声のトーン。メジャーかマイナーか。

今回は、声のトーンの話です。

僕が朗読するときによく考えるのが、
声のトーンは、メジャーかマイナーか、
ということ。
僕が横文字スキーなのでメジャー/マイナーと呼んでますが、
要は、明るいか暗いか、ということです。

大体、作品の内容・雰囲気で決めてます。

例えば中原中也。

汚れつちまつた悲しみに……

これ、明るく読むと、何か違和感がすごい。
じゃ、マイナーの音を多目に使おう、みたいな感じです。

声の調子、ですね。
作品を朗読する際に、明るめにいくのか、暗めにいくのか。
どっちが、より作品の表現にふさわしいだろうか。

テクニックの話をしてしまえば、
唇より上のエリアの共鳴を使えば音は明るく、
唇より下のエリアの共鳴を使えば声は暗くなります。
矢印で考えても面白いと思います。
/メジャー

\マイナー
という具合ですね。

メジャーの音が多ければ、その朗読は、
・明るい、楽しい、愉快、軽快、爽やか
といった印象を持ってきます。

マイナーの音が多ければ、その朗読は、
・暗い、真剣、寂しい、怖い、暖かい
などの印象を持ってきます。

そして大事なのは、
作品を一色で塗りつぶさないようにすること。
同じ調子がずっと続くと、聴いてて退屈になってきてしまいます。
特に「文学作品の朗読」となると、
陥りがちなのが、名作をまじめに読まなきゃ!
という思いから、
全てをマイナートーンにしてしまう罠。

これは本当に陥りがちなので注意しましょう。
人物も情景も楽しい、弾んでいるシーンなのに、
何故か朗読が暗い、重い、
という時は、マイナートーンの罠にかかっている可能性が高いです。
マイナートーンで朗読すると、
「良い・深い読み方をしてる感じがする」
と本人が錯覚するせいもあるのでしょう。

作品の中で、適度にマイナーとメジャーを混ぜることが大事です。
マイナー基調の作品ではメジャーを、
メジャー基調の作品ではマイナーを、
積極的に使っていくと、メリハリが効いた朗読になっていくでしょう。

ここで、サンプルを一つ。

おうい雲よ
いういうと
馬鹿にのんきそうぢゃないか
どこまでゆくんだ
ずっと磐城平のほうまでゆくんか
山村暮鳥『雲』より「おなじく」

これを、
ずっとメジャー
ずっとマイナー
「ずっと磐城平のほうまでゆくんか」のみマイナー
「ずっと磐城平のほうまでゆくんか」のみメジャー
と、四種読み分けてみた動画がこちら。

ずっとメジャーだと、朗らかな楽しさが、
ずっとマイナーだと、何か思い悩んでいるのか、
部分マイナー/メジャーだと、
途中で心の変化が起きているような印象があるのではないでしょうか。

マイナーとメジャーの切り替わりは、
人の注意力を集めます。
効果的に使えると、表現力に幅が出てきますね。

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