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怪しの話

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You Tubeのの星野しづくさんのチャンネル「不思議の館」と、ツイキャス(You Tube)の「怖い図書館」に投稿した、不思議な話や怖い話をほぼ週1回のペースで掲載しています。
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2024年2月の記事一覧

ただそれだけの話

これは数年前の夏に、前田さんという50代の男性から聞いたお話です。 その年の春、前田さんが所長をしている、とある会社の営業所に、清水くんという某国立大学を卒業した新人が配属されてきました。 真面目で几帳面な性格で、仕事もすぐに覚えて、周囲の評判も良い好青年でした。 ゴールデンウィークも明けたある日のことです。 「おはようございます。…所長、ちょっといいですか?」 出勤した前田さんに清水くんが声をかけてきました。 営業所といっても社員十数人の小さなオフィスです。 清水くん

追儺(ついな)の果て

私の母は昭和20年代の中頃、結婚前の一時期、兵庫県芦屋市のとあるお屋敷でお手伝いさんとして働いていたことがありました。 お屋敷には母のほかにも3、4人の使用人がおり、近所には同じように数人の使用人を置いているお屋敷がいくつもあったそうです。 これはそんなお屋敷のひとつに勤めていた、小林さんというお手伝いさんから母が聞いた話です。 小林さんが働いていたのは、昭和20年の大空襲でも焼失を免れた、古くからある大きなお屋敷でした。 当時屋敷に住んでいたのは60代のМ氏とその妻だけで

オールの先

前回は岡山の山の学校の話だったので、今日は海の学校の話をします。 昭和の昔から現在まで50年以上にわたり、岡山県の南部、特に岡山市とその東に位置する瀬戸内市、備前市、玉野市などの市町村の小中学生ならば、ほぼ全員体験しているであろう学校行事に、「渋川青年の家」での宿泊研修があります。 「渋川青年の家」は岡山県玉野市にある県の施設で、5名以上の団体であれば一般成人も利用できますが、小中学生向けには「海事研修」という、海を教室にした校外学習プログラムがあることで有名です。 ロー

暗夜行路

これは中学時代に同級生だった和田くんから聞いた彼の体験談です。 皆さんは小学校高学年の時、学校行事として、山の学習や海の学習などという宿泊研修に行ったことはありませんか? 私も和田くんも、小学校は違いましたが、共に小学5年生の時に山の学習、6年生の時には海の学習に参加した思い出があります。 山の学習では、テントを設営しての宿泊、飯盒炊爨やキャンプファイヤーなどといったよくある行事とともに、『暗夜行路』という体験学習がありました。 山の斜面に張られたロープを、目隠しをした状