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 ◆◆背景制作は鉱物に学ぶべし!◆◆

どうも、皆さんご機嫌如何でございましょうか。
Bykingデザイナーのミウラでございます。

最近は管理業務ばかりをしていますが、かつては背景のお仕事をメイン業務としていました。

20代の頃は、プロジェクトの上の方から「もっと次世代機感だしてよ~~」等のダメ出しを頂き、その都度深く悩んだのは今でも良い思い出です(笑)

次世代感は横に置いておいたとして、
表現自体については本当に色々と悩みました。
空、光源、地形、建物、小物、質感、ポストフィルタ、フォグなどなど。

ゲームをプレイしたり映画を見たり画集を買ったりと、インプットを繰り返しながらも、壁を超えられない日々を悶々と過ごしておりました。

そんな時に鉱物に出会い、ヒントを得た
結果、壁を乗り越える事ができました


前置きが長くなりましたが、
今回のブログは自分の鉱物コレクションをベースとし、背景を表現する際に鉱物から学んだ中から「質感」をメインに紹介したいと思います。


◆鉱物が教えてくれる質感表現

★金属的な質感

  • 3種混合(黄銅鉱、黄鉄鉱、方鉛鉱)
    色彩が複雑で、金属質でありながら自然石の形状をしており、光の反射がとても複雑な鉱物。
    一時期のゲームでは岩山でもケレンミを出す為に、これくらいギラギラな質感の岩が流行っていた様な気がします。

実物はもうちょっと色の彩度が高いですね。
  • 黄鉄鉱
    自然物がこのような6面体をしている亊に驚きます。
    Cubeはモデルの基本形状でおなじみですが、見せ方次第でここまで不思議な表現が可能になります。
    黄鉄鉱は8面体の結晶もあり、その美しさは大きな城も空に浮かべられそうです。

美しい六面体をしています。
  • 方鉛鉱(複雑な面の表現、反射等)
    鏡面反射までは行かないまでも目を引く金属反射をしています。
    6面体をしていますが、表面は複雑な凹凸があり、様々な表情を見せてくれます。 
    2cmに満たない鉱物ですが、大きなスケールを感じます。

上の面の形状からくる光の反射が本当に美しい。
  • ビスマス(豊かな色彩、独特な形状)
    この写真は自作した結晶でして、実は失敗しております。
    調べて頂ければ自然物とは思えない面白い幾何形状をしています。

自作ビスマス結晶(失敗)
  • 隕石 (異なる質感の混合、複雑な文様等)
    セイムチャンパラサイト隕石
    重力が無い状態で冷えて固まる為、
    金属部分とその他の部分が混ざりあっています。

「ウィドマンシュテッテン構造」
100万年に1℃ずつ冷えて固まる亊で発生する模様。ロマンの塊です。 

本物か怪しい隕石のコレクションです。 
大きい固まり等は構造が美しく現れます。


★透明な鉱物

  • 水晶
    いわゆるクリスタル。 ゲームにも数多く登場します。
    火や水の要素を持った水晶はなんとロマンのある事か。
    屈折率は1.5443くらい。
    ちなみに水は1.3、ダイヤは2.419。
    屈折を確認するには研磨された状態がわかりやすいのですが、今回は鉱物の原石にフォーカスしているので研磨状態の屈折率の説明は致しません。
    こちらも深い世界なので、チャンスがあれば紹介いたします。

内容物がある方がリアリティーを感じます。
  • アメジスト(紫水晶)
    ほとんどの結晶は中に内容物が入っていて完全なる透明は珍しいのですが、内容物が入っている方が結晶らしいと個人的には感じています。 

  • シトリン(黄水晶)
    人工物もあるので騙されない様に注意。
    透明ながらも黄色→オレンジ色が入っております。
    結晶の形状は同種でも全く別物の印象となりますね。

  • ロードクロサイト(透明なものは高価すぎて購入できず)
    透明なものもありますが、不透明に近い半透明のものがお手頃で手に入りやすいと感じています。
    CGで作ろうとすると、内部での複雑な光の拡散を計算せねばならず、真面目に作ることが出来ない質感です。

  • 蛍石(半透明)
    こちらは蛍光発光しつつ半透明の要素もあり、
    とても魅力的な鉱物です。 
    残念ながら↓写真の鉱物は発光しません。

もう一つ蛍石を持っていますが、こちらは蛍光発光します。

もう一つの8面体フローライトはブラックライトを当てるとこのような状態になります。
実物を見ると蛍光発光を強く感じます。

 

★発光系(蛍光発光)

  • ルビー
    ブラックライトで蛍光発光する。
    他にも蛍光発光する鉱物は沢山あります。
    フローライト、ダイアモンド・・・等々。

こちらも現物をみると蛍光発光を強く感じます。


◆ゲームの絵作りをする上での鉱物の役割

  • 反射による絵の引き締め
    リアルな風景を追求すると「面白みのない絵面」になりがちです。
    水面や特殊な質感を持った素材による「風景や光源の反射」は背景の印象を引き締め、反射による光の強調等で画面にリズムを生み出す亊が出来ます。
     
    自然地形を作成する場合は特に単調になりやすいので、岩単位で反射を入れてあげると、画面が引き締まります。
    そもそもの話、ペンタブラック(黒い塗料)以外、ほとんどの物質は光を反射します。

  • 特殊な形状を作りたい時に大活躍!
    結晶の形状は、自然物の中にあっても一定の法則性があります。
    カバンサイトに注目してみましょう。
    この標本は放射状の形をしています。

アップにするとこんな感じ
とても小さい結晶ですが、巨大なスケールを感じます。
  • 光源
    蛍光発光の写真にもありますが、
    鉱物は光を特殊に反射する種類もあり、
    元の色とは違う発光をする場合もあります。

    洞窟を作る際に、数少ない光源として利用する事が可能です。
    また、淡い発光体としてプレイヤーの誘導にも使え、「探検したくなる雰囲気」を作る亊が出来ます。

実物を見ると発光を感じますが、
画像だとわかりにくい状態になってしまっていますね。
  • アイテムそのものとして使う
    結晶=貴重な物質と印象付けられるので、
    アイテムそのもののモチーフとして良く使われますね。
    詫び石等は結晶を模したもの等があります。
    鉱物=宝石の場合は武器や防具と言った装備品の装飾部分にも使えますね。(今回は原石を扱うのでちょっと脱線)
      
    高付加価値のついてしまっている鉱物としては、
    レアメタル等は知る人ぞ知る鉱物ですが、
    金などは皆さまお馴染みですね。


◆自ら標本を収集する事の意義

  • 著作権問題
    ネットに存在している画像は「だれかが」「労力を使って」撮影をしたものです。他人が勝手に使う事はできません。
    参考資料として使う分には良いのですが、許諾なく実際のゲームに登場させる亊はできません。

自由に素材を使いたい場合は、自ら手に入れる以外にありません。
自分用の著作権フリー素材を集めましょう。

私の場合は他人から資料を借りても認識に残りにくく、じっくりと観察をする場合は自分で実物を入手し、何度も観察して認識を深めて行く工程が必要です。

  • 観察をする力を養う
    上にも書きましたが、観察はとても重要です。
    物を作る、表現する亊を生業とする人間には必須な力です。

    今はネットからすぐにリファレンスを集めてこれる便利な時代になりましたが、ネットに漂う大量の圧縮された画像よりも一つの鉱物から得られる情報はとても沢山有ります。

 実物を自分の目を通して観察しましょう。 


◆最後に

今回のブログは「技術ブログ」というよりも、
「過去の勉強事例の紹介ブログ」にしました。

「趣味ブログ」と呼ぶには実際の仕事に活かしているので、「仕事をしていたら趣味になったブログ」という所でしょうか(笑)

そもそも弊社のブログ活動はいまから数年前に私が始めたものなので、いつもとちょっと違うジャンルのブログを書いたとしても新しい方向性の提示という事で良しとしてくれるはず!!

よろしくお願いします!!
 

ここまで書いてきて、ふと、
自分が実際に鉱物採集をした亊もブログに書きたくなりました。
 
という亊でこちらを前編とし、後編のブログを書こうと思います!


それでは「後編へつづく」!