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自閉症スペクトラム戦記

自閉症スペクトラム戦記

 

                       ナカナカ/ナクナク

 わたしは自閉症スペクトラムです。

 生活に不自由があります。

 障害者二級の手帳を持っています。仕事はしており、年金はもらっていません。仕事は塾の講師と、コンビニのアルバイトをしています。以前は、プログラマーをしていて、正社員でしたが、いろいろ事情があってやめました。

 今は、早朝三時間、

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マルチ商法、危機一髪

 あわや、マルチに取り込まれそうになっていました。ネットワークビジネスの片鱗を見ました。お金持ってないからどうにもならないけど帰れなかったらと思ったら怖かったです。実際、帰れないかと思いました。

 人間関係をお金に換えるために、人間関係を作り、さみしい人間を救い取ろうとする、さみしい人間に仲間とお金を与えるという口実で、搾取するという構造はぞっとしました。

 ネットワークビジネスの底辺にいる人

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ある自閉症スペクトラムの人の話

精神障害者手帳とわたしの話

 わたしは精神障害者手帳二級を取得しました。これは、友だちにも配るミニコミなので、その人たちに対してもカミングアウトすることです。

 カミングアウトはしてもいいししなくてもいいと思います。カミングアウトするのは、文学フリマに参加して書きたい話が自分のことで、一番最近大きな出来事だったのが、「わたしは精神的に困っている人なんだ」という発見を体験したことだったのでそれを

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ブルー・ビーナス・ブルー

 ガソリンスタンドがあった。原付のハンドルを右に傾けて、そのまま車線を横切った。

 店員が「シャース」と声をかける。シャースって、なんだろう。よくわからない。いつも思うけれど、不思議だ。わたし自身も中学生のときは、部活終わりに、「アーッタ」と言っていた。「ありがとうございました」の略だったと思う。いつ発生するのかわからないが、集団には独特の挨拶が伝播する。

 灰色のコンクリートには油のシミや、

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「頭蓋骨を割られたんだよ、それでも」と彼女は

「頭蓋骨を割られたんだよ、それでも」

と彼女は言い、息を吐いて、言葉を区切った。

 わたしの名前は新しい。ここでは新しい名前で呼ばれる。みんな、お互いの古い名前を知らない。わたしはただ耳になっている。わたしは食事をしようとしているが、手はぶるぶると震えていて、箸をうまく握れない。

「それでも、わたしは逃げなかったんだよ、だけどね」

と彼女はまた言葉を続けた。

 テレビで朝のニュースが流れ

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満ち足りたわたしの空洞

        

 

 わたしには空洞がある。わたしの中は空っぽだ。空っぽの中に感情が ふわふわと飛び交っている。怒りはとげの形をして内部を引っ掻くし、 悲しみは内部をかびさせる。外界が、影響して、わたしの中身は振動する。空洞があるから、大きな音が鳴る。音に怯えて、平静を保てないことが良くある。

 わたしの空洞の名前は、「自閉症スペクトラム」だ。わたしの空洞の中には、もっと良いものも含まれて

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