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インターネット投票への壁に挑む、つくば市

2024年には、日本でもインターネット投票が実現する? ーーーインターネット投票など規制の壁に挑む茨城県・つくば市の取り組みについて、Japan Timesに寄稿した記事内容の一部をご紹介します!


「新しいアイディアを検証し、全国に普及させる」科学の街、つくば市

茨城県つくば市にある並木中等教育学校の生徒会選挙は、インターネット選挙でした。デジタル・ネイティブの若者たちはペーパーレスであることを気にも留めませんでしたが、この選挙は変化の兆しとして全国から注目を集めました。

同校で使用された投票ソフトは、ブロックチェーンなどの先端技術を駆使するスタートアップ企業、VOTEFORによって開発されました。VOTEFORは2018年からつくば市と連携し、公職選挙法の範囲外にある市民投票でそのプラットフォームを検証しています。

つくば市の五十嵐立青市長は、2024年に行われるつくば市の次期市長選・市議選でネット選挙を実現したいと目標を掲げています。この背景にあるのは「新しいアイデアを検証し、全国に普及させる」という科学の街・つくば市としての使命と自負です。

ネット投票を望んでいる若者だけではなく、移動手段を持たない高齢者や、例えば事故で入院している方など、より多くの方に政治参画頂くためにも、インターネット投票は必要な施策だと思います。一方で、選挙は民主主義の根幹に関わることでもありますので、安全性やセキュリティを担保しながら、不正のない仕組みを構築していく事も極めて重要な論点です。

現状の選挙の一つの問題点は、一般の市民はあまり知らない事かもしれませんが、朝から晩まで非常に多くの自治体職員が駆り出されており、大変な負担の上に成り立っているという事です。朝7時など、かなり早い時間から投票所を開くためには、白紙の投票用紙を持って深夜・早朝から職員が準備に向かわねばなりませんし、開票作業も選挙速報などをテレビで見ていると深夜まで及ぶことも多いことがわかります。投票所の数が多いか少ないかはお住まいの地域によっても違うかもしれませんが、少なくとも人口減少下の日本で今後も同じ運用を続けていく事がサステナブルなのかどうかという現実的な問題については、日本全体で考えていく必要があるのではないかと考えます。(世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター スマートシティプロジェクト長 平山雄太)

スーパーシティという交渉力と規制緩和

ただ科学の街とはいっても、実証止まりで終わってしまうプロジェクトが多いなか、国の規制を乗り越えて社会実装までいくのは簡単ではありませんーーー つくば市の勝算は、2022年3月に勝ち取ったスーパーシティ認定にあります。スーパーシティは医療、教育、エネルギー、防犯、交通等の分野で自治体が新しいテクノロジーの社会実装を行うことを目的とした制度です。このスーパーシティに認定されたつくば市には規制緩和に向けた交渉力があり、その動向は全国の自治体から注目されているのです。

実は当初、つくば市は40の国の規制を変更するよう求めていましたが、その数は現在、実現可能性が高いと思われる28の規制に絞り込まれました。対象分野はインターネット投票のほか、電動スクーターのようなパーソナル・モビリティの利用拡大や、高齢者を病院へ送迎するためのシェアタクシーのネットワーク化なども計画されています。さらに住民の健康記録などの個人情報もマイナンバーのデジタルIDにオプトイン方式でリンクできるようにする予定です。

インターネット投票の、その先へ

並木中等教育学校の生徒で、昨年の生徒会選挙の投票に参加した林蔚欣さんは「このインターネット投票のプラットフォームが、選挙以外の用途にも使われることを期待しています」と言います。直接民主制のように、政策に対する住民の意見を募るために使えばいいのでは?という考えです。「選挙では自分の考えに最も賛同できる候補者を選ぶけれど、私たちが本当に気にするのは政策だと思います。あらゆる世代の人々が自分の意見を述べることができるツールが必要なのです」。


世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
Jonathan Soble (Communications Lead) 
ティルグナー順子(広報)




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