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事業会社を始めて、そして閉めた話(最終回)

 テレワークに入ってからこの方、これまでの仕事をちょっと振り返って書き残して置こうと書き連ね、20本目になりました。漸く最終回です。

 前回は、事業会社の時系列の状況を整理し、やった事とすべき事を比較し、ブレの多い、夜郎自大な自分の過去の姿を、深く反省したというあたりまででした。

◆ ◆ ◆

株主の目論見が破綻しかけてからの、アセットライト、受託で黒転など、ああそうですかってなもんです。

逆に受託してしまうとステークホルダーが増えて、経営として雑多になり事業を閉めにくくなるし、会社終盤の段階だと、むしろ資金ある程度食いつぶした段階で早く閉めてくれというくらいの面も今はわかる。

事業の採算の改善や、残資金指定のクリアなど、それはそれで手腕として、平時の事業体ではKPIとしちゃ一般的なものですが、株主意図に応じた企業としての目論見が潰えた後では、穏便に閉められるか否かでしかありません。

 前半に書いた事業顛末の中で、自分がキレたポイントをピックアップして見る。今となっては違うことを思う訳です。

●あの会社の奴は暴れて困ったと、暴れた私に面と向かっていってしまった大番頭さんにブチ切れる

「いやーあの会社はね、大変だったんだよ、金遣いがひどくて!Kを送っていくら抑えさせても何かしようとして。これで漸く。。。」(その5)

自分は止血して黒転させた側だったので、ブチ切れましたが、経営陣としてはそんなちょっとした事はへえってなもんです。正しかった。手仕舞いのみに集中すべきだった。2代目社長も正しい。間は悪かったですが(笑

●出向元の事業意図が完全に消えて、最早やってても意味がないと思って去った挙句、何の恨みかリストラ候補として出向元に耳打ちした先輩。

これは出向元から連れて行った元部下。もう先に戻っている。なかなか逞しい子ですが、目力満点。どうしたの?と聞くと、「先輩と、直角お辞儀部長で、Kたろうは取らないと話していたんですよ!!聞いちゃったんです!気をつけてください!!危ないとおもいます!」
「。。。。(来たなこれは)」 (その10)

まあビジネスパーソンとしては普通ですよ。合理的。先に脱出して、「策を考えると言ってた癖にそれはどうなったんですか!」と死に体でサバイバルしか考えなくなった労組の様な後輩に突き上げられ、嫌になって来なくなったのもわかる。

わざと結婚と子の誕生を控えた人間をリストラ側に押し出したのは流せない。でも結果的に、自分はそれらの圧を押し返し、今や思いもかけない仕事を成しており、大事な事を人に頼ってはいけないと知った。頼ったもう一人はリストラされた。

●Androidのアプリを使ってくれなかった一件非効率なパートナーの社長

着いてみると、会議室にはえらい緊張が漂っていて、暗い雰囲気。これは一体何事かと。
こちらのアプリを見せる。よく出来ていますねと先方のシステム部長淡々という。「ウチらのよりも現状いいかもしれません」。
は? (その4)

先行き不透明な、企業株主の多い会社に重要な技術部分を任せる事は、あの時点では普通に考えてしないのが通常の役員レベルの判断。一方で人材としては、何人か雇ってくれた訳で、決して完成度や技術レベルの問題ではなかった事も最早分かる。私を引き抜かせてくれと出向元にリクエストもしてくれもして、良い方でした。足を向けて寝られない。

●出向解除後の仕事を八面六臂の活躍で成し遂げて無評価の件。

パワハラ課長は途中で部長に復活。それに併せ、思いもしなかったのですが、先に帰任して、私の元に教えを請いに来た同僚が散々嫌っていたはずのパワハラ部長と話していたようで、課長昇進と。業績評価は、想定通り自分のものにはならず。(その13)

どれだけ成し遂げたとして、他人所属のKPIを、実際成し遂げた人間に評価時に付け替える事は大企業では起こらない。評価にならないのも正しい。

逆にパートナー企業や、CPに感謝され、社外での自分の評価はうなぎ上りでしたが、最終的には外部からすると、オフィシャルウインドウと付き合わざるを得ない中で、話が違うと離れられてしまったら、ブランド棄損するリスクもある。表と裏のダブルスダンダードになるので、実は危険なやり方だった。

そうせざるを得ない所まで社員を追い込む、という観点においてこそ、まさにパワハラは排除すべき。

今は割にすんなりと、この様に思えます。

必要な関係性の中で法人が出来、出資者は通常エンジェルであることなど殆どなく、はっきりした事業投資の目論見がある。自分の行動は、そんなビジネスの中では、かなり稚拙なものだったなと。

尤も、私も旧態依然とした只の昭和生まれの中堅サラリーマンで、出向先でマネジメントが皆消えてしまった中、放り出されてやって行かねばならなかったから、しょうがなかったと思う自分もいます。でも結果としては、株主観点のビジネス定石通りの事しか起こらなかった。

それなりにハードな経験もしたつもりでいて、その実、現在出向元で、陰口叩く内勤サラリーマンと、視点の低さはそうそう変わらなかったのではないか、と気づいた訳です。

そしてその視点でいる限り、自分の世界は変わっていかない。プロアクティブに動くことは出来ないのだと今思うのです。

◆ ◆ ◆

 おそらく今、リストラ最中だったり、過去にあって、怨恨を持ち続けている人も凄く沢山いらっしゃると思うんですね。自分もそうだった。

でも、リストラは語源の通りで、経営の計画、グランドデザインで先に決まってしまう。”人切り”というよりリソース配分変更という事です。

これは本当に言いたくない事ですが、途中、例で出しましたけど、大船の中の機械があなたや私。特にここまで水平分業が進むと、人も設備も同じです。同じく水平分業された人事的ケアの再就職や積み増しがあるくらいで、自分から動かないと、実は道は開けない。

その際の視点として、経営は、戦略、ビジョンがとにかく必要で、それに合わせ修正して早めに手当てしていくしかない。事業側は戦略と合致する提案と実行をしていくしかない。それに照らしながら動いていくしかないとしか、最早言えないんです。

 自分は、事業会社を始めて、そして閉めた経験で何を得たか?

事業成果としては、ここでは主題でないので書きませんでしたが、国内の業界で合弁を起業して、初期の2年くらい、今のGAFAより先に成しえた事があった、そしてどうして勝てないのかつぶさに体感した、という事が一番大きい。逆にそれしかない。

その中で得たものがあるとすれば、

”会社ありき”の視点が主流の、オーガニックな経営の時代に仕事を始めた内勤サラリーマンが、人の心や生活と、結局は従わざるを得ないビジネス視点の間で悩み、揺れながらも、社員や、自分や、ユーザーや株主側にとって結果として、何とか穏便に会社を閉めるまでの、シンプルな経験値。

これが一つ。

そして、閉めてから終わるわけでない仕事人生で、企業のビジョンや戦略がどの立場であっても最重要だという今の理解に至った今、もっとああ出来た、こう出来たはずだと、あらためて振り返ってみる事が出来る若かりし頃の苦い、貴重ではある、事業を少し超えた経験の一単位、

そんな事になるのかと思います。

ひねりも無くすみません(笑

 今は、自分のいる場所に応じ、人に思考を預けたり、寄与の前提を当たり前と思わず、しっかり備えをし、常に株主、自社、パートナーの意図や戦略をよく測りながら、自覚的に仕事をして行きたいものだ。

という、アホほどシンプルな(笑)気持ちです。

きっと、内勤サラリーマンであっても、起業しても、自営でも、要素的には同じだと思います。そう考えながら、人への、厳しい対応を含めての優しさ、何とか打開しようとするタフな心を変わらず持って、臨むだけです。

さて。

テレワークに入ってから書き始め、すっかり膨大な量になりましたが、これにて、このシリーズ、終わりにしようと思います。

これまで述べた事の中で、ほんの少しでも、皆さんのお役に立てる事があれば幸甚です。

長々とお付き合い頂きまして、ありがとうございました!

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