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デジタル庁・小林史明副大臣へデジタルマーケットプレイスの各国事例を共有

先日4月20日、デジタル時代の新しい公共調達として、私たちアジャイルガバナンスチームが調査を進めている「デジタルマーケットプレイス(DMP)」について、デジタル庁小林副大臣と面談し、各国事例を共有しました。

「思い描いていたものに行き着くのがこのDMP制度。腹落ちしている仕組みだ」(小林副大臣)

デジタルマーケットプレイスとは

デジタルマーケットプレイス(Digital Marketplace、DMP)とは、複数のベンダーやサービスを一律の要件で登録し、登録されているサービス・企業について、あらゆる行政機関は、入札等不要で簡易的に調達できる仕組みです。行政(国・地方自治体)は、デジタルサービスやITエンジニアなど専門家人材が必要な時、DMPからそれらを簡単かつ迅速、効率的に調達することができます。

デジタルマーケットプレイスのコンセプトや背景や詳細については下記がご参考になれば幸いです。

日本における導入時の論点

日本においても調達スピードの向上、ベンダーロックインの解消などを背景に、DMPへの注目が高まっています。

今回の小林副大臣との面談では、日本での導入の意思決定を行う際に検討が必要となるフレームワークアグリーメント、サービスのセキュリティ評価、運用体制の3項目について、各国調査を通じてのインサイトを共有しました。

1.フレームワークアグリーメント制度の導入

DMP導入において肝となるのがこのフレームワークアグリーメント(以下FA)です。FAとは、複数ベンダーを一括で登録する契約のことで、これは本契約を意味せず、FAに登録後、マッチングしたバイヤー(行政機関)と個別契約を結びます。FAへの参加時点で、物品・サービス提供者は、Value for Money(金額に見合う価値)を満たすことが保証されており、政府側は、発注の手続きさえすればよいため、入札を必要とせず迅速な調達が可能となります。

FA制度は10年以上前より英国・米国をはじめとし、複数国に導入されています。ここでは調達時の入札資格に該当するFA制度の導入にあたり、関連法令であるWTO協定や会計法との整合性についての検討が必要です。WTO参加済みの米国・英国は積極的にFAを採用しており、英国・米国・ブラジル共にFA制度を国内規則として明文化しているということが明らかになっています。

FA登録後の行政機関との契約において、競争入札を行わないといった特徴を持つFA制度は、日本での導入検討時、公告の性質と競争性の2点が議題に上がることがあります。この点において、例えば、米国においてFAにあたる ”GSAスケジュール”は、契約競争法および連邦調達規則上の「契約行為の公表」の要件を満たすとされているなど、FA制度自身は公告の性質と競争性を有するとされています。

2.サービスのセキュリティ評価

2つ目にセキュリティ評価についてです。それぞれの国により、サービスのセキュリティ評価の方法には対応に幅が見られますが、米国ではISMAPの前身となるFedRAMP(Federal Risk and Authorization  Management  Program)=米国政府機関における統一のクラウドセキュリティ認証制度が用意されています。

英国においてはG-Cloudのセキュリティ要件として、Cyber  Essentialという最低限の認証取得を求めた上で、それ以上の要件は、各担当者が主体的に決められるよう判断基準となる「Cloud Security Policy」を用意し、かつDMP上で各サービスのセキュリティ対応項目を表示し、フィルタリングできるようにできるようにしています。日本においても、各国事例を参考にしつつ、日本の状況にあったセキュリティ要件を検討する必要があるでしょう。

3.運用体制

最後にDMP導入時の運用体制についてです。日本でのDMP運用にあたって、どの主体が何を行うのかが検討事項になります。例えば日本の場合は調達庁がないので運用する組織はどこに当たるのか、どこが抱えるのかの判断材料として各国事例が参考になります。

DMPは米国、英国ともに、調達庁がデジタル推進組織と連携して運用しており、ブラジル・インドでは日本でいう経産省に当たる省庁が運営を主導しています。これらの運用主体はフレームワーク・アグリーメントの作成・更新・契約 /  オンライン・プラットフォームの開発、運用、利用支援 /  調達能力向上のためのトレーニングプログラムの仕組みづくり の提供など多岐に渡った役割が求められます。

終わりに

ITシステムと公共調達のありかたについては、現在、社会からも注目を集めています。今後とも各国の先進事例も参考にしつつ、官民連携でステークホルダーの方々と幅広く議論を重ねながら、新しい公共調達のありかたについての実践と実装をサポートしていきます。

世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 
東郷七摘(アジャイルガバナンスチームインターン)
隅屋輝佳(アジャイルガバナンスチームプロジェクトスペシャリスト)
ティルグナー順子(広報)


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