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アジェンダブログ:都市が公共空間におけるデジタルの信頼性を向上させる3つの方法

近年、安全性と利便性を高めるために、公共スペースにスマートテクノロジーを導入する街が増加しています。こうしたテクノロジーは住民にメリットをもたらす一方で、データ収集・利用に関する懸念が市民との信頼関係に影響を及ぼすことも事実です。本記事ではDTPR(Digital Trust for Places and Rountines)と呼ばれる信頼構築の手法をご紹介します。

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DTPRとは

DTPRは世界経済フォーラムの「Future of the Connected World Global Action Plan」の支援を受け、公共空間に設置されたテクノロジーの仕組みを市民が理解し、データ収集・利用を可視化し、市民とのオープンなコミュニケーションを可能にするツールを提供するイニシアティブです。フランスのAngers-Loire市、カナダのInnisfil市、米国のボストン市とワシントン市にて実施された調査と試験運用から、自治体がテクノロジーを導入する際に市民からの信頼を得るために重要となる3つの方法が提示されました。

DTPR Cohort

1.   説明責任を果たす

スマートシティ戦略の中核に「透明性」「市民参加」を掲げる自治体が増えていますが、いまだ政策と実行の間にはギャップがあり、公共インフラに関する話し合いに住民が有意義に参加できていないのが現状です。米国ボストン市は、交差点に設置したセンサーに対する住民の信頼、関与、満足感を高めるためにDTPRが提示するツールを採用しました。

2.   市民の意見を反映する

テクノロジー導入前に市民に意見を求め、実際の導入にあたっては地域コミュニティを積極的に巻き込むことが理想です。特に監視技術は、地域社会、企業、政府の間に溝が生まれることが多く、最悪の場合は社会的信頼が損なわれて公共の安全のために設置されたテクノロジーを撤去せざるを得なくなります。市民の意見を収集し、双方向の議論を可能にすることが不可欠なのです。

3. 有効性の測定評価を行う

テクノロジー利用によって得られる効果や測定方法を明示することなく導入を進めるべきではありません。技術やセクターに焦点が限定され、コミュニティへの影響が度外視されることがしばしばみられます。適切なデータ、測定基準、インプットがなければ、自治体が住民からの信頼を維持することが難しくなります。

DTPRを活用した信頼性の向上

多様な専門家によって共同設計されたDTPRは、テクノロジーに関する住民の理解を深め、参加を促すことで透明性を高めることを目的としています。住民は居住地域に導入されたテクノロジーの具体的なメリットとリスク、責任者を知りたがっており、また自治体側にもその説明責任があります。これらの情報が手元にあれば、市民が主体性をもち、信頼を築くことが可能になるのです。

G20 Global Smart Cities Alliance (GSCA) 

世界経済フォーラム第四次産業革命センターが運営支援を行うグローバルなスマートシティ都市連合であるG20 Global Smart Cities Alliance (GSCA)でも、スマートシティ5原則をもとにさまざまなモデルポリシーを策定し、公共空間でのテクノロジー実装をサポートしています。DTPRが提供するチェックリストやツールも含め、テクノロジー実装の鍵が「信頼」にあることが周知されつつある現在、そのための仕組みや枠組みについて世界の知見を積極的に共有していくことが求められています。


執筆:
世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
菅原結衣(インターン)


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