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怪しの話

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You Tubeのの星野しづくさんのチャンネル「不思議の館」と、ツイキャス(You Tube)の「怖い図書館」に投稿した、不思議な話や怖い話をほぼ週1回のペースで掲載しています。
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2022年12月の記事一覧

お迎え

先日、私の家の前で、女子中学生たちが数人集まってこんな話をしていました。 近所に、とある交差点があります。 4メートル幅の道が交差する、十字路と言った方がいいような小さな交差点ですが、小学校の通学路になっていることと幹線道路の抜け道となっていて、朝夕の車通りが多いため、信号機と横断歩道のほかに歩道橋まで設置されています。 その歩道橋の階段下には、近ごろは珍しくなった公衆電話の電話ボックスがありました。 その電話ボックスに幽霊がでるという噂が中学校で広がっているのだとか。

寝言

5年ほど前から約3年の間、私は糖尿病の治療のため、大学病院への入退院を繰り返していました。 入院といっても、いずれも2周間の教育入院です。 各種検査をし、病院食と薬で血糖値を下げて、むくみをとるだけなので、本人としてはいたって元気で、人間ドックの延長のような感覚でした。 これは、そんな入院生活3回目の時のお話です。 病室は4人部屋で、入ると右側に洗面台、左側にはトイレがあり、その先に通路スペースをはさんで左右に2つずつベッドがありました。 正面は大きなガラス窓になっています

化粧

これは、とあるバーのカウンターで、Sさんという中年の男性が語ってくれたお話です。 Sさんが30代半ばだったある年の12月。 クリスマスも近い休日に、荷物持ち兼お財布係として、奥さんのデパートでの買い物につきあわされる羽目になったのだそうです。 婦人服やランジェリーなどの売り場で奥さんが試着する間、Sさんは男ひとり居心地悪く、長い時間待たされたあげく、最後は1階の女性化粧品売場に連れていかれました。 Sさんは子どものころから、デパートの女性化粧品売場が苦手でした。 あの妙

最合傘(もやいがさ)

これはとある居酒屋の常連客Aさんが、酔うとたびたび吹聴していた彼の若い頃の話です。 営業職だったAさんは、11月も終わろうとするその日、かなり落ち込んでいました。 その月は営業成績成績が上がらず、そればかりか以前に契約完了したはずの案件が、ここにきて急に見直しになったりと、気の滅入るようなことばかり続いていました。 私生活でも、学生の頃から付き合ってきた彼女と、ささいなことで喧嘩別れをしたばかりでした。 夜も更けた帰りのバスの中、過ぎ去る街の灯りを憂鬱な気持ちで眺めていた