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午後1時のご近所散歩。

図書館のお向かいの角に、ひっそりと佇むテーラーがある。見ると、1937年から営業している、由緒あるお店。何やら、外国の大使館御用達を匂わせる証書が飾ってある。通りすがりに、ショーウィンドウのカーテンごしに店内を覗くと、意外と若い、でもカチッとスーツでキマている店主さんが、何やら作業をしているのが見える。二代目、いや、三代目なのだろうか。それだけで実にカッコいい。たくさんの、重厚感のある、それでいて滑らかで肌触りの良さそうな生地と、ダンディーなスーツをまとったバストに囲まれながら、淡々と、でも丁寧にお仕事をしている姿。

ああ、なんてロマンを感じる光景なんだろう、そう思いながら歩いていく。

平日のお昼間に楽しそうな声を掛け合いながらテニスに興じる老紳士・老婦人の皆様を尻目に、小学校を通り過ぎようとする。

ふと、小学校の向かいのおうちに目をやると、外壁に

「ミ ル ク チ ェ ス ト」

と書かれた、小さいポストのようなものが目に止まった。

きっと、昔はここから牛乳屋さんがお届け物を入れていたんだろうな。
「〇〇さーん、チェストに入れておきますね〜」
「はーい、いつもご苦労様」
「おとうさーん、牛乳屋さん来たからチェストから瓶持ってきて〜」
そんな会話が、毎週このあたりで聞こえてきてたんだろうなぁ。
今はもう使われていないであろう「ミ ル ク チ ェ ス ト」を見ながら、色々な妄想が頭によぎって、思わずフフッと笑みがこぼれる。もし今も現役ならば、これは拍手喝采&実に"エモい"。エモすぎる。

そうこうしているうちに、十字路にきた。自宅はもうすぐそこだ。
右に曲がれば園芸店。左に曲がれば自宅。

一瞬迷ったけれど、今日は左に曲ろう。
なんてったって、左に曲がると日向で気持ちがいい。

今日は晴れ。公園ではお母さんと2歳ぐらいの女の子が遊んでいる。


そろそろカギを出さなくちゃ。


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