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「のりあい」から「ふれあい」へ。共助の地域モビリティ(大阪府河内長野市)

この記事は「スマートシティの実践・実装」を、GSCA(*)加盟都市の取り組みからご紹介する連載の第二回目です。

大阪都心まで電車で約30分という地にありながら、緑豊かな山並みに囲まれた河内長野市。高度成長期の約20年間で20の開発団地が整備されるなど、ベッドタウンとして急激に人口が増加しましたが、当時の子育て世代、つまり現在65歳から75歳の人口が極端に多い人口分布となり、現在では大阪府下で最も人口減少・少子高齢化が進行しています。こうした人口動態の変化に伴って発生する空家空地の増加、コミュニティの減少・縮小、公共施設・公共交通・商店などの維持問題など河内長野市が直面している課題は、いうまでもなく、日本の多くの地方都市の共通課題でもあります。

本投稿では、河内長野市のなかでも約7,000人が暮らし、高齢化率が40%を超える南花台地域の共助の地域モビリティ「クルクル」をテクノロジー実装の事例としてご紹介します。

クルクルとは?
・ 「のりあい」から「ふれあい」へ。住民の対話を広げる移動支援サービス
・ 地域の生活拠点であるスーパーマーケット「コノミヤ」が拠点
・ 運営主体は約60名の市民ボランティア
・ AIを活用した予約システムによる効率的な運行
・ 地域内の電柱約300本を乗降ポイントに
・ 環境に配慮した低速電動ゴルフカートを使用
・ 3年の実証実験を経て、有料化。利用料金100円/回(2022年6月現在)
・ 2021年より電磁誘導線方式による自動運転の運行開始

スマートシティ=ハイテク実装ではない

河内長野市・島田智明市長

クルクルで活用している自動運転技術は、路面に敷設された電磁誘導線から出る磁気を察知し、加減速や右左折の指示を読み取って走行するものです。完全自動運転でもなく、空飛ぶクルマでもありません。島田智明市長は「人口減少と高齢化は日本全体の課題。河内長野市が先進事例として取り組み、課題解決に繋げていきたい」と意気込む一方で、河内長野市が取り組むスマートシティについて「ハイテク実装がスマートシティではない」と言い切ります。地域の課題解決にテクノロジーを利用しつつ、地域通貨(モックルコイン)を用いて地域にお金をまわす仕組みボランティア市民の貢献に対する認知の仕組みを重視する姿勢を示しました。

誰のためのテクノロジーなのか。この問いが、いつも答えを導いてくれます。
(河内長野市・島田智明市長)

河内長野市 電子地域通貨「モックルコイン」

共助で持続可能なサービスを

質問に回答するクルクル運営ボランティアの山口俊子さん(中央)

子育て世代で賑わっていたニュータウン(開発団地)が、いつのまにか高齢者ばかりのオールドタウンになっていく。人口が減れば、地域に複数あったスーパーマーケットがどんどん撤退し、生活拠点が失われていくーー クルクルの運営ボランティアをつとめる山口俊子さんは、だからこそ「地域で続けられる」ために自ら行動すると言います。

20-30年とか長い先のことを考えて動くのが行政。自分たちボランティアは5年先をみて、地域にとって、自分たちの生活にとって、必要なことをやっているんです。(クルクル運営ボランティア・山口俊子さん)

クルクル運営のための約60名から成るボランティアチームは、運行、予約受付、広報に分かれて運営を行なっています。試乗を担当してくれたチームリーダーの谷口文雄さんは「今後自動運転になっても、無人化にはならないと思う。添乗ボランティアが乗客の買い物袋をもって玄関まで行ってあげるような地域コミュニティであり続けたい」と話してくれました。

自治体がバス会社などに地域の交通インフラ維持を委託するケースが多いなか、河内長野市での公的支援と地域の活力を生かした「共助」による取り組みは、注目に値します。クルクルの持続可能な運営という課題に対する答えはまだ模索中ですが、少子高齢化社会におけるテクノロジーの実装・実践の鍵は、「地域コミュニティ」「住民のエンパワーメント」にあるといえそうです。

河内長野市のクルクルの事例は、近々、英字新聞Japan Timesに寄稿する予定です。

【南花台モビリティ「クルクル」PV】


世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
ティルグナー順子(広報)











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