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怪しの話

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You Tubeのの星野しづくさんのチャンネル「不思議の館」と、ツイキャス(You Tube)の「怖い図書館」に投稿した、不思議な話や怖い話をほぼ週1回のペースで掲載しています。
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2022年10月の記事一覧

タイプ

これは昔よく通っていた喫茶店のアルバイトの女の子が、私たち常連客に話してくれた、あまり怖くないというか、笑い話のようなお話です。 彼女(仮にTさんとしておきます)が、大学3年生になる頃、それまで住んでいたアパートを引っ越すことにしたそうです。 周囲の生活音がよく響いたり、隣近所の住人の言動もなんとなく肌にあわなくて、学年が変わるのを機に転居を決断しました。 そのことを友達に話していると、同じゼミのSさんという女性も同様に引っ越しを考えていることがわかりました。 Sさんは誰

手暗がり

これは常連客の話として、あるアンティークショップのオーナーが聞かせてくれたお話です。 その常連客のMさんはフリーのライターをしていたそうですが、 とにかく昭和の古いものが好きで、特に昭和初期から40年代頃までのものを好んで集めていました。 好きが高じて、住居も築50年以上の木造アパートをわざわざ探して移り住み、家具や調度品もその時代のもので統一するという徹底ぶりでした。 仕事の都合上、パソコンやスマートフォンは持ってはいましたが、原稿はいまだに手書き派でした。 編集者か

李果掌上(りかしょうじょう)

これは今から50年ほど前、私が中学2年生の夏のお話です。 私が通っていた中学校のある市の南部は、 当時、急速にベッドタウン化が進み、生徒数も年々多くなっていた時期でした。 2年生もA組からJ組まで10クラス、400人ほどいて、顔を知らない生徒も多くいました。 そんな2年生全員が参加する、夏休み前の恒例行事として「大山(だいせん)登山」がありました。 鳥取県の名山「大山」への一泊二日の体験学習です。 初日は鳥取砂丘などを見て、大山のふもとの宿に宿泊、翌朝早くに登山を開始して

いこいの広場

これは、とある酒場で会社員の男性から聞いた話です。 その男性、吉田さん(仮名)は40代なかば、今の会社へは30歳からの途中入社でしたが、人当たりがよく仕事もできたので、めきめきと出世して、いまは課長の職にある人でした。 そんな吉田さんでしたが、ある日仕事上でめずらしくミスをしてしまいました。 すぐに気がついたので大事にはいたらなかったのですが、根が真面目で、完璧主義者のようなところのある吉田さんとしては、自分自身を許すことができず、モヤモヤとした気持ちのまま一日の仕事を終

汝(な)が胸に

19歳のころから約25年間、私はとある短歌の会に所属していました。 会員数千人ほどでしたが全国規模の会で、月ごとの結社誌の発行のほかに、毎月、各地方ごとに歌会(かかい)という批評会のような集まりがありました。 参加者がそれぞれ自作の歌を持ち寄って、それについて互いに意見を交わし合う会です。 短歌の会というと高齢者の集まりのように思われるかもしれませんが、私の属していた会は、珍しく10代や20代の会員も多く、 私が30歳前後に毎月のように通っていた大阪の歌会(かかい)にも、常