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怪しの話

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You Tubeのの星野しづくさんのチャンネル「不思議の館」と、ツイキャス(You Tube)の「怖い図書館」に投稿した、不思議な話や怖い話をほぼ週1回のペースで掲載しています。
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2023年1月の記事一覧

白鳥座の4人

これは私が3歳の頃のいちばん古い記憶の一つととして、今でも鮮明に覚えている情景のお話です。 今から60年以上前、当時わが家は岡山市内中心部にありました。 玄関を出て、すぐ前を通る国道250号線を渡れば、南北に長く連なる商店街のアーケードの、南端の入り口が目の前にあります。 両親が共働きで、兄弟のいなかった私は、日常の遊び場として、毎日のようにアーケード街に通っていました。 当時この商店街一帯は地元のKサーカスの興行部が仕切っており、5つの映画館を中心に、バーや飲食店、パ

トウビョウ筋

これは以前、母方の祖母から聞いたお話です。 昭和50年頃、祖母の家の近くに、とある一家が暮らしていました。 還暦を過ぎた両親と30代の一人息子の三人家族で、両親は農業を、息子は地元の会社で働いていました。 両親の悩みは一人息子になかなか浮いた話がないことでしたが、息子が30も半ばになったある年の初め、縁あってお見合いをすることになったのだそうです。 先方は県の西部、K市の資産家の娘さんで、家柄的に不釣り合いではないかと心配したのですが、実際に会ってみると、娘さんも先方の

滲(し)み

これはKさんという70代の男性が聞かせてくれたお話です。 20数年前、Kさんは小さな工務店を経営していました。 仕事は主に大手住宅メーカーの下請けで、内装や補修などを請け負っていたそうです。 ある朝、住宅メーカーの保全担当のM氏から電話がかかってきました。 20日ほど前に完成して引き渡したばかりの住宅のオーナーから、天井にシミができたというクレームが入ったので、確認作業にいっしょに行ってくれないかとのこと。 M氏とは現地で落ち合うことにして、Kさんはさっそく教えられた住所

関守石(せきもりいし)

これは私の短歌の先輩にあたる、Mさんという女性から昔聞いたお話です。 Mさんは話を聞いた当時は40代なかば、裏千家の講師の資格を持っており、短歌は余儀という人でした。 そんな彼女がお茶を習い始めて間もない、20代初めの頃のことです。 その年の11月の終わり頃、知り合いの社長夫人のSさんが、 来年初釜(はつがま)のお茶会をひらくので、 そのお客の一人として参加してくれないかと、招待を受けたのだそうです。 初釜とは、年が明けて最初に行われる茶会のことで、 元旦の早朝に汲まれ