デジタルマーケットプレイス実現への第一歩
DXには調達改革を
私たちアジャイルガバナンスチームは、2021年1月に開催したデジタルガバナンスラボでの議論からDXを推進するには調達改革が必要であることを強く認識し、そのための下地作りをデジタル庁や調達に関わる多様なメンバーと共に進めてきました。
2022年6月に閣議決定されたデジタル重点計画では「情報システムに関する政府調達について(中略)2022 年度に検討を行い、必要に応じ法制度を含め順次整備を進める」という前向きな姿勢が盛り込まれました。さらにIT公共調達においてもウォーターフォール型からアジャイル型の手法への対応が注目されるようになり、行政機関が柔軟に入札しやすい調達の仕組みとして実績のあるデジタルマーケットプレイス(以下、DMP)を官民の枠を超えた有志で学び、オープンに議論する機会を重ねてきました。
デジタルマーケットプレイスの概要や各国の先行事例はこちらの記事をご参照ください。
DMPの概要や、各国の先行事例は、世界経済フォーラムにおいてもブリーフィングペーパーとして公開しています。
DMPオープン・タスクフォース
2022年の6月にはデジタル庁で情報システム調達改革検討会が発足し、柔軟で適切な調達プロセスの実現や多種多様な事業者の市場参加、プロセスでの公平性・透明性の確保などに向けた調達改革への検討が進められるようになりました。
限られた時間内で多様なアジェンダをカバーする同検討会をサポートするために、調達対象や登録項目、運用体制などを整理し、実装に必要な検討事項を議論するアドホックな枠組みとして設置されたのがDMPオープン・タスクフォースです。DMP実装で必要となる論点をさまざまなステークホルダーで議論し、導入までのロードマップを策定することを目標に掲げ、メンバーにはモデレーターとして参加したデジタル庁のほか、中央および地方の行政機関、大手ベンダー、スタートアップ、シビックテック、弁護士、メディアなどが参加しました。開催形式をハイブリットとして幅広いオブザーバー参加を促し、開かれたオープンな議論の場を確保しています。議論を進める上での補助ツールにはオンラインホワイトボードのMiroを活用し、オンライン・オフライン問わずに自由闊達な意見交換が可能となるような工夫を凝らしました。
第1回DMPオープン・タスクフォース
第1回DMPオープン・タスクフォースは2022年8月27日に開催され、公共調達の課題説明と質疑応答をおこなったほか、対面メンバー間ではワールドカフェディスカッションを実施、また各論点についてはオンラインで参加したメンバーを含めてMiroを通じた議論を進めました。議論の内容は、この投稿に掲載している提言内容の付録にて参照いただけます。
第1回DMPオープン・タスクフォースの終了後は、UI・UX設計の検討に向けて、株式会社コンセントよりDMPのユーザーシナリオの作成に協力いただきました。またセールスフォース・ドットコムと株式会社ミライエからは、登録情報や検索項目、画面遷移のイメージを喚起しやすくするために、オープン・タスクフォース内で挙がった意見や議論内容を参考にしたDMPのモック作成に協力いただきました。
第2回DMPオープン・タスクフォース
10月7日、第2回DMPオープン・タスクフォースを開催しました。ペルソナやモック体験といった切り口からMiroを活用した議論を行いました。ペルソナとして株式会社コンセントに作成頂いたユーザーシナリオからは、情報不足による制度利用が事業者にとってのボトルネックとなる一方で、調達側の行政職員にとってはDMPサービス検索・比較の部分で機能過多となる点がハイライトされ、ユーザー中心の設計の重要性が改めて確認されました。
モック体験ではUI/UXについての議論を行われ、なかでも公共調達に求める透明性・公平性を担保するためのUIと、買い手が自身の欲しいサービスを効率的・簡易的に検索できるようにするためのUIはそもそもの方向性が異なることが抽出されました。この点については最終提言にて「基本指針として、調達の競争性・透明性担保のための機能は初期から実装し、検索性・探索性向上 やユーザー負担軽減の機能は可能な範囲で実装するとともに、民間サービスでの実現も促していくべき」と反映しています。
第2回DMPオープン・タスクフォース終了後は、DMP先駆けであるイギリスのGovernment Digital Serviceへのヒアリングを行い、マルチステークホルダーで提言案の最終化を進めました。
デジタル庁へ提言
12月20日にデジタル庁で開催された第6回IT調達改革検討会にて、私たちの作成した「デジタルマーケットプレイス オープン・タスクフォース提言案」を発表し、構成員の全会一致で賛同を得ました。最終提案内容については下記からご覧いただけます。
DMP実装に向けたオープン・タスクフォースの議論は、今後デジタル庁に引き継がれます。ロードマップとしては2023年度中に先進自治体でのプロトタイプ実証、そして3年以内には全自治体でDMPが導入されることが期待されています。
おわりに
「DXを推進するには調達改革が必要である」という気づきから多くの議論を重ね、その実現に向けて大きな一歩を踏み出すことができました。デジタル庁情報システム調達改革検討会の皆様、オープン・タスクフォースにご参加いただいたステークホルダーの皆様、ユーザーシナリオ作成をして頂いた株式会社コンセント、DMPモック作成に協力いただいたセールスフォース・ドットコムと株式会社ミライエの皆様、そして提言の作成に携わってくださった全ての方々に心より感謝申し上げます。
アジャイルガバナンスチームは、官民連携のオープンプラットフォームとして、これからも社会のルールや制度をアジャイルにアップデートしていくための取り組みを実践していきます。引き続き、注目いただければ幸いです。
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