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GSCA に新たな仲間が加わりました

私たち世界経済フォーラム 第四次産業革命日本センターが事務局を務めるG20 Global Smart Cities Alliance(以下、GSCA)は、昨年「スマートシティ・ポリシー・ロードマップ(以下、ポリシー・ロードマップ)」という新たな取り組みを発表しました。この取り組みに賛同頂いた36のパイロット都市とともに、昨年以来モデルポリシーというルール策定を軸に、スマートシティ推進に必要なベースライン作りを進めてきました。

GSCAは日本においても、昨年より国内14自治体に参画を頂き本格的に活動を開始しました。グローバル都市ネットワークの利点を活かしながら、日本というローカルを意識した独自の活動を参画自治体と一緒に進めてきました。その結果昨年は一定の成果につなげることができ、現在GSCAは国のスマートシティ推進体制において、連携すべき国際会議体として位置付けられています(※1)。

昨年の成果をふまえて、今年は日本におけるGSCAの規模の拡大を目指すことになり、結果として新たな仲間をGSCAに迎えることができました。今回は昨年の活動の簡単な振り返りや今年新たに参画頂いた自治体のご紹介、先日開催したキックオフについて触れていきます。

日本におけるGSCAの昨年の主な活動

まず昨年GSCAが日本において取り組んできた活動について振り返ります。

参画自治体間のネットワーク強化
昨年GSCAが日本において最も注力した活動の一つとして、参画自治体間のネットワーク強化が挙げられます。私たちは、スマートシティ推進に「孤軍奮闘」している各自治体でスマートシティを担う方たちが、想いやアイデア、悩みを共有し横の連携を強化しながら、ある意味「チーム」として一緒に活動していくことが日本のスマートシティ推進には重要であるという思いを持っていました。
一つの例として、定例会という形で参画自治体が定期的にコミュニケーションできる機会を用意しました。定例会では自治体同士でスマートシティ関連の近況や課題が共有されるだけでなく、C4IRからも海外のスマートシティに関する最新動向などを提供してきました。こうした機会を通じて、GSCAが各自治体のスマートシティ推進にとっての「拠り所」となるよう努めてきました。

ポリシー・ロードマップに基づいたスマートシティ推進支援、調査活動
GSCAはスマートシティにとって基本となるべき「5原則」を設立当初より提唱してきました。

1. 公平性と包摂性、社会的インパクト(Equity, Inclusivity & Social impact)2. セキュリティとレジリエンス(Security & Resilience)
3. プライバシーと透明性(Privacy & Transparency)
4. オープン性と相互運用性(Openness & Interoperability)
5. 財務面、運営面での持続可能性(Operational & Financial sustainability)

同原則は、浜松市や加賀市、加古川市、宇部市、東広島市と言った昨年よりGSCAに参画している自治体でスマートシティ実現において共通で守るべきルールとして掲げられているほか、今年4月に内閣府より出された「スマートシティ・ガイドブック」の中で掲げられている「スマートシティに取り組む上での基本コンセプト(5つの基本原則)」のベースにもなっています。

ポリシーロードマップの核ともいえる、モデルポリシーの普及や提案活動にも積極的に取り組んできました。例えば昨年の政府のスーパーシティ / スマートシティにおけるデータ連携等に関する検討会において、現在公開されている5つのモデルポリシーの一つであるPIA(プライバシー影響評価)ポリシーに関する提案を行っています。

加えて36の全パイオニア都市に対して、5つのモデルポリシーの実装状況に関する実態調査(ポリシーアセスメント)を行いました。その後アセスメントを通じて得た各都市における現状の関連施策や共通の課題、良例をレポート「Governing smart cities: policy benchmarks for ethical and responsible smart city development」 としてまとめ今年7月に公開しました。同レポートは今後スマートシティの推進を目指す都市が、5つのモデルポリシーの実装を検討する際にベンチマークを提供する役割を果たします。


情報発信
GSCAや各参画自治体のスマートシティの取り組みをより「広く」、より「正しく」知ってもらうことが重要と考え、ワークショップやイベントなどを開催しました。
昨年はメディアを対象としたワークショップ、今年は4月に開催されたグローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット(GTGS)を記念したスマートシティ関連セッション「GSCA Japan Summit」 を実施しました。いずれも産官学のエキスパート、特に行政サイドからは参画自治体の首長や現場のキーパーソンをパネリストとしてお招きし、日本のスマートシティでまさに今起こっていることを議論しながら、スマートシティ実現に向けた想いやアイデアを発信いただきました。
これまで開催したイベントやセッションレポート、動画にはGSCAのホームページからアクセスできます(※2)。

新たにGSCAに参画した自治体 

今年、新たに11自治体がGSCAの活動に賛意を示し、GSCAに参画いただきました。昨年参画した14自治体と合わせてGSCAに参画している国内自治体は合計25となりました。
今回新たに参画いただいた自治体は以下の通りです。

今回参画いただいた自治体(敬称略、2021年10月現在)
札幌市(北海道)
会津若松市(福島県)
宇都宮市(栃木県)
長野市(長野県)
茅野市(長野県)
河内長野市(大阪府)
三田市(兵庫県)
下関市(山口県)
高松市(香川県)
荒尾市(熊本県)
都城市(宮崎県)

参画自治体の拡大に伴い、日本におけるGSCAは地域や人口規模、スマートシティのバックグラウンドなどの点においてよりバラエティ豊かな都市ネットワークとなりました。現在GSCAに参画している自治体はGSCAのホームページ(※2)で確認できます。

キックオフを開催しました

新たな自治体の参画を受けて、8月下旬にオンライン形式でキックオフを開催しました。新たに参画いただいた自治体に加え、昨年より参画している福岡市、前橋市を含めた計12自治体が参加しました。

キックオフでは、まずGSCA 参画を通じて実現したいことやスマートシティ推進における最近のトピックなどを各自治体より紹介いただきました。
GSCA参画を通じて実現したいこと、については以下のような期待が各自治体より寄せられました。

・「各自治体の取組の成果の横展開を進めていきたい」
・「各自治体との連携を通じたスマートシティに係るナレッジシェア及び取組の発信をしていきたい」
・「海外の動向や最新の実務的な情報を獲得したい」
・「スマートシティを実社会に実装していくために足りていないものや必要なものについて議論していきたい」

続いて昨年より参画している福岡市の的野氏、前橋市の谷内田氏より両市での取り組みを各々紹介いただきました。最後に限られた時間ではあったものの参加者によるオープンディスカッションを行いました。
最初の定例会ということもあって多少堅さも見られたものの、各自治体による紹介やオープンディスカッションの中で、参画自治体のスマートシティに対する想いや熱量を皆さんで共有することができました。

image_候補2

今後も昨年同様定例会において参画自治体による取り組みの共有やディスカッションを継続する一方、各自治体がモデルポリシーへの理解を深め実装の検討へとつなげていけるワークショップ開催なども新たに計画しています。
定例会以外の場でも参画自治体間のネットワーク強化や情報発信、スマートシティ推進に必要な国内外のナレッジ共有など、国内のスマートシティの基盤構築に貢献するための各種取り組みをGSCAとして進めていく予定です。

今後も日本におけるGSCAの活動を発信していきますのでお楽しみに。

関連リンク

(※1)「スマートシティの推進について」(令和3年4⽉23⽇
内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局)

(※2)GSCAホームページ。現在GSCAに参画している国内自治体やこれまで実施したセッションレポートや動画、モデルポリシー(日本語版)はこちらよりアクセスできます。

執筆
世界経済フォーラム 第四次産業革命日本センター
スマートシティプロジェクトフェロー 増田 拓也
インターン 澤野 結衣

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