離陸(1)

舞台での彼女は実に表情豊かで、もっと出番が多ければと思った。誰にも冷やかされることなく、公然と見とれていられるのが嬉しかった。

絲山秋子さんの『離陸』を、たしか佐々木敦さんが書評を書いていて、作品の誕生にどうやら伊坂幸太郎も一枚噛んでいるとかで興味をもち、単行本の表紙につかわれた青の抽象画も印象的で、とにかく面白さのあまり驚きながら読み終えたのが、もう2年ほど前になる。

基本的に図書館で借りて読むスタンスを止めたのはつい最近の事だ。それ以前に出会った読後感のよい作品は、改めて買って手元に置くようにしている。そうして『離陸』もまた、じわりじわりと読み直し始めたところだ(図書館のものだと原則2週間がタイムリミットだから急いで読む)。主人公が土木系の職業だったり、冒頭に引用したミステリアスな「女優」が登場したり、パーソナルな事情で共感を覚える部分も多い。

それにしても、自分が演劇という文化にのめり込むとは全く想像しなかった。

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