいやと思い書く。鉛筆で、左の手の側面が真っ黒になった時の心地よさ。その匂いを嗅ぐために書く。目的なんてなくっても書く。パンチラインが欲しいと書く。時々、人の歌詞や文章を模写して書く。そういう時はインクで書

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ノーホエア

自分がよく嘯く台詞のなかでも、歴史の古いものに「故郷はドトール」というやつがある。今この機会に告白するが、出まかせだ。しかしドトールに対する感情の一側面を写してる部分もあって、あながち出まかせと切り捨てられない。

まず故郷と聞いたとき、ぴったり思い当たる土地を僕は持っていない。土地に根付くようなアイデンティティの芽生えた事が無い。一番それに近いのは、いわき市だが、それはひとえに知人が多く暮ら

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